「医学部にも総合型選抜ってあるの?」
「国公立大学の医学部医学科を目指したいけど、一般選抜だけでは難しそう……」
国公立大学の医学部医学科の受験というと、学力勝負の「一般選抜(共通テスト+二次試験)」を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、近年では国公立医学科でも「総合型選抜(旧AO入試)」を実施する大学が増えています。
総合型選抜では、学力だけでなく、医師としての適性や人柄、これまでの活動実績など、多面的に評価してもらえるのが大きな特徴です。
とはいえ、「自分がそういう入試に向いているかわからない」と不安に思う方もいるでしょう。
そこで本記事では、以下の内容についてわかりやすく解説します。
- 国公立大学の医学部医学科の総合型選抜とは?
- 一般選抜や学校推薦型選抜との違い
- どんな人が向いている?
- 総合型選抜を導入している大学の一覧
国公立大学の医学部医学科を目指したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
【国公立大学】医学部の総合型選抜とは?
総合型選抜(旧AO入試)は、一般入試のような学力試験の点数だけでは評価しきれない「受験生の人物像や意欲、将来性」などを多面的に評価する入試方式です。
主に、書類審査(調査書・志望理由書・活動報告書など)や面接、小論文などを通じて、「その大学で学ぶ意欲がどれほど強いか」「社会で活躍する素質があるか」などが見られます。
ただし、医学部の場合はこれに加えて、高い学力も重視される点が大きな特徴です。
国公立大学医学部における総合型選抜の特徴
国公立大学医学部の総合型選抜は、「人物評価中心」という要素だけではなく、以下のような学力面での高い基準が課されていることが多くあります。
- 高い評定平均(高校での成績)
- 大学入学共通テストの成績
- 大学独自の学力試験の成績
多くの国公立大学医学部では、一次選考で書類審査と共通テストの成績が使われ、二次選考では面接や小論文、大学によっては独自の学科試験や適性検査が実施されます。
つまり、「総合型選抜=学力試験が不要」というわけではありません。むしろ、一般選抜と同等、もしくはそれに近い学力が求められる場合もあります。その上で、医師に必要なコミュニケーション能力や倫理観、地域医療への理解・関心、リーダーシップなどの資質が総合的に評価されます。
また、大学によっては「地域枠」として総合型選抜を実施しているケースもあります。この場合、卒業後に一定期間、指定された地域の医療機関で勤務することが条件になることがあります。
国公立大学医学部における旧AO入試との違い
「総合型選抜」は、2021年度入試から、それまで実施されていた「AO入試」に代わって新たに導入された入試方式です。
旧AO入試では、各大学の「アドミッション・ポリシー」にどれだけ合致しているかを重視し、書類審査や面接を通じて評価していました。他の学部では学力試験を課さないケースも多くありましたが、医学部においては当時からすでに、学力と人間性の両方を重視する傾向にありました。
総合型選抜では、従来の人物評価に加え、以下の「学力の3要素」を多面的に評価する方針へと変化しています。
- 知識・技能
- 思考力・判断力・表現力
- 主体性
これにより、国公立大学の医学部では大学入学共通テストや独自の学力試験を必須とする大学が増え、学力評価の比重がさらに高まっています。
国公立大学医学部における学校推薦型選抜との違い
総合型選抜とよく比較されるのが、学校推薦型選抜です。どちらも人物評価を重視する点では共通していますが、出願資格や評価のポイントには違いがあります。
- 出願形式:学校推薦型選抜は校長の推薦が必須なのに対し、総合型選抜は自己推薦が基本です(推薦枠に縛られない)
- 評価の視点:学校推薦型選抜は「これまでの学業成績や生活態度」といった実績重視、総合型選抜は「将来の可能性」や「大学とのマッチング」を重視しています
- 求める人物像:学校推薦型は優等生タイプが中心ですが、総合型選抜は探究心や行動力に優れた個性的な学生にも門戸が開かれています
- 評価される実績:総合型選抜では、国際科学オリンピック日本代表、独自の研究実績、地域貢献やリーダー経験など、際立った活動実績が高く評価される傾向があります
国公立大学の医学部では、どちらの方式でも共通テストや面接、小論文が課されるため、他学部と比べて両者の差は目立ちにくいのが実情です。
とはいえ、「特定分野での突出した実績」や「強い探究心・行動力」をアピールしたい人にとっては、総合型選抜の方がより適した入試方式だと言えるでしょう。
【国公立大学】医学部の総合型選抜が向いている人の特徴
ここでは、どのような受験生が国公立大学の医学部における総合型選抜に向いているのかを見ていきましょう。
医学部の総合型選抜が特に向いているのは、以下のような特徴を持っている人です。
- 地道な努力を継続できるが、一発勝負の試験に不安を感じる人
- 地元や近隣地域の医療に貢献したいという強い意志を持つ人
- 突出した科学的探究心を持つ人
地道な努力を継続できるが、一発勝負の試験に不安を感じる人
医学部入試では、一般選抜でも総合型選抜でも高い学力が求められます。しかし、選考方法には大きな違いがあります。
一般選抜は、共通テストと二次試験(学科試験)の合計点で合否が決まるため、一度の試験で結果が大きく左右される「一発勝負型」の入試です。どれだけ普段の成績が良くても、当日の出来に大きく左右される点に不安を感じる受験生も少なくありません。
一方、総合型選抜では以下のような複数の要素で、じっくりと評価が行われます。
- 調査書や志望理由書、活動報告書などの書類
- 共通テストの得点
- 面接や小論文
- プレゼンテーションやグループワーク(大学によって異なる)
このように、日々の学業や課外活動を地道に積み重ねてきた人にとっては、自分の努力や姿勢がしっかりと評価されやすい方式です。特に、「本番の試験で緊張して実力を出しきれない人」や「特定の科目に苦手意識があり、総合点での勝負に不安がある人」には適していると言えるでしょう。
ただし、総合型選抜は決して「楽な入試方式」ではありません。高い評定平均や共通テストの成績、各選考での質の高いアウトプットが求められます。だからこそ、地道な努力を継続できることが、総合型選抜において大きな強みとなるでしょう。
地元や近隣地域の医療に貢献したいという強い意志を持つ人
特に地方にある国公立大学医学部では、地域医療を支える医師の育成が大きな目的とされています。そのため、多くの大学が「地域枠」を設けており、総合型選抜でもこの枠を活用した入試が行われています。
地域枠は、次のような受験生を対象とした特別な枠です。
- 地元出身、または大学の所在地にゆかりのある人
- 卒業後に一定期間、その地域で医療に従事する意志がある人
大学によって詳細は異なりますが、総合型選抜の地域枠では、学力に加え、「なぜその地域で医師として働きたいのか」や「地域の医療課題をどう捉え、どう関わりたいのか」といった思いを、小論文や面接で具体的に伝えることが大切です。単なる「地元志向」ではなく、地域の現状を理解し、自分にできることを考えてきた姿勢が評価されます。
また、地域枠には奨学金や学費免除といった経済的支援がある一方、卒業後に一定期間その地域で働く義務がある場合が多いため、進路をよく考えた上での出願が大切です。
都市部の難関医学部を目指すのではなく、「自分のふるさとに貢献したい」という強い意思とビジョンを持つ人にとって、総合型選抜の地域枠は自分らしさを活かせる入試制度と言えるでしょう。
突出した科学的探究心を持つ人
総合型選抜では、学校の成績や共通テストの得点だけでは評価しきれない「科学的探究心」や「研究活動の実績」が重視されることがあります。
特に以下のような経験を持っている人は、総合型選抜において強みとなる可能性が高いでしょう。
- 国際科学オリンピック(生物・化学・物理・数学・情報・地学など)での日本代表や上位入賞
- 高校生科学技術コンテスト(JSEC、ISEF、「科学の芽」賞、日本学生科学賞、化学グランプリなど)での受賞や発表経験
- 大学・研究機関と連携した課題研究や独自の科学研究で成果を上げた経験
こうした活動を通して培われる論理的思考力・粘り強さ・プレゼン力は、将来の医学研究や臨床現場でも求められる重要な資質です。
実際に、広島大学医学部のMD-PhDコースや東京大学医学部の学校推薦型選抜では、科学オリンピックや研究活動の実績が出願条件や評価項目として明記されています。
もちろん、これらの実績があるからといって自動的に合格できるわけではありません。高い学力と人物面での評価も欠かせません。 ただし、こうした経験がある人は、自分の強みを明確に伝えやすく、他の受験生と差をつけやすいのは確かです。
【国公立大学】総合型選抜を実施している医学部一覧
全国の国公立大学医学部(※防衛医科大学校を含む)は、全部で51校あります。そのうち、総合型選抜を導入しているのは、約3割にあたる16校です。(2025年段階)
以下は、総合型選抜を実施している国公立大学医学部です。
- 旭川医科大学(北海道)
- 札幌医科大学(北海道)
- 北海道大学(北海道)
- 弘前大学(青森県)
- 東北大学(宮城県)
- 福島県立医科大学(福島県)
- 筑波大学(茨城県)
- 富山大学(富山県)
- 神戸大学(兵庫県)
- 大阪公立大学(大阪府)
- 広島大学(広島県)
- 徳島大学(徳島県)
- 愛媛大学(愛媛県)
- 高知大学(高知県)
- 大分大学(大分県)
この中から、総合型選抜の導入事例として特に注目されている以下の5大学をピックアップし、それぞれの選抜内容や特色を詳しく解説していきます。
- 東北大学(宮城県)
- 神戸大学(兵庫県)
- 大阪公立大学(大阪府)
- 広島大学(広島県)
- 高知大学(高知県)
東北大学
- 東北大学の総合型選抜がおすすめの理由
- 2050年までにすべての入試を総合型選抜へ移行予定で、将来性が期待されている
- Ⅱ期は共通テストが不要で、受験科目の負担が軽くなる
- 東北大学医学部は「研究第一」「実学尊重」を理念に、先進的な教育を提供している
項目 | 内容 |
---|---|
主な方式と選考内容 | ・II期 :書類審査、筆記試験、面接試験 ・III期:書類審査、共通テスト、筆記試験、面接試験 |
共通テスト | ・II期 :必須 ・III期:不要 |
募集人数 |
・II期 :15名 ・III期:12名 |
評定平均 | ・II期 :調査書の学習成績概評がA段階(評定平均4.3以上目安) ・III期:評定平均の要件なし |
併願 | ・不可 |
主な特徴 | ・II期では、面接試験の前に小作文が課される ・I期は、2013年度入試より廃止 |
※参照:令和7年度(2025年度)東北大学AO入試(総合型選抜)
神戸大学
- 神戸大学の総合型選抜がおすすめの理由
- 歴史と伝統に裏打ちされた教育・研究環境で学べる
- 国際的な視野やリーダーシップを持つ人材を積極的に求めている
- 産学連携やグローバルな学術交流が盛んで、幅広いキャリア形成が可能
項目 | 内容 |
---|---|
学科と主な選考内容 | ・医学部医学科:書類審査、面接・口述試験、共通テスト |
共通テスト | ・医学部医学科:必須 |
募集人数 | ・医学部医学科:10名 |
評定平均 | ・医学部医学科:評定平均の要件なし |
併願 | ・不可 |
主な特徴 | ・医学科における評定平均の要件はないが、十分な学力が必要とされる |
※参照:総合型選抜 学生募集要項 医学部医学科|神戸大学「志」特別選抜|神戸大学
大阪公立大学
- 大阪公立大学の総合型選抜がおすすめの理由
- 都市部近郊の立地で最先端の医療・研究が学べる
- 高い評定平均(4.3以上)が求められ、学業成績に自信がある人に適している
項目 | 内容 |
---|---|
選考内容 | ・第1次選考:書類審査、共通テスト ・第2次選考:書類審査、共通テスト、口述試験、面接 |
共通テスト | ・必須 |
募集人数 | ・5名 |
評定平均要件 | ・調査書の全体の学習成績の状況が4.3以上 |
併願 | ・不可 |
主な特徴 | ・第1次選考は、志願者数が募集人員の3倍を超えた場合に実施される |
※参照:学生募集要項(学校型選抜・総合型選抜) 医学部医学科|大阪公立大学
広島大学
- 広島大学の総合型選抜がおすすめの理由
- MD-PhDコース(医学研究者志向)への進学を確約できる人向けで、研究志望者に最適
- 科学オリンピックや課外活動など、個人の実績や経験が評価される
- 英語民間試験の一定以上のスコアがあれば英語が満点扱いになるため、英語力を持つ学生に有利
項目 | 内容 |
---|---|
選考内容 | ・書類審査、小論文、面接、共通テスト |
共通テスト | ・必須 |
募集人数 | ・医学科:5名 |
評定平均要件 | ・評定平均の要件なし |
併願 | ・不可 |
主な特徴 | ・小論文では科学的思考や研究姿勢が問われる傾向にある |
高知大学
- 高知大学の総合型選抜がおすすめの理由
- 地域医療への強い意欲や将来のビジョンが重視される
- 英語資格など多様な実績がアピール材料になる
- 卒業後は高知県内での初期臨床研修が確約されており、地域密着型の医師を目指せる
- 募集人数が30名以内と比較的多く、合格する可能性が高い
- 既卒の浪人1年生まで出願可能
項目 | 内容 |
---|---|
選考内容 | ・第1次選抜:書類審査、総合問題(数学・理科・小論文の出題) ・第2次選抜:態度・習慣領域評価、面接 ※書類審査には、英語資格などの検定試験の認定証を含む |
共通テスト | ・不要 |
募集人数 | ・30名以内 |
評定平均要件 | ・調査書の全体の学習成績の状況が4.3以上 |
併願 | ・不可 |
主な特徴 | ・卒業後2年間、高知県内の指定医療機関で初期臨床研修を行うことを確約する必要がある ・第2次選抜の「態度・週間領域評価」は、1日約9時間かけて行う選考。問題解決力やコミュニケーション力、医師としての適性などを問われる |
まとめ
今回は、国公立大学医学部における総合型選抜の概要や、向いている受験生の特徴、おすすめの国公立大学について詳しくご紹介しました。
総合型選抜は、学力に加えて、意欲・探究心・人間性といった多面的な資質を評価する入試方式です。「評定平均は高いけれど、一般選抜に不安がある」「研究や探究活動を評価してほしい」と感じている受験生にとって、総合型選抜は自分の強みを活かせるチャンスです。
ただし、求められる準備の幅も広く、早めに情報を集め、戦略的に準備を進めることが合格への近道です。
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