近年、教育学部では推薦入試を利用して合格を目指す受験生が増えています。教員志望や、教育分野で活躍したいという意欲、人物面が重視される推薦入試は、早い段階からの準備が合格の鍵を握ります。
この記事では主に教育学部・教員養成課程を目指す受験生を想定し、教員を志す方はもちろん、教育分野での活躍を目指すすべての受験生に向けて、教育学部の推薦入試の特徴や傾向、合格に向けた具体的な対策について解説しています。
さらに、推薦入試で教育学部に進学する上で知っておくべき注意点や心構えも紹介します。
教育学部の推薦入試とは?
ここでは、教育学部の推薦入試の種類や特徴について解説します。
教育学部の推薦入試は学校推薦型選抜が多い
教育学部の推薦入試は、主に「学校推薦型選抜」です。学校推薦型選抜は出身高校の校長が推薦する形で出願する入試制度で、「指定校制」と「公募制」の2種類があります。指定校制では、特定の高校に対して推薦枠が設けられており、推薦を受けられる生徒が限られています。
一方、公募制では、基準を満たしていればどの高校からでも出願が可能です。
いずれの場合も、教育学部で学びたいという意欲や、教育に携わるための適性、高校での学業成績や日頃の生活態度など人物評価が重視されるのが特徴です。
教育学部に推薦入学をする場合、学校から推薦をもらうだけではなく、大学進学後の教育実習まで考え、出身校と良好な関係を保つ努力が必要です。
学校推薦型選抜の出願条件
学校推薦型選抜は以下のような出願条件が設けられています。
・評定平均など、一定の学業成績を収めていること
・高校3年間を通じての出席状況が良好であること
・教育に関する明確な志望理由を持っていること
・校内での推薦を得ていること
教育学部では、例えば将来教育に携わる者としての資質が問われるため、他学部以上に「安定性と責任感」が重視されます。
これは、信頼される教育者を育てるための入口基準と言えます。
また、出願する大学によっては、部活動やボランティア、地域活動などへの積極的な参加が評価対象となる場合もあります。
こうした条件は各大学の募集要項で毎年更新されるため、最新の情報を確認してください。
学校推薦型選抜は書類審査と面接が基本
教育学部の推薦入試では、学力検査よりも人物評価に重点が置かれています。
主な選考方法は以下の2つです。
・書類審査(志望理由書・自己PR文・活動報告など)
・面接(個人面接や集団面接)
大学によっては小論文やプレゼンテーションが課される場合もあり、志望するコースによっては実技試験が課される場合もあります。
基本的には受験生一人ひとりの「将来教育に関わりたいという明確な意思」や「教育に対する理解と姿勢」などを書類や面接で見られます。
「高校生活での努力」や「地域・社会への貢献」なども評価されるので、あなたの言葉でしっかりと伝えられるようにしましょう。
教育学部 推薦入試の傾向
教育学部の推薦入試では、大学によって選考方法で重視されるポイントや傾向があります。
合格を勝ち取るには、こうした傾向を正しく理解し、それに合わせた対策が欠かせません。
傾向①教育にかかわることや教員を志望することへの意欲が重視される
教育学部の推薦入試では、明確な志望動機が重視されます。
「子どもが好きだから」という理由だけではなく、教育現場や教育分野全般の課題を理解し、あなたがどのように貢献したいかまで踏み込んで語ることが求められます。
自己PRや面接では「なぜ教員になりたいのか」「どんな教育にかかわりたいのか」を具体的に表現しましょう。
傾向②人物評価・適性が重要な選考要素になる
教育学部の推薦入試では、学力よりも「人物評価」や「教育者としての適性」が重視される傾向があります。
協調性、責任感、リーダーシップ、対人関係能力など、教育現場や教育関連分野で必要な資質があるかを面接や書類から判断されます。
ボランティア活動や部活動でのリーダー経験、学校外での地域活動なども評価対象になります。
学力試験では測れない「人柄」がより大切で、日頃から人間性を高める努力が必要です。
傾向③選考内容に教育分野の特色が反映される
教育学部ならではの特色として、選考内容に「教育分野に関するテーマ」が盛り込まれることがあります。
たとえば、「いじめ問題への対応」「特別支援教育についてどう考えるか」といった指導方法や教育観を問われたり、小論文やプレゼンテーションで、教育制度や現代の教育課題についての意見を求められたりします。
日頃から教育に関心を持っているかが試されます。
ニュースや新聞、教育雑誌で情報を集め、あなたの意見をまとめておきましょう。
傾向④地域志向や多様な人材が求められる
最近では、地元の人材確保を目的に「地域枠」を設けている大学も増えています。特に地方の国公立大学では、「地元の教育に貢献したい学生」を歓迎する傾向が強いです。
また、学校生活を海外で過ごしたといったバックグラウンドの多様性も配慮され、これまでにない視点や経験を持った人材を受け入れる教育学部も増えてきています。
特殊なバックグラウンドで得た経験を「これからの教育にどのように活かしていきたいか」を考え、面接や小論文で表現できると良いでしょう。
傾向⑤年内入試・早期化の傾向がある
推薦入試は、一般入試に比べて実施時期が早いです。多くの推薦入試は11月〜12月にかけて実施され、年内に合否が決まるケースも珍しくありません。
大学入学共通テストが選考対象に含まれている大学もあり、入試スケジュールや併願の可否などを入試要項で確認する必要があります。
いずれにせよ、推薦入試を考えている場合は早めの準備が重要です。
十分な評定平均を得るには、高校入学直後から学業に力を入れる必要があり、教育に関する情報を集めたり、それに対する考えをまとめたりと、やるべき準備は数多くあります。
校内で推薦を獲得した後も、志望理由書の作成や、面接・小論文対策に時間がかかるため、早めの対策が合格の鍵になります。
教育学部 推薦入試の合格に必要な対策
推薦入試で教育学部に合格するには、やる気だけではなく、しっかりとした準備と戦略が求められます。
ここでは、評定平均の目安から志望理由書・小論文・面接など、合格に向けた具体的な対策について解説します。
対策①評定平均の目安
教育学部の推薦入試では、評定平均(いわゆる内申点)が出願条件になっていることがほとんどです。一般的に、評定平均の目安は4.0以上とされることが多く、競争率の高い大学では4.2~4.5以上を求められるケースもあります。
この評定平均は高校1年生からの成績が対象になるため、早い段階から日々の授業や提出物、小テストを丁寧に取り組むことが大切です。
また、目指すコースに関わる科目は重点的に学習をしましょう。たとえば、中学校社会科の教員を目指すのであれば、日本史や世界史、地理や政治経済などの科目に特に力を入れて学習をしていきます。
ただ、学部の性格上、評定平均の基準を満たしていても教科・科目間に大きな偏りがある場合は最終選考等の段階で不利になる可能性もあります。
教育に携わる多くの分野では幅広い教養が求められます。苦手科目を放置しないようにしましょう。苦手を克服しようとした経験が、その先のどの教育分野 においても役立ちます。
対策②志望理由書・自己PRの書き方
志望理由書や自己PR文は、推薦入試の合否を左右する重要な書類です。書く際には、以下の3点に注意して書きましょう。
- なぜ教育分野を目指すのか・教育学部に携わりたいのかという動機や体験を具体的に書く
- その大学を志望する理由を明確に書く
- 高校での活動や努力から、教育に携わる上での強みや適性を伝える
「小学校の恩師のおかげで成長を実感しました。私も子どもたちに成長する楽しさを伝えたいと思い、教員を志望しています」「幅広い知識を得るだけではなく、多様な教育体験ができる貴校の教育カリキュラムで学びたいと思い、〇〇大学を志望しました」など、あなたの強い意志がしっかり伝わるように書きましょう。
丸暗記したような文章ではなく、あなたの言葉で書くことが大切です。また、一人で志望理由書・自己PRを書くと独りよがりな文章になりがちです。担任や進路指導の先生、塾・予備校の先生に添削してもらうと良いでしょう。
対策③小論文の対策
小論文が課される場合も、教育に関するテーマが出題されることが多いです。時事的な話題や教育制度に関する自分の意見を問われます。
・いじめ問題や不登校への対応について
・ICTを活用した教育のメリットと課題
・教師に求められる資質とは
教育に関するニュースや書籍に日頃から触れ、あなたの考えをノートにまとめておきましょう。
たとえば、いじめ問題に関するテーマであれば、
・いじめの件数は増加傾向にあること
・小学校低学年のいじめが増えている
・いじめが増加傾向にある理由(あなたが考える理由)
・いじめをなくすために何をしていくか(あなたが考える対策)
などをまとめておくと良いです。
教育に関するテーマには、「テーマになる背景」が必ずあります。
日頃からニュースや本に触れることは、その背景を知ることにあたります。
背景を把握した上で、あなたの考えや対策を書けると、独自性と説得力のある文章になります。
また、小論文では構成力や論理性も見られます。「序論・本論・結論」を意識して文章を書く練習をしておきましょう。
対策④面接でよく聞かれる質問と答え方
面接では人物評価が中心です。小論文と同様に、事前準備が欠かせません。
まず、質問の答え方に注意します。
質問に答えるときは、面接官の目を見てハキハキと答えましょう。また毎日子どもたちと接する教員や、人と接する機会が多い職種では、「明るさ」も大切です。
適切なアイコンタクトや安心感を与える受け答えを意識し、模擬面接などで質問の答え方を練習していきましょう。
以下は面接でよくある質問例です。
・なぜ教員になりたい/教育分野を目指したいと思ったのですか?
・あなたの考える理想の教師像は?
・苦手なことや失敗経験、それをどう乗り越えましたか?
・最近関心を持った教育に関するニュースは?
小論文対策と同様に、日頃から教育に関する情報収集をして、あなたの考えをまとめておきましょう。具体的な経験やエピソードを交えて考えを述べられると、説得力が増します。
対策⑤教育に関する時事問題への理解
現代の教育は以下のような多様な課題を抱えており、推薦入試では課題に対する関心や理解が面接や小論文、出願書類の質問項目などで問われる傾向にあります。
・教育現場におけるICT導入とその影響
・不登校の増加と教育支援体制
・多様性とインクルーシブ教育の考え方
新聞やニュースだけでなく、文部科学省の発表資料や教育関連サイトにも目を通しておくと、知識や情報の幅が広がります。そして、知識や情報を得るだけではなく、それに対するあなたの考えを持つことが大切です。
面接・小論文対策の一環として日頃から教育に関するニュースにアンテナを張り、教育に対するあなたの考えを深めていきましょう。
推薦で教育学部を目指す人に知っておいてほしいこと
推薦入試で教育学部に合格できたからといって、すべてが安心というわけではありません。入学後に直面する現実や、将来の進路に関わる重要なポイントを事前に知っておくと、納得のいく進学につながります。
この章では、推薦入試で教育学部を目指す人が知っておくべきことを紹介します。
推薦入試合格後の心構え
推薦入試で合格した場合、多くの大学では一般入試よりも早く進学が決まるため、気が緩んでしまう場合があります。しかし、教育学部は入学後も学業・実習・教員免許取得と忙しく、「学び続ける姿勢」が不可欠です。
また、合格後に「事前課題」や「入学前教育プログラム」が課される大学もあります。合格直後からすでに教員への道がスタートしていると心掛けましょう。
一般入試との学力差について
推薦入試で入学した学生の中には、「一般入試組との学力差」を気にする声もあります。しかし、大学側はあくまで人物面や適性を含めた総合評価で選抜しているため、必要以上に気にする必要はありません。
推薦入試は、教育に関する考えを深めたり、一般入試にはない実技科目の学習を進めたりできるメリットがあります。
大学入学後の授業に不安がある場合は、高校の学習内容の復習や基礎固めをしておくと良いでしょう。また、現状の学力的に余裕がある場合は、志望している学校・科目の教科書を熟読しておくと入学後の学びに役に立ちます。
入学後の進路に強い縛りがある場合も
教育学部の中には、「地域枠」や「特別推薦枠」として、特定の地域で教員になることを前提とした推薦枠が設けられている場合があります。こうした枠で入学した場合、卒業後に地元の学校で一定期間働くことや、僻地で勤務することなどの強い縛りがあるケースもあります。
一方で、教育関連分野の採用が厳しい中、採用が事実上決まっているのはメリットと考えられます。志望する教育学部の縛りの有無や勤務条件などをしっかり確認しておきましょう。
将来の働き方に影響するため、進路指導の先生や保護者ともよく相談した上で出願を決めましょう。
教員採用試験への影響は?
推薦入試で入学したこと自体が、教員採用試験に有利・不利になることはありません。採用試験では、大学での成績・実習評価・人物評価・筆記試験の得点などが重視されるため、大学入学後の努力が教員採用試験の結果を左右します。
早期に教育分野でのキャリアを目指す意思を固め、教育現場への理解を深めてきた推薦組は、将来の進路意識が高い傾向にあります。大切なのは、合格後も気を抜かずに学び続ける姿勢を持ち続けることです。
推薦入試でおすすめの教育学部
この章では、推薦入試におすすめの教育学部を紹介します。
大学名 | 特徴や注意点 |
---|---|
新潟大学 | ・面接や書類審査に加え、大学入学共通テストが課せられる ・専修ごとの募集 |
共栄大学 | ・「指定校型」と「公募型」の両方がある ・小学校と幼稚園の教員免許取得に特化したカリキュラム |
滋賀大学 | ・「一般推薦」だけではなく、滋賀県内の高等学校に在籍する高校生を対象とした「地域推薦」がある ・総合型選抜もある |
横浜国立大学 | ・大学入学共通テストの結果も含んだ総合型選抜 |
早稲田大学 | ・指定校制 ・他の多くの教育学部とは異なり、教員免許取得が卒業要件に含まれない |
同じ教育学部でも、大学によって選考方法や、入学後のカリキュラムに違いがあります。大学のWEBサイトや入試要項を読み、自分に合った大学を見つけていきましょう。
まとめ
教育学部の推薦入試では、学力以上に「教育に関わりたいという強い意志」と「人物評価」が重視されます。
合格を目指すためには、早期からの準備が重要です。高校1年生の始めから評定平均を意識し、部活動やボランティア活動などにも積極的に取り組みましょう。
推薦入試は一発勝負ではなく、これまでの高校生活の積み重ねが問われる入試形式です。志望理由書や自己PR、小論文、面接では、自分の考えを明確に伝える力が求められます。
教育への関心を日頃から深め、時事的なテーマや教育課題に自分の意見を持つ習慣をつけておくことも大切です。自分自身を見つめ直し、教育への熱意をしっかりと表現できるよう、準備を積み重ねて臨みましょう。
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