「どこの大学が入りやすい?」「できるだけ受かりやすい方法で大学に行きたい」そのような悩みを持つ受験生や保護者に向けて、大学入試の選抜方法をご紹介します。
大学の選び方は「偏差値」だけではありません。現在では、受験生の個性に合う大学を選ぶことが推奨されています。志望校を選ぶのと同時に、受験方法も個性に合ったものを選ぶと良いでしょう。
この記事では、大学入試の選抜方法と、まだ広く知られていない「総合型選抜」について解説します。
そもそも「入りやすい大学」ってどんな大学?
自分に合った学びや環境の「入りやすい大学」は、どのようなところでしょうか。進路の選択肢を広げるためにも、さまざまな視点から大学を見てみましょう。
偏差値が低めの大学
一般的には、偏差値が高い難関大学よりも低めの大学の方が、入りやすいと考えられます。入試問題の難易度も低めのため、対策がしやすいでしょう。一方で「就職活動に不利になるのでは」といった不安を抱くこともあるかもしれません。
しかし、偏差値が低い大学の中にも、国内で数少ない大学でしか学べない専門分野を持っているところがあります。
学んだ分野に関連する職業を目指すのであれば、偏差値にとらわれることなく、行きたい大学を選ぶと良いでしょう。
倍率が低めの大学
入試の倍率が低い大学も、入りやすい大学として挙げられます。ただし、国公立と私立では倍率の意味合いが大きく異なることに注意が必要です。
私立大学の場合、キャンパスが地方にあり立地条件が良くない大学や、新設の学部・学科は知名度が低く、入試倍率が低くなる傾向にあります。また、「総合科学部」などの学際的な学部では、学びの特色が学部名だけではつかみにくいため、受験生が集まりにくいと言えます。
一方、国公立大学では、受験機会が限られており、共通テストの結果を受けて出願校を変更する受験生が多いため、一般的には人気があるとされる大学・学部であっても1~2倍台といった低倍率となることがあります。また、東大や医学部等では共通テストの成績による第一段階の選抜が行われるため、最終的な倍率だけでは判断できない側面もあります。
しかし、大学の特色に合う受験生にとっては、有利な条件となることもあります。例えば、地方の大学であっても、その地域の受験生にとっては通学しやすい大学ですし、学びたい学問が新設されたものであれば、ライバルの少ない環境で受験が可能です。また、学びが多岐にわたる「学際的」な学部では、変化の多い時代に対応できる多角的な能力が身につくとも言えるでしょう。
共通テストのボーダーラインが低めの大学
国公立大学の受験において、共通テストのボーダーラインが低く、二次試験の受験科目が少ない大学は、比較的入りやすいと言えます。
しかし、国立大学の場合、共通テストでは7教科21科目の中から6教科8科目の受験を必須としている大学が多く、ボーダーラインが低めでも学習負担が大きいことは否めません。また、二次試験の受験科目が少ないと、その科目を得意とする受験生が集まる傾向があるため、結局のところ共通テストで高得点を取っておく必要があるでしょう。
受験の機会が多い大学
受験機会が多い大学では、一般入試だけでなく、学校推薦型選抜や総合型選抜といった推薦入試を実施しています。推薦入試は一般入試よりも出願時期が早く設定されており、たとえ推薦で不合格になったとしても、改めて一般入試での受験が可能です。
また、一般入試で受験する場合でも、複数回の受験が可能な大学は存在します。例えば、複数日程の試験日が設けられており、どちらの試験日にも出願できる大学や、「大学入学共通テスト」の結果のみで合否を判定する大学、さらには共通テスト方式を利用して複数の学部や学科を併願できる大学などが挙げられます。
一般入試における複数回受験によって合格難易度が大きく変わることはありませんが、「大学入学共通テスト」の結果のみで合否が判定される方式では、定員が少なく、結果的に合格難易度が高くなる大学があることには注意が必要です。
「受かりやすい受験方法」とは?学力だけがすべてではない
多様化する大学入試の選抜方式。その中で、受かりやすい受験方法を選ぶには、どのような対策を取ればいいのでしょうか?まずは、受験方法を知ることから始めましょう。
推薦での進学が当たり前に?変わる大学受験の常識
文部科学省の「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」報告書【令和6年2月】によると、総合型選抜や学校推薦型選抜などの推薦入試による入学者が、大学入試全体の5割を超え、一般入試による入学者数を上回っています。
「団塊ジュニア」を含む保護者世代の大学入試では、一般入試による受験が多数派であり、かつ現役での大学入学は困難でした。
しかし現在では、推薦入学が当たり前の時代へと変化しています。ただし、既卒生が推薦入学で受験できる大学は限られており、現役受験生に有利な状況であると言えます。
推薦型選抜は多様化しており、受験生の選択肢が増えています。自分にとって「受かりやすい受験方法」を選ぶための道しるべとして、現在実施されている学校推薦型選抜の概要を解説していきます。
※参照:大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」報告書 【令和6年2月】
学校推薦型選抜(指定校型)
まずは、学校推薦型選抜(指定校型)についてですが、従来からある「指定校推薦」という呼び方に馴染みのある方も多いと思います。
これは、大学から高校に一定数の推薦枠が与えられ、高校から生徒を推薦する形式です。大学が定めた学科の評定基準以上の生徒が選考の対象になります。推薦枠の人数を超える志願者がいる場合には、校内選考により推薦される生徒が決まります。学校での推薦をもらえれば大学合格の可能性が高いため、高校3年間で評定平均を高く維持していれば、比較的容易に難関大学への進学が目指せるルートだと言えます。
ただし、学校推薦型選抜(指定校型)は専願での受験となり、合格後はその大学への入学が義務付けられています。大学で学べる分野に興味がないにもかかわらず、評定が良いという理由だけで受験し、入学後に後悔することのないよう、志望校の選定には十分な注意が必要です。
指定校型は、すでに高い評定平均を維持している高校3年生はもちろん、今後評定を上げる余地のある高校2年生以下にも目指してほしい入試方式です。3年間しっかりと定期テスト対策を行い、提出物をきちんと出せる人に向いています。付け加えるなら、実技科目なども含めた各科目で得意・不得意の差があまりなく、オールマイティに勉強ができるタイプの人に適していると言えるでしょう。
指定校推薦での合格を目指すなら、志望校の指定校推薦枠が自身の高校にあるかどうか、あらかじめ調べておくと良いでしょう。
学校推薦型選抜(公募型)
学校推薦型選抜には、指定校型のほかに公募型があります。受験するには学校長の推薦が必要ですが、高校ごとの枠が設けられているわけではありません。そのため、自身の高校に指定校枠がない大学を受験することも可能です。
出願には、大学が求める条件をクリアする必要があります。条件の難易度は大学によって異なります。指定校型と同様に、評定平均や高校での履修科目、英検®などの外部試験の結果が求められることが多く、総合型選抜と比べて合格のハードルがやや高い傾向にあります。
公募型は指定校型と異なり、出願後に課される面接や小論文などの結果も含めて合否判定が行われます。出願できればほぼ合格できる指定校型とは異なる点を理解した上で、しっかりと対策を講じると良いでしょう。
総合型選抜
総合型選抜は、2020年度以前にはAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれていました。こちらの名称なら、聞いたことがある方もいるかもしれません。
AO入試は、1990年に慶應義塾大学のSFCで導入されました。それまでの入試制度で問題視されていた「偏差値・知識偏重の大学選抜方法」だけでなく、個性や人物評価を重視した「大学の求める人物」を選抜する点が評価されました。導入する大学は少しずつ増え、2000年代には全国へと拡大していきました。
しかし、AO入試では学力を問わない選考が多く、入学後に大学の学びについていけない学生が出てくるという問題が指摘されました。
2021年度から導入された「総合型選抜」では、個性・人物評価に加え、学力評価も含めた多角的な選抜が行われるようになりました。
一般入試にも「受かりやすい受験方法」がある
推薦だけでなく、一般入試にも「受かりやすい受験方法」はあります。「全学部統一方式」や「大学入学共通テスト」を利用すると、1回の試験で複数の合否判定が行われるケースも多くあります。受験機会が増えることで、合格の可能性も高まると考えられます。
ただし、受験機会の増加に伴って志願者数が増加し、入試の難易度が上がることも予想されるため、出願時には注意が必要です。
また、地方会場での受験を実施している大学もあります。試験日程の調整や、移動にかかる手間・費用などの負担が軽減されることも「受かりやすい受験方法」につながると言えるでしょう。なお、地方会場での受験でも、入試の難易度は変わらず、合否判定において不利になることはありません。
有名校にも入りやすい大学がある「総合型選抜」とは?
学力だけではなく、自分の強みや個性を活かして、大学合格への道を切り拓けるのが総合型選抜です。しかし、その魅力の裏には見落としがちな注意点もあります。知っておきたいメリットとデメリットを解説します。
大学が求める学生像に合う人物を選抜する制度
多くの大学では、「どのような学生に来てほしいか」を明確に示した「アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)」を掲げています。これは、それぞれの大学の教育理念や特色を反映してつくられたものです。
総合型選抜は、大学側の「こういう学生に学んでほしい」という想いと、受験生の「この大学で〇〇を学びたい」という気持ちが合致しているかどうかが重視される入試制度です。
以前のAO入試のイメージから、「全国大会に出場した経験」や「海外留学」など、特別な実績がなければ評価されないと思って、選択肢から外していた人もいるかもしれません。
しかし実際には、特別な経験がなくても合格のチャンスはあります。
重要なのは、受験生が何かに真剣に取り組み、課題をどう乗り越えたか、そしてそこから学びや成長があったかです。大学は、そのプロセスや姿勢をしっかりと評価しています。
総合型選抜のメリット
ここからは、総合型選抜のメリットについて紹介します。
メリット1:自分の学力より高い偏差値の大学に合格できる
総合型選抜は、一般選抜と比較して求められる能力に違いがある点が特徴です。一般入試で求められる偏差値という分かりやすい基準とは違い、総合型選抜は「実績 」「人柄」「 熱意 」など多様な観点から選抜が行われます。問われるのは、志願者が高校生活で取り組んできた実績と成果、取り組みの過程で培ってきた能力、そして一番大切な「大学で学び、その先に成し遂げたいことの意欲」です。
大学が求めている研究分野の能力が長けていれば、難関大学に合格することも不可能ではありません。
ただし、注意が必要な点もあります。英語の外部試験で例を挙げると、英検®準1級以上合格等が出願条件になる場合もあります。また、 大学独自の学科試験が課されることもあります。評価軸は一般入試とは異なるものの、学力も重視されるのが最近の傾向です。
そのため、学力がすでに十分な大学に対しては、一般選抜での受験が有利です。一方で、学力ではやや届かない大学に挑戦する手段として、総合型選抜を活用するのが効果的です。
メリット2:受験回数が増え合格のチャンスが増える
総合型選抜の選考スケジュールは、一般選抜と比較して早くなっています。そのため、指定校推薦の機会を模索しながら、他大学の総合型選抜や公募制推薦との併願も可能です。
総合型選抜の出願は、9月から10月に行われることが多く、二次試験は10月から11月に実施され、共通テストが課されない場合、合否の判定は年内に行われるケースが一般的です。
万が一不合格に終わったとしても、一般選抜の受験機会が残されています。このことから、総合型選抜は、志望校合格の可能性を広げてくれるでしょう。
メリット3:大学卒業後の進路選択が有利になる
総合型選抜は、受験対策を通じて「大学で学ぶ意味」や「将来について」熟考する機会となります。自己分析を通して、自分の強みや価値観を理解することができ、それは将来のキャリア形成にも役立ちます。
多くの大学生が就職活動の際に直面する「自分のやりたい仕事がわからない」という事態を、あらかじめ回避することにもつながります。
大学での学びは、自分の興味のある業界や企業の研究にもつながり、仕事への志が明確になります。その結果、面接の際に何を伝えるべきか悩むことも少なくなるでしょう。
メリット4:大学とのミスマッチが起きにくい
大学入学後に「思い描いていた大学生活と違う」といった現実に直面し、大学を辞めてしまう学生は少なからずいます。このようなことが起きる原因のひとつは、自分の興味や関心が明確でないまま大学を選んでしまっていることにあります。
総合型選抜では、「自分が挑戦したいことを明らかにし、その挑戦のために最適な大学・学部はどこか」を調べ、明確にした上で対策を講じることになります。学科試験の点数だけで合否を決めるわけではないため、入学後に大学とのミスマッチが起きにくいと言えるでしょう。
メリット5:社会で将来的に役立つスキルが身に付く
総合型選抜の対策を積み重ねてきた学生は、「正解のない問いに向き合う思考力」「文章で表現する力」「議論や対話に必要なコミュニケーション能力」などが自然と身についています。これらの力は、大学において重視されるのはもちろん、社会人になってからも重要なスキルです。
さらに、受験対策を通じて社会の課題とその解決策を模索していくことで、将来的に進むべき方向性が明確になり、自身の理想と社会貢献の両立を実現する可能性が広がります。
総合型選抜のデメリット
一方、総合型選抜にデメリットはあるのでしょうか。気がかりな点を紹介します。
デメリット1:合格基準がわかりにくく、求められる意識が高い
総合型選抜のメリットとして、学力偏差値以外の基準も含めて合格判定が行われる点が挙げられます。しかしその一方で、各大学が求める基準が異なり、その内容がわかりにくい場合もあるため、どれほど優秀で、志望大学・学部のアドミッション・ポリシーに適合した受験生であろうとも、100%合格できるとは言い切れない点には注意が必要です。
そのため、点数を満たす努力が求められる一般選抜以上に、総合型選抜では高い向上心を持ち続ける姿勢が求められることが、デメリットとして挙げられます。
知的好奇心を持ち、さまざまな新しいことに挑戦し続けたい受験生にとっては有利な方式ですが、学力向上の努力を重視するタイプの受験生には、不利に感じられることもあるかもしれません。
デメリット2:最適な併願戦略がとりにくい
他大学との併願は可能ですが、受験する大学の組み合わせには注意が必要です。対策を立てやすい併願先を見つけるためには、情報収集の難易度が上がります。受験生の状況と志望校の組み合わせ、その時の入試傾向を考慮に入れながら計画的に進めないと、失敗を招いてしまいます。また、併願校が増えるに従い、それぞれの対策への時間配分を考える必要があります。
さらに、上位校を中心に併願が不可能な大学もあり、その場合は併願対策が無駄になるケースも考えられます。適切な対策は、志望校の募集要項を丁寧に読み込み、可能であれば専門家のアドバイスを受けながら進めていくのが良いでしょう。また、受験年度は具体的な対策に時間や労力を割きたいところなので、可能な限り受験する年度を迎える前に併願戦略を練っておくことも重要だと言えます。
デメリット3:評価基準が多彩なため対策が難しい
多彩な評価基準が用いられる総合型選抜では、学科試験に集中すれば合格できる一般選抜のようにはいきません。例えば、職業適性試験なども判定に含まれる場合には、対策に必要な時間が長期にわたることも考えられます。また、合格水準に達するための事前学習の環境に、すべての人がアクセスできるわけではない点もデメリットとして挙げられます。
まとめ
「入りやすい大学」や「受かりやすい受験方法」は、受験の情報を正しく知ることから始まります。偏差値だけでなく、入試方式に注目することが重要です。記事で紹介した総合型選抜は、受験生の可能性を広げてくれる選抜方式と言えるでしょう。
最短ルートで合格を目指すには、戦略的な準備がカギとなります。ただし、総合型選抜は評価基準が多彩で対策が複雑なため、一人で進めるには限界があります。志望校の特色やアドミッション・ポリシーを正確に把握し、それに合わせた対策を立てるためには、専門的な知識と経験を持つ指導者のサポートが不可欠です。
トライでは、各大学の総合型選抜に対応した指導を行っており、受験生一人ひとりの志望校に合わせた指導ができます。志望校の傾向に合わせた対策プランもご提案いたしますので、総合型選抜での合格を目指す方は、ぜひお気軽にご相談ください。合格への第一歩を踏み出しましょう!




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