「面接だけで入れる大学って本当にあるの?」ウェブ上やSNSでこんな話を見て、「それなら自分にもチャンスがあるかも」と思った方もいるかもしれません。
大学入試を取り巻く環境や文科省の方針の転換により、大学入試は大きく変わりつつあります。たしかに、入試方式によっては「学力試験なし・面接あり」で合否が決まる大学もあるのが実情です。
しかし、実際には“面接だけで入れる”というのは一部を切り取った表現で、準備や評価は思った以上にハードな場合もあります。
この記事では、「面接だけで入れる」と言われる大学入試の仕組みや現実、そして本当にチャンスを活かすための戦略――総合型選抜の内容やポイント、加えて2026年度入試での新たな動きにも触れながら解説します。
面接だけで入れる大学はある?~多様化する大学入試〜
「面接だけで入れる大学がある」――たしかに、一部の大学では最終選考が面接のみで行われる入試も存在します。ですが、それは “本当に面接だけで受かる” という意味ではありません。実際には、厳しい出願条件や事前審査、膨大な提出書類などの準備をクリアした上でようやく面接に進めるという入試方式です。
大学入試には、一般選抜や推薦型選抜があり、選抜方式により分類すると多岐に渡ります。面接を実施する入試では、従来から実施されている推薦入試やAO入試がありますが、文科省の大学入試改革により、2021年度入試から「推薦入試」は「学校推薦型選抜」、「AO入試」は「総合型選抜」に名称が変更されました。
また、学校推薦型選抜は大学の学部と高等学校との信頼関係に基づく「指定校推薦」と、学校長の推薦書があれば自由に出願することができる「公募制(推薦選抜)」があります。
入試方式の多様化が進む中で、令和6年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要(文部科学省)によると、総合型選抜と学校推薦型選抜入試による入学者の割合は次のようになっています。
- 国立大学18.5%
- 公立大学30.5%
- 私立大学59.3%
これらの数値からも、国公立・私立ともに、一般選抜から総合型選抜や学校推薦型選抜へシフトする傾向が高まっていると考えられます。
※参照:令和6年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要|文部科学省
面接だけで受験するには高いハードルあり!
「面接だけで合格した人がいる」と聞くと、なんとなくハードルが低いように感じるかもしれません。しかし、現実にはそう簡単ではありません。
たとえば、面接試験のみで評価される東京都立大学の科学オリンピック入試では、出願資格としての学科別要件について科学オリンピックへの日本代表としての出場歴がある点や受賞経験があるなど、非常に高い実績が求められます。つまり、誰でも面接までたどり着けるわけではないのです。
また慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部のAO入試では、膨大な書類や資料の提出を求められ、これらの評価で1次選考に合格した場合に最終選考として面接を受けることができます。
双方の大学とも小論文がなく面接での最終選考となりますが、実際は志望理由書をはじめ、さまざまな書類や資料も合わせて総合的に選考されることになります。
「面接だけ」に見える入試の内側を解説
一見「面接だけで受けられるように見える」大学入試も、裏側には必ず綿密な準備が必要です。
たとえば、総合型選抜の一般的な選考の流れは次のとおりです。
- 出願書類の準備(調査書、志望理由書、活動報告書など)
1次選考(書類選考)
2次選考(1次選考合格者のみに課せられます)
- 小論文、面接(大学によっては口頭試問を含む場合もあります)
- 書類や資料、小論文、面接を総合的に評価
- 総合的な評価による合否の決定
つまり、たとえ学力試験が課されなくても、書類・文章・対話という3つのステージで、自分をどう表現できるかが問われるのです。
総合型選抜は、多面的な視点から受験生の人物や個性、感性を評価する選抜方式ですので、論理的な考察力や自分の考えを、文章や言葉で正確に整然と伝えるコミュニケーション力が求められます。
学力試験がない分、楽に受験できて合格できると安易には言えないことが注意点です。
総合型選抜とは?学力試験では測れない“あなたらしさ”を評価する入試
総合型選抜とは、学力を重視する一般選抜とは一線を画し、受験生の人となりをさまざまな角度や視点から評価することが指針とされています。さらに、大学の教育理念を理解し学部のアドミッションポリシーを理解した上で、学部教育の神髄とも言えるカリキュラムポリシーに即した教育を享受し、卒業に向けての研究課題に取り組む姿勢を受験生が備えているかという点も選抜の指標とされます。
「学力試験がないから楽」とは限らない
よく「総合型選抜は学力試験がないから簡単」と誤解されがちですが、実際には対策が非常に重要です。単に提出する調査書や志望理由書、選抜試験として課される小論文や面接は、安易な考えからは決して合格できるレベルではありません。
たとえば小論文の課題にしても、社会の情勢や教養、未来における課題といった、多岐に渡り論理性や深い思考力を求められるなど、短期間で対策できるものではないのです。また、志望理由書や面接では、「なぜこの大学で学びたいのか」「将来どう社会に貢献したいのか」を、自分の言葉で明確に語る必要があります。
つまり、学力では測れない「表現力・思考力・計画性」こそが問われる入試なのです。
実績や個性を活かしたい人にぴったりの選抜方式
しかし以下のような経験を持ち、成果を上げた受験生は、それを強みとしてアピールすることができます。
- スポーツや文化活動での実績
- 探究活動や研究プロジェクトへの参加
- 地域活動・ボランティアなどの社会貢献
- 継続的に取り組んだ趣味や興味のある分野
こうした取り組みを大学での学びと結びつけて表現できれば、大きな武器になります。総合型選抜はそうした個性や能力を評価するのに適した方式であり、だからこそ自分の強みを早いうちに整理し、「どう伝えるか」を考える準備が欠かせません。
総合型選抜のメリットとデメリット
次に、総合型選抜のメリットとデメリットはどういったものなのか、確認していきましょう。
メリット
・学力試験が課されない
・スポーツや文化活動、ボランティア、継続的に探究してきたことなど自らの得意とする点を言葉や志望理由書、面接でアピールできる
・年内から選考が始まり、多くの場合年内に合否が決まる点からも進学先を早く決めることができる
デメリット
・志望理由書の準備、小論文の対策(書く力の習得)に時間がかかる点からも付け焼き刃では歯が立たない
・小論文の過去問の入手が困難で対策が立てにくい
・志望理由や大学に入学してから何を学びたいのか、将来の目指す点は何かなど自身に対する十分な深掘りが必要となる
ほかの推薦型入試とは何が違う
総合型選抜とともによく言われる、AO入試や学校推薦型選抜との違いについて紹介します。
AO入試との違い
AO入試とは、アドミッションズ・オフィス(入試に関わる業務を行う部局)が実施する入試の意味で、選抜内容の詳細からも現在の総合型選抜と大きな差はありません。
各大学が公開する入試要項(募集要項)では、AO入試として記載している場合もありますが、AO入試の進化した入試方式が総合型選抜と言って良いでしょう。
学校推薦型選抜との違い
学校推薦型選抜は指定校制と公募制(推薦選抜)に分類されます。手続き上のこととなりますが、学校長の推薦書が必要である点が総合型選抜と大きく異なる点です。
指定校推薦
大学の学部と高等学校との信頼関係に基づく入試で、高い評定平均を求める場合が多く見受けられます。
選抜内容としては、志望理由書や小論文、面接が課されることがほとんどですが、よほどの落ち度がない限り大学側が不合格とすることは稀です。そのため、高校の学内選考も激化すると言えるでしょう。
指定校推薦型の学校推薦型選抜は、人物確認が中心の面接で、大学合格を勝ち取れる可能性が高い試験とも言えます。高い評定平均を維持している場合には、どのような大学から指定校枠が届いているのか情報を十分に確認した上で、こちらを狙うことができます。
公募制(推薦選抜)
学校長の推薦書が必要ではありますが、自由に出願することが可能な入試方式となります。選抜ですので指定校推薦のように推薦書があるため合格が近づくのかと錯覚しがちですが、選抜を潜り抜けないと合格できませんし、募集人員が少ないわりに多くの受験生が出願しますので、難易度が低いとは限りません。
また、指定校推薦に合格した場合は必ず進学する必要があり、入学後に違法行為などの逸脱行為や極端な成績悪化があった場合、出身高校の指定校枠の縮小や廃止といった深刻なペナルティが科される可能性があります。母校や後輩への影響を考慮し、安易な気持ちでは受験できません。
公募制の場合も調査書・志望理由書の提出が必要となり小論文や面接を課す大学も多く、学部の専門的な知識を問うような口頭試問を課す大学も見受けられます。
総合型選抜を受験する前に必要な準備
大学受験を考えるに際して、早い段階から準備を進めることが大切です。
もちろん第1志望の大学・学部を決めることは大切ですが、総合型選抜を受験するとして、まずは志望大学群と志望系統を決めておくことが重要となります。さらに志望先を決めておくことで、準備するべき書類や出願時提出する志望理由書や面接への対策について素早く一手を打つことができます。
総合型選抜の準備について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
「総合型選抜(AO入試)の準備は何から始める?何をすればいい?2つのフェーズで準備完了!」
総合型選抜 に合格するための3つの対策
総合型選抜で大学合格を勝ち取るためには、何が必要なのか、3つの対策についてここから解説します。
志望理由書は自分だけの“受験ストーリー”を言語化すること
志望理由書の基本的かつ重要なポイントは、なぜこの大学を選ぶのか、なぜこの学部なのかという点を明確にアピールする点です。志望理由書の内容は、面接でも必ずと言っていいほど質問されるため、志望理由書と面接はリンクしていると捉えておくことが大事です。
そのため、志望理由書は提出して終わりではなく、面接直前にも内容を確認できるよう必ずバックアップを取っておきましょう。面接の待合室では電子機器の使用が禁止されている場合も多いため、パソコンで作成した場合でも紙に印刷して持参することをおすすめします。自分が書いた内容をしっかりと覚えておくことで、面接での質問にも一貫性を持って答えることができます。
志望理由書について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
「例文付き!総合型選抜(AO入試)は志望理由書で確実に差をつける!」
小論文はテーマに対する「自分の考え」を筋道立てて表現すること
小論文では、基本的に評論などの文章を読ませて筆者の意見や論旨を文字数内に記述するといった傾向が多く、問いが何を求めているのかという実質的な出題内容を把握することが極めて重要となります。一方で、要約や説明のみで構成され、受験生の意見をほとんど求めない出題もあるため、志望大学の過去問を必ず確認しておきましょう。
また、自分の考えを求める問いが出題されますが、原則として奇をてらったような表現や極端な意見を述べることは避け、丁寧な字で文章を書き、読ませる内容を基準とすることが望ましいです。
ただし、芸術系学部などでは他の受験生とは異なる独創性のある表現や意見が評価される場合もあるため、志望学部の特色を理解した上で対策を立てることが重要です。
総合型選抜の小論文対策について詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
「総合型選抜の小論文対策完全ガイド:出題傾向から具体的な準備方法まで徹底解説」
面接は伝える力 × 志望理由の“深掘り”がカギ
面接では、志望理由書の内容をもとに深掘りして質問されます。適度な緊張感を保ちつつ、自分の言葉ではっきりと伝えることができるよう準備することが大切です。
また大学によっては、専門的な知識を問う口頭試問やプレゼンテーションが面接に含まれる、あるいは面接とは別に実施されることもあるので、事前に入試要項で確認しておくと対策が取りやすいです。
総合型選抜の面接について詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
「総合型選抜(AO入試)の面接とは?面接の模範解答例や塾の選び方も徹底網羅」
2026年度入試での総合型選抜における新たな動き
従来より関西の一部の私立大学では、大学教育を受けるに際しての基礎的な知識を習得できているかという判断のもと、学校推薦型選抜や総合型選抜において学習到達度を測る基礎考査が実施されていました。
2025年度入試では、東洋大学や大東文化大学が学校推薦型選抜において、面接や小論文を実施せず、学力テスト(英語・国語、英語・数学)で合否を判定するという内容で実施し多くの志願者を集めた点が話題となりました。
いわゆる年内入試に学力テストを実施するのは、従来からの文科省の方針である、翌年2月1日以降に学力試験を実施するという点に反するのではないかとの大学や高校からの声があり、2026年度入試からの実施方針において新たな動きがありました。
骨子としては、下記になります。
・総合型選抜や学校推薦型選抜において学力試験を導入する際は調査書などの出願書類に加え、小論文や面接と必ず組み合わせて丁寧に評価しなければならない
・小論文などでは教科・科目の知識を問うような形式にならないよう留意する
この方針により年内入試において学力試験を実施する点が大学に認められましたが、一般選抜と比較して難易度はどのようになるのか注視する必要があります。
大学教育を受けるに相当する基礎学力の学習到達度としながらも、一般選抜よりも難易度の低い出題となるのか、同等となるのか、詳細は不明ですが、一般選抜での出題傾向や難易度に合致した対策を行うことが望ましいと考えられます。
※参照典:令和8年度大学入学者選抜実施要項について(通知)|文部科学省高等教育局長
まとめ
「面接だけで入れる大学」は確かに存在しますが、実際には事前の準備や書類審査をクリアした上での面接であり、決して簡単に突破できるものではありません。
総合型選抜は、学力試験では測れない個性や志を評価する入試方式です。志望理由書・小論文・面接といった対策を通じて、自分自身と向き合い、言葉で伝える力が求められます。
しかし、早いタイミングから行動を取り対策を行うことで、合格への実は近づきます。
志望理由書をしっかりと書き上げ、並行してさまざまなテーマの小論文に取り組み、書く力を充実させる、さらに模擬面接など場に慣れる練習を行うことで面接に対する緊張度を低めることができれば、選考での総合的な評価を上げることができるでしょう。
トライでは、個別指導で総合型選抜の対策を行っています。志望理由書、小論文や面接の対策をサポートしますので、総合型選抜での大学合格を目指す方はぜひご相談ください。




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