中学受験において、筆記試験や書類選考だけでなく「面接」を課す学校があります。面接では、お子さま自身の人柄や考え方、家庭の教育方針、学校との相性などが見られ、合否に大きく影響することもあります。志望校の受験に面接がある場合、「何を聞かれるの?」「どう準備すればいいの?」と不安に感じる保護者様も多いのではないでしょうか。この記事では、面接の流れや服装、よくある質問、家庭でできる対策まで、詳しく解説します。
中学受験で面接がある入試方式の情報
筆記試験と並んで「人物評価」が重視される入試方式では、面接が重要な選考要素になります。
面接を課す入試方式
中学受験で面接が行われるのは一部の学校のみです。以下のような入試方式では、面接が重要な選考要素になります。
帰国生入試
海外から帰国したお子さまを対象とする「帰国生入試」では、面接はほぼ必須の選考項目です。筆記試験だけでなく、お子さま自身の考えや表現力、異文化経験をどのように受け止めているかなどを、面接を通じて見極めようとする学校が多くあります。たとえば、渋谷教育学園渋谷中学校や広尾学園中学校などは、帰国生入試で個別面接や親子面接を実施しています。
慶應義塾系列校の2次試験
慶應義塾系列校の 慶應義塾中等部(共学校)と慶應義塾湘南藤沢中等部(共学校)では、1次の筆記試験合格者を対象に、2次試験として面接と体育実技を実施しています。両校とも1次試験に合格できても2次試験を突破できないケースも少なくなく、面接の重要度が非常に高い学校です。
一般入試における一部実施校
面接は一般入試では必須でない学校が多いものの、聖光学院中学校や白百合学園中学校など、一部の有名私立中学校では独自の教育理念や校風との適合性を見るために面接を課すことがあります。特に教育方針に独自性がある学校では、家庭との共通認識やお子さまの人柄を重視する傾向が強いです。
面接があることの意味と目的
面接は単なる儀礼的な手続きではなく、各学校が「どのようなお子さまを受け入れたいのか」というメッセージを反映した選考手段です。学校生活を円滑に送るための社会性やコミュニケーション能力、そして学校の教育理念との親和性を確認する場でもあります。
出願書類や志望理由書との関連性に注意
面接は、あらかじめ提出された出願書類や志望理由書と密接に関連しています。たとえば、願書に記載された志望理由が面接で問われることは非常に多く、内容が一致していなかったり、うまく説明できなかったりすると「準備不足」と見なされる可能性もあります。
中学受験での面接の流れと所要時間
中学受験の面接当日は、事前の準備と心構えが試される場面です。一般的な流れや形式ごとの違いを把握しておくことで、落ち着いて本番に臨むことができます。
受付〜待機〜呼び出し〜入室〜面接〜退室の基本的な流れ
面接当日の流れは、学校や試験形式によって細かく異なることがありますが、基本的には以下のような順序で進行します。
1. 受付:所定の時間に校内で受付を行います。受験票や提出書類の確認が行われることが多く、保護者様も一緒に案内される場合があります。
2. 待機:面接順を待つための控室に案内され、呼び出しがあるまで静かに待機します。この時間に面接の説明があるケースもあります。
3. 呼び出し・移動:面接官やスタッフに名前を呼ばれて面接室へ案内されます。
4. 入室・面接:入室時にはノック・挨拶・お辞儀といった基本マナーを守り、椅子に座るまでの所作も見られています。面接は5〜15分程度が一般的です。
5. 退室:面接終了後は、指示に従い挨拶をして静かに退室します。
面接の形式別の違い
中学受験では、学校によって面接の形式が異なります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
個人面接:
受験生1人で面接官と対面します。受け答えの内容だけでなく、言葉の選び方や表情、態度なども評価対象になります。
親子面接:
保護者様とお子さまが同席し、親子双方に質問されます。教育方針の一致や家庭内の雰囲気、親子関係などが見られます。
グループ面接:
複数人の受験生が一緒に面接を受ける形式です。他者の意見を聞いた上で自分の意見を述べる力、協調性などが問われるケースもあります。
所要時間の目安
面接自体の時間は、5〜15分程度が一般的です。ただし、控室での待機時間や校内誘導などを含めると、全体で1〜2時間程度かかることもあります。学校によっては一斉に面接を行うのではなく、順番待ちの形式で進むため、思ったよりも時間がかかることもあります。
オンライン面接を実施する学校もある
近年では感染症対策や帰国生受験への対応として、オンライン面接を導入する学校も増えてきました。ZoomやTeamsなどのビデオ通話アプリを使用し、自宅から面接を受ける形式です。画面越しのコミュニケーションになるため、視線や声のトーン、接続環境の整備が重要になります。
中学受験の面接でよく聞かれる質問とその意図
中学受験の面接では、さまざまな質問が投げかけられます。質問にはすべて意味があり、受け答えを通じて「人となり」や「家庭の価値観」が見られています。
質問例
中学受験の面接でよく出る質問にはある程度のパターンがありますが、どの質問にも「その子らしさ」や「家庭の教育的な姿勢」がにじみ出るポイントがあります。以下に典型的な質問例をご紹介します。
お子さま向け
・志望理由:「どうしてこの学校に入りたいのですか?」
→ 学校研究の深さや本人の意欲が問われる質問です。
・得意・不得意教科:「どの教科が好きですか?苦手な教科は何ですか?」
→ 自己分析力や正直さ、前向きな姿勢が見られています。
・最近読んだ本:「最近読んだ本のタイトルと、その感想を教えてください」
→ 読書習慣や思考力、表現力のレベルを確認する意図があります。
・将来の夢:「将来どんな人になりたいですか?」
→ 具体性や自分らしい視点を持って答えられると好印象です。
・友達との関係:「友達とケンカしたとき、どうしますか?」
→ 社会性や感情のコントロール、協調性を確認する質問です。
保護者様向け
・家庭の教育方針:「日ごろどのようなことを大切にして子育てをされていますか?」
→ お子さまとの関わり方や教育観の深さ、価値観を見られます。
・学校の選択理由:「なぜこの学校を選ばれましたか?」
→ 学校の理念との相性や、お子さまとの適性を問う質問です。
・お子さまの長所・短所:「お子さんの良いところと課題と思う点を教えてください」
→ 保護者様の観察力や、お子さまへの理解の深さが問われます。
・子育てで大切にしていること:「普段から心がけている家庭での教育方針は?」
→ 家庭の文化や価値観、学校との親和性を見る質問です。
質問のポイントと背景
こうした質問にはすべて、学校側がお子さまや家庭について知りたい「意図」が込められています。ただの受け答えにとどまらず、受験生本人の人柄や考える力、家庭の雰囲気や価値観を確認する目的があります。
たとえば志望理由は、単に「有名校だから」「親に勧められたから」といった答えでは評価が難しいものです。学校が求めているのは、自校の教育方針や校風に共感し、「ここで学びたい」と思っているかどうか。その熱意や個性を本人の言葉で伝えられるかが大切です。
曖昧な答えよりも、“本人の言葉”を大事に
面接では、「正しい答え」を求められているわけではありません。大切なのは、自分の考えを自分の言葉で伝えることです。準備として模範解答を用意するのは良いことですが、丸暗記のような話し方はかえって逆効果になる場合もあります。
たとえば、「どんな本を読みましたか?」という質問に対しても、有名な作品名を挙げることよりも、「その本を読んでどう感じたか」を素直に語る方が、印象に残ります。
服装・持ち物・当日の注意点
面接は見た目や所作も評価の対象です。服装・持ち物の準備と、基本的なマナーをしっかり押さえておきましょう。
お子さまの服装:制服があれば制服、なければ清潔感のある服装
面接におけるお子さまの服装は、清潔感と整った印象を重視しましょう。通っている小学校の制服があれば、それを着用するのが基本です。制服がない場合や私服が指定されている場合は、白シャツ・カーディガンやベスト・紺やグレーのパンツやスカートといったシンプルで落ち着いた装いが望まれます。
ただし、受験シーズンは真冬にあたるため、防寒や体調管理を優先することも大切です。過度にフォーマルさを意識しすぎる必要はなく、温かく動きやすい服装で、本人が落ち着いて面接に臨めることを第一に考えましょう。
髪型も重要なポイントです。長い髪はまとめる、前髪が目にかからないようにするなど、整った印象を与えることを心がけましょう。
保護者様の服装:スーツまたは清潔感のある落ち着いた服装
保護者様も面接に同席する場合、控えめで落ち着いた印象を与える服装が基本です。
男性はスーツ、女性はパンツスーツまたは膝丈スカート+ジャケットなどが一般的です。派手なアクセサリーや強い香水は避け、あくまで “お子さまが主役” であることを意識した装いにしましょう。
持ち物リスト
面接当日は必要な持ち物を忘れずに準備しましょう。前日までにリストを確認しておくのがおすすめです。
- 受験票
- 上履き(保護者様・お子さま両方)
- 下足袋
- 健康調査票(当日提出の場合あり)
- 筆記用具
- ハンカチ・ティッシュ
入退室時のマナー
面接は第一印象が非常に重要です。入室前にはノックを3回→「どうぞ」の声を聞いてから入室→「失礼します」と挨拶し、お辞儀をしてから着席します。
退室時も「ありがとうございました」と挨拶し、軽く一礼してから静かにドアを閉めるようにしましょう。小さな所作が合否を左右するわけではありませんが、礼儀や落ち着きは好印象につながります。
注意点
面接中の座り方や姿勢、視線の向け方にも注意が必要です。背筋を伸ばし、相手の目を見て話すことで、自信と誠実さが伝わります。
また、親子面接の場合は親子の受け答えに一貫性があるかどうかが見られます。お子さまと保護者様の発言がズレていたり、温度差があると、「本人の意思で受験していないのでは?」といった疑念を持たれる可能性があります。面接前に志望動機や家庭の方針について話し合っておくことが大切です。
家庭でできる面接練習と心構え
面接対策は、日々の会話の中から始められます。本番で自然な受け答えができるよう、家庭でできる練習や心の準備をしておきましょう。
模擬面接の進め方
家庭で面接の練習をする際は、親が面接官役となって模擬面接を行う方法が有効です。本番と同じような形式で進行し、実際の質問を投げかけてみましょう。
さらに効果的なのが、その様子をスマートフォンなどで撮影し、あとで一緒に見返す方法です。声の大きさ、話すスピード、表情など、客観的に振り返ることができ、改善点が見つかりやすくなります。
自然な受け答えができるようになるためのコツ
面接で最も大切なのは、自分の言葉で話すことです。模範解答を覚えても、機械的な受け答えになってしまうと、面接官に「自分の意見がない」と受け取られてしまうことがあります。
練習では「どう思う?」「なぜそう感じたの?」と親が質問を重ね、お子さまが自分の考えを言葉にする訓練を積み重ねていきましょう。言葉の選び方よりも、自分なりの視点を持って答える力が大切です。
緊張を和らげるメンタルトレーニング
どれだけ準備をしても、本番では緊張するのが普通です。事前に「緊張するのは悪いことではない」と伝え、深呼吸・笑顔・アイコンタクトなど、緊張を和らげる簡単なテクニックを一緒に練習しておくと安心です。
また、緊張したときの対処法を親子で共有しておくことで、当日の不安を減らすことができます。
「完璧」より「誠実」「素直」を大切に
完璧な答えを求める必要はありません。むしろ、少し言いよどんでも、誠実で素直な言葉の方が心に響きます。たとえば、わからない質問が出たときも、無理に答えようとせず「すみません、わかりません」と正直に答える方が、誠実さを評価されることがあります。
個別指導塾での指導活用も効果的
家庭での練習だけでは不安な場合、個別指導塾や家庭教師の面接指導を利用するのも効果的です。プロの視点でフィードバックがもらえるだけでなく、初対面の大人とのやり取りを通じて、本番に近い緊張感も体験できます。
面接当日に失敗しないためのチェックリスト
面接当日は緊張しやすい場面だからこそ、事前の準備と心構えで安心して臨めます。以下のチェックリストで落ち着いて本番を迎えましょう。
面接前日の確認事項
前日に必ず以下のチェックを済ませておきましょう。
- 面接用の服装(しわ・汚れがないか)
- 受験票(印刷・封筒などの指定確認)の他、持ち物すべて
- 学校(受験会場)までの経路と交通情報、天気予報の確認
前日までにしっかり確認しておくと当日慌てることがありません。特に受験時期の12〜2月は降雪の場合もあります。事前に天気予報をチェックし、交通機関に問題がないかもよく確認しておきましょう。
当日のタイムマネジメント
集合時間の30〜40分前には学校近くに到着するのが理想です。交通トラブルなども想定し早めのスケジュールを立てましょう。
なお、近年は午前・午後で複数校を受験する「午後入試」も一般的になってきています。面接がある場合や所要時間が読みにくい学校では、午後入試との併願が物理的に難しくなるケースもあるため、志望校のタイムスケジュールや移動距離を事前に必ず確認しておきましょう。
直前の声かけの例
緊張しているお子さまには、「失敗しても大丈夫だよ」「いつものように話せば大丈夫」といった安心感を与える声かけが効果的です。
「間違えないように」「ちゃんとしなさい」といった言葉は、余計なプレッシャーにつながるため避けましょう。
よくあるトラブルとその対処法
面接当日のトラブルとして多いのは忘れ物と遅刻です。忘れ物は、直前にもう一度親子でチェックすることで防ぐことができます。万一遅れそうな場合は、必ず学校に連絡を入れることが大切です。誠意ある対応をすれば、状況によっては柔軟に対応してくれる学校もあります。
本番で一番大切なのは、「慌てず落ち着いて行動すること」。準備がしっかりできていれば、自信を持って臨むことができます。
中学受験の面接でよくある質問Q&A
保護者様の方からよく寄せられる面接に関する疑問を、Q&A形式でまとめました。不安を解消し、自信を持って面接に臨むための参考にしてください。
Q1. 面接で落ちることはあるの?
A. 面接が重視される入試方式(推薦・帰国生・一部私立校など)では、面接結果が合否に影響する可能性があります。ただし、落ちるというより「学校との相性が合わなかった」と考える方が前向きです。
Q2. 親が話しすぎてもいいの?
A. お子さまが主役の面接では、保護者様の話しすぎは注意が必要です。あくまで補足程度にとどめ、お子さまの意見を尊重する姿勢を見せることが大切です。
Q3. 志望校の特色をどこまで答えるべき?
A. パンフレットに書いてある内容をそのまま答えるのではなく、その学校のどこに共感したのか、なぜ惹かれたのかといった自分の視点を加えることが評価されます。
Q4. 面接官が無表情でも気にしない?
A. 面接官はあえて表情を変えずに対応することもあります。反応が薄くても気にせず、落ち着いて自分の言葉で話すことが大切です。笑顔で丁寧に対応すれば、それだけで好印象につながります。
まとめ
中学受験における面接は、学力だけでなく「人柄」や「家庭の価値観」を伝える大切な場です。受験方式によって面接の有無や重視度は異なりますが、丁寧な準備と練習をすることで安心して本番に臨むことができます。
服装や持ち物、受け答えの工夫、家庭での練習など、この記事でご紹介したポイントを押さえて親子で一緒に取り組みましょう。
トライでは、面接に関するご相談もお受けしています。志望校やお子さまの個性に合わせた対策をサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。