基本情報技術者試験はITパスポートの上位に位置づけられる国家試験です。合格すればIT技術者として基礎的な知識があることを証明できるため、IT分野で活躍する社会人を中心に人気が高い資格試験です。
大学入試でも活用の機会があるため、社会人に限らず高校生にもぜひ注目してほしい資格です。難関とされる私立大学でも優遇措置を設けており、受験機会を増やす絶好のチャンスです。
この記事では、基本情報技術者試験について試験の詳細や勉強方法を解説し、実際にどの大学の入試で有利になるかを紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。
基本情報技術者試験とは?大学入試に活かせる国家試験!
基本情報技術者試験の内容や効果的な勉強方法についてご紹介します。
そもそも基本情報技術者試験とは?ITパスポートとは何が違う?
経済産業省が行う国家試験である基本情報技術者試験は、「ITエンジニアの登竜門」とされています。ITパスポートを含む情報処理技術者試験の一つで、難易度は4段階のうち下から2番目の「レベル2」に位置付けられています。
「すべての社会人」を対象に基礎的な知識を問う試験がITパスポートであるのに対し、基本情報技術者試験はより専門性の高いエンジニア向けの試験となっています。使う側ではなく、システムを「作る」側を対象にしています。
さらに上位の試験として「応用情報技術者試験」があります。社内でシステムを構築する際に、条件を明確にして設計・開発し、運用もできる高度なITの専門家、責任者を対象にしています。
基本情報技術者試験は、その責任者の下で、指示の内容を理解して作業ができる人を養うことを目的にしています。いわば、ITパスポートと、応用技術者試験の中間に位置する試験です。
ITエンジニアとしての活躍を目指す人のための試験ですが、高校生にも注目してほしい資格です。基本情報技術者試験に合格していると、大学入試でも有利に作用することもあります。ITパスポートを持っている人、高校における情報の科目を得意とする人はぜひ受験を検討してください。
なお、ITパスポートの特徴や大学受験での活用方法は下記をご覧ください。

基本情報技術者試験の出題範囲や合格率
試験の形式や出題範囲を理解することは、効率的な学習の第一歩です。ここでは試験時間や科目内容、合格率について解説します。
試験時間・出題範囲
試験時間は計190分で、基礎的な知識を問う科目A(90分)、応用的な内容の科目B(100分)に分かれています。どちらも選択式で、合格には各科目で6割以上得点する必要があります。
科目Aは下記の分野から計60問出題されます。
- テクノロジ系(基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、開発技術)
- マネジメント系(プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント)
- ストラテジ系(システム戦略、経営戦略、企業と法務)
いずれもITパスポートの発展的な内容となっています。
科目Bの出題分野と出題数は以下の内容です。
- アルゴリズムとプログラミング分野:16問
- 情報セキュリティ分野 : 4問
計20問のうち、大半がアルゴリズムとプログラミング分野からの出題です。
基本情報技術者試験は2023年度からCBT試験に移行しました。CBT試験とは、受験者が日時と会場を選べる試験の形式です。受験料は7,500円で、受験資格はなく誰でも受けられます。合格は試験の翌月に公式サイトで発表されます。
2023度以降の受験者は年間10万人程度で、合格率はおおよそ40%台です。約7割が社会人ですが、高校生も毎年2,000人ほど(約2%)受験しています。高校生の合格率は3~4割台です。
社会人と比べて高校生は受験者数も少なく、合格率も少し下がりますが、きちんと対策すれば合格は十分に可能です。
基本情報技術者試験の勉強方法
合格に向けては、自分に合った勉強法を選び、着実に知識を定着させることが重要です。ここでは、基礎固めから実践的な学習方法までを紹介します。
基礎を固める
基本情報技術者試験への挑戦を検討中でITパスポートを持っていない人は、まずはITパスポートに合格することが望ましいです。いきなり基本情報技術者試験を受けることも可能ですが、着実にステップアップする方が合格への近道です。
科目AはITパスポートと分野が重複しています。基礎的な知識を問うITパスポートに比べて発展的な内容になっていますが、基礎が固まっていないと応用問題の勉強も思い通りに進みません。結果的に時間がかかったり、気持ちが続かずに継続が難しくなったりします。
すでにITパスポートを持っている人で、合格からだいぶ間が空いている人はITパスポートの復習から始めましょう。
自分に合った対策方法を見つける
基本情報技術者試験の対策は、講座受講、または独学の2種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあります。講座受講の場合、通学かオンラインで受けることになります。学習ペースを作りやすく、不明点を質問できることがメリットです。また学習習慣がつきやすく、継続しやすいでしょう。一方で、受講費用が高額になります。主催する企業によってばらつきはありますが、高いもので7万円台などに設定されています。
費用を抑えられるのは市販の参考書を活用する独学です。参考書は1,000円程度で市販されています。学校の課題や部活が忙しくなったり、わからないことを質問できる人が近くにいなかったりするとペースが乱れて挫折しやすいです。
どちらが自分に合っているか検討しましょう。ITパスポートをすでに持っている人であれば、自分が続けやすい学習方法がわかっていると思います。初めて学習する人は、まずは講座の資料請求から検討してみてください。
インプットとアウトプットを繰り返す
どんな学習方法を選択しても、基本はインプットとアウトプットの繰り返しです。インプット(入力)は知識を習得すること、アウトプット(出力)はその知識を活用することです。参考書を読んだり講座を受けたりして知識が増えたら、問題集を解いて知識の定着状況を確認します。これを繰り返すことで、自分の苦手とする分野がわかります。
基本技術者試験は、科目A、Bともに、それぞれ6割以上の得点が必要です。科目Bは8割が「アルゴリズムとプログラミング分野」からの出題で、この分野を苦手としていては合格するのは難しいです。
得意分野を伸ばすことも大切ですが、苦手分野を作らないことが合格のカギです。
大学入試に向けた基本情報技術者試験の活用方法
大学入試で基本情報技術者試験の合格がどう活かせるか、という問いに答えるとともに、入試で優遇措置を設けている大学と内容をご紹介します。
総合型、学校推薦型選抜での高評価を目指せる
基本情報技術者試験に合格していると、大学入試の際に高い評価を受けて選考などで有利に働きます。具体的には、総合型、学校推薦型選抜において出願条件になっていたり、選考の際に有利に加点されたりします。
ITパスポートでも入試の際に評価を受けますが、基本情報技術者試験の方が評価は高いです。例えば、愛知大学では、ITパスポートで出願するなら必要な評定は4.0ですが、基本情報技術者試験の場合3.8に下がります。
ただし、さらに上位の応用情報技術者試験が高い評価を受けるとも言い切れません。出願条件や加点対象資格の欄に、応用情報技術者試験を募集要項に記載していない大学もあります。その難易度の高さから高校生の合格を考慮していないだけかもしれませんが、言い換えると、大学側もそれほどの専門性は求めていない、ということでもあります。
大学受験を目的にするという点では、基本情報技術者試験に合格できたら、英検®や漢検など他の資格に挑戦したり、面接や小論文対策に時間をかけたりする方が効率的です。
基本情報技術者試験合格者に優遇措置がある大学
基本情報技術者試験を入試で活用している大学を紹介します。募集要項で「基本情報技術者試験」やITパスポートも含めた国家試験全てを指す「情報処理技術者試験」の名称を確認できた大学を掲載しています。
基本情報技術者試験の公式サイトでも紹介していますが、掲載していない大学もあるので、試験に興味がある人はぜひ志望校の募集要項も確認してください。
| 大学(学部学科) | 国公私立 | 都道府県 | 活用内容 | 入試種別 |
|---|---|---|---|---|
| 茨城大学 (人文社会科学部現代社会学科、法律経済学科) |
国立 | 茨城県 | 点数加算 | 学校推薦型選抜 |
| 獨協大学 (経済学部経済学科、経営学科) |
私立 | 埼玉県 | 出願要件 | 自己推薦入試 (Bグループ) |
| 駒澤大学 (経済学部、グローバル・メディア・スタディーズ学部) |
私立 | 東京都 | 出願要件(※) | 自己推薦選抜 (特性評価型) ※グローバル・メディア・スタディーズ学部はA方式で出願可 |
| 専修大学 (商学部、経営学部経営学科) |
私立 | 東京都 | 出願要件(※) | 商;公募制推薦入試 経;総合型選抜 |
| 中央大学 (経済学部) |
私立 | 東京都 | 出願要件 | 高大接続入試 (資格・実績評価型) |
| 津田塾大学 (学芸学部情報科学科) |
私立 | 東京都 | 参考 | 総合型選抜 |
| 東洋大学 (総合情報学部第1部 総合情報学科 システム情報専攻 他) |
私立 | 東京都 | 出願要件 | 自己推薦入試 |
| 日本大学 (経済学部、危機管理学部) |
私立 | 東京都 | 出願要件 | 総合型選抜 (資格型) |
| 武蔵大学 (経済学部) |
私立 | 東京都 | 出願要件 | 総合型選抜 (商業系資格重視型) |
| 愛知大学 (経済学部、経営学部) |
私立 | 愛知県 | 出願要件(※)、 点数加算 |
公募制推薦入試 (情報・簿記会計推薦方式) |
| 愛知淑徳大学 (文学部、教育学部 他、活動実績入試を実施する全学科) |
私立 | 愛知県 | 出願要件(※) | 活動実績入試 |
| 中京大学 (法学部、総合政策学部、工学部、経済学部、経営学部、現代社会学部) |
私立 | 愛知県 | 出願要件(※) | 法学部:高大接続入試 (基礎力評価型) (総合型選抜の一種) 法学部以外: 一芸一能(特Ⅰ)推薦 (学校推薦型選抜の一種) |
| 南山大学 (経営学部) |
私立 | 愛知県 | 出願要件 | 総合型入試 (資格・検定試験活用型) |
| 名城大学 (経済学部) |
私立 | 愛知県 | 出願要件(※) | 総合型選抜 (資格・検定活用型) |
| 同志社大学 (文化情報学部) |
私立 | 京都府 | 点数加算 | 文化情報学部自己推薦入試 (横断的思考力評価型入試) |
| 関西大学 (商学部) |
私立 | 大阪府 | 出願要件(※) | 公募制推薦入試 |
| 近畿大学 (経済学部、工学部) |
私立 | 大阪府 | 経;出願要件、 工;点数加算 |
総合型選抜 (経済学部はビジネス・データサイエンス志向型(B)) |
| 甲南大学 (経営学部) |
私立 | 兵庫県 | 出願要件(※) | 公募制推薦入試 (個性重視型) |
| 西南学院大学 (商学部) |
私立 | 福岡県 | 出願要件 | 総合型入試 |
(※)のある大学は、基本情報技術者試験の合格以外に評定基準なども条件に設定しています。
大学入試に活かせる基本情報技術者試験を勉強するのにおすすめな人
どんな人にとって基本情報技術者試験の勉強が効果的なのかを整理しました。自身の志望校や将来の進路と照らし合わせて参考にしてください。
将来ITの技術者として活躍したいと考えている
ITエンジニアの登竜門とされる基本情報技術者試験ですが、試験対策には時間がかかります。その分、大学入試だけでなく、大学入学後の就職活動や社会人になってからの転職でも役に立つ資格です。
ITエンジニアに求められる必要な知識や技術があることを客観的に証明できるため、履歴書やエントリーシートに記載することで他の人よりも高い評価を受けられるでしょう。基本情報技術者試験に高校生で合格すれば、大学生活の時間に余裕がある期間を活用して、上位の応用情報技術者試験や他の試験に挑戦できます。
ITパスポートに合格している
ITパスポートに合格している人は、ぜひ受験を検討してください。基本情報技術者試験の科目AはITパスポートに比べて範囲が広く発展的な内容になっているものの出題分野が重複しています。
IT関連資格を基本情報技術者試験で初めて学習する人は基礎から学ぶ必要がありますが、ITパスポートを持っていれば基礎部分の学習をある程度省略することができます。
志望校に基本情報技術者試験の優遇措置がある
志望校が総合型、学校推薦型選抜で基本情報技術者試験を入試で活用している場合は、受験をする価値があります。商業系の学校、学科だけを対象に基本情報技術者試験の合格者に優遇措置を設けている大学もあります。一般入試での受験に不安を感じている人にとっては、受験機会を増やすことができ合格の可能性を高められます。
大学は合否を判定するため、一般、総合型、推薦の形態を問わず入試を通して受験生の「学力の3要素」を把握します。学力の3要素とは、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体性を持ち、多様な人々と協働しつつ学習する態度」のことです。
受験において、基本情報技術者試験に合格していることは受験において大きなアピール材料になります。ただし、それだけでは大学に合格できず、面接や小論文対策は欠かせません。
大学入試で活躍する基本情報技術者試験に関するよくある質問
基本情報技術者試験に関するよくある質問をまとめました。
基本情報技術者試験は大学受験にどう活用できますか?
主に総合型選抜、学校推薦型選抜で活かすことができ、出願要件になっていたり、選考の際の加点対象になっていたりします。ITパスポートよりも高い評価を受け、より優位に進められるので、ITパスポートに合格している人もぜひ受験を検討してください。
基本情報技術者試験は高校何年生で受けるのがベストですか?
基本情報技術者試験合格の効力は生涯有効です。有効期限はなく、更新の必要もありません。また、受験日時や会場を選べるCBT試験を採用しているので、年中、好きなタイミングで受験できます。
ただし、大学によっては、合格時期を制限している場合があります。大学によってばらつきはありますが、願書提出時期からさかのぼって2年以内などのケースがあります。1年生で受験を検討している人は注意が必要です。高校2年生から出願までの期間に受験して合格するのが確実でしょう。
一般入試の対策をしている人や部活動をしている人は、高校生活の早いうちに合格するのが望ましいですが、早めにしすぎてもせっかくの努力が受験で活かせない可能性もあります。
志望校の募集要項を確認した上で、早めに対策を始めましょう。
大学入試の面接で基本情報技術者試験合格をどうアピールしたらいいですか?
大学入試で活かすという点では、基本情報技術者試験の合格だけでは不十分です。面接や小論文対策も合格には重要です。大学入試で高い評価を受けることは間違いありませんが、他の受験生も英検®や簿記などの他資格、生徒会活動や部活動で高い実績を収めて入試に臨んでいます。
大学は受験生を「学力の3要素」の観点で評価します。志望校への熱意や学びたい意欲、高校生活での学習の工夫や努力を試験への挑戦の具体例として、自分の言葉で表現することが大切です。
まとめ
基本情報技術者試験に合格すると、大学の総合型選抜、学校推薦型選抜を有利に進めることができます。ITパスポートに合格している人、IT分野に関心がある人は受験を検討してください。高校生の合格率は高くはありませんが、難関とされる私立大学でも優遇措置を設けています。合格すると受験を優位に進めることができるので志望校の募集要項をぜひチェックしてみてください。
商業の専門学科や総合学科に通っている人だけを対象に措置を設けている大学もあります。普通科以外の生徒や一般入試に自信がない人にとっても、受験機会を増やすことができ合格の可能性を高めることができます。
大学入試という点では、基本情報技術者試験の合格をどう活かすかが大切です。あくまでも「優遇措置」であり、それだけでは大学に合格できません。他の受験生もさまざまな分野で努力しています。
基本情報技術者試験に挑戦した理由、合格までの過程を具体例に、その志望校で学びたいという意欲や熱意、高校生活での努力と達成を面接でアピールする必要があります。大学受験対策では、自分が使える時間を何にどれくらい使うか、という戦略も重要です。
資格対策に時間をかける分、面接や小論文対策はプロの力を借りることもその一つです。トライでは、各大学の入試に合わせた対策をしています。大学入試で基本情報技術者試験を活かしたい人は、お気軽にご相談ください。
合格へ導く4つのステップ
圧倒的な合格実績を生み出す、
他塾にはない徹底的なサポート
年間カリキュラム
の作成
目標とする志望校や現在の思考力レベルから、合格のために個別の専用カリキュラムを作成します。また、志望大学や興味のある学問から、併願校受験の戦略も提案します。
コーチング面接
【25コマ】
推薦・総合型選抜に特化した専門コーチが入試対策をサポートします。面談の際には生徒の将来像や志望理由の深掘りを徹底的に行い、より深みのある志望理由の完成に導きます。(質問対応も可)
動画コンテンツ
の視聴
推薦・総合型選抜の合格に必要な能力や対策方針をプロ講師が解説します。入試に精通したプロの目線でエッセンスを伝えますので、合格のためにすべきことが明確になります。
添削サポート
【全10回】
出願書類や小論文など、大学別に必要な書類を専門チームが添削しアドバイスします。執筆・添削・書き直し、という工程を繰り返すことで、書類の完成度を着実に高めます。
志望校に特化した
オーダーメイドの対策が可能です!

