総合型選抜(AO入試)において、志望理由書は成否を左右する重要な書類です。高い完成度で仕上がった志望理由書であれば、志望校が求める人物像に合致していることを的確にアピールすることができます。本記事では、審査で差がつく志望理由書の特徴から具体的な書き方、完成度を高めるチェックリストまで、総合型選抜を志望する受験生が知るべき内容を徹底解説します。
総合型選抜(AO入試)の志望理由書は非常に重要
総合型選抜における志望理由書の重要性
総合型選抜は、学力だけでは測れない受験生の多面的な能力や可能性を評価するための入試方式です。従来の学力試験中心の選抜とは異なり、受験生の主体性、多様性、将来性などが非常に重要視されます。
志望理由書は、このような総合型選抜入試特有の評価方式を支える重要な書類であり、
- 何を学びたいのか?
- 将来的に大学での学びをどう活かすのか?
- どの程度の強い熱意を持っているのか?
などの観点から、大学側が受験生の本質的な資質を見極めるための判断材料としての役割を担っています。
同時に、志望理由書は面接や小論文など他の選考要素とも密接に関係しています。例えば面接においては、志望理由書に書かれている内容を深堀りするような質問が投げかけられますし、活動報告書や小論文のテーマや視点においても、興味や目標に志望理由書の内容と一貫性があるかの見極めが行われます。
大学側が総合型選抜による選考で評価対象としているのは、自ら課題を発見し主体的に取り組む姿勢であったり、課題解決に向けた熱意や努力の過程であったりします。
志望理由書は、受験生が志望校にとってふさわしい人物であることをアピールするための貴重なツールであるだけでなく、自分自身の将来設計を深く考えるきっかけとしても活用できます。こうした多面的な役割を果たす書類であることが、志望理由書の重要度を高めているとも言えます。昨今では、一般選抜においても、分量的には短いながらも志望理由を書く必要がある大学も増えてきています。
差がつく志望理由書の特徴
差がつく志望理由書の特徴として以下が挙げられます。
- 独自の問題意識を持っているか
- 具体的な実践を意識しているか
- 明確な将来ビジョンがあるか
- アドミッションポリシーとの深い相関性があるか
- 大学での具体的な活動計画が明確か
志望理由書を高いクオリティに仕上げるためには、これらの要素を一貫性を持って繋げ、全体として説得力のあるストーリーにする必要があります。
「独自の問題意識」は、受験生がこれまでの経験を通じて発見した課題や興味を明確にする出発点です。この問題意識を軸にして「具体的な実践」を経験として語ることで、受験生がその課題にどのように向き合い、実際に行動したかを示すことができます。
これらの経験や問題意識から発展する形で、「明確な将来ビジョン」が提示されることが求められます。将来の目標や社会貢献への意欲が具体的に描かれていることで、大学側が受験生の可能性をより高く評価するきっかけとなります。
同時に、この一連の流れにおいて「アドミッションポリシーとの深い相関性」が示されることも不可欠な要素です。それまでの経験や問題意識と関連して、志望大学での学びが不可欠であることを示すことで、志望理由書全体の一貫性が非常に高まります。
その上で「大学での具体的な活動計画」が盛り込まれることで、これまでの経験や将来ビジョンが、入学後の活動によってどのように実現可能なのかを、説得力を伴って語ることができます。
問題意識から経験、将来ビジョン、大学選びの理由、そして具体的な計画までを一貫性のある流れで構築することで、魅力的で他の受験生と差別化された志望理由書を作成することができます。
志望理由書の書き方~準備編
自己分析と強みの深堀り
志望理由書を準備するにあたり、自己分析は出発点であり、志望理由に説得力を持たせるために欠かせないプロセスです。単純な自己PRではなく、自分自身の本質的な特徴や可能性を深く理解する意識が必要です。
具体的には、部活動、ボランティア活動、学業、資格やスキル、趣味など、これまでの経験を振り返って、特に熱中したことや、達成感を得たことに関するエピソードをリストアップしていきます。
【例】
- 文化祭でリーダーを務めた経験
- 地域ボランティアを通じ社会的な課題を感じた経験
- 課題研究で困難を乗り越えた経験
次に、これらの経験を通じて得た自分の強みを分析していきます。「どのような場面において何を達成できたのか?」「その際に自分自身のどのような特長が活かされたのか?」などを客観的に掘り下げるスタンスで向き合うと効果的に分析できます。
【例】
- 興味を持った分野に熱中し、あまり意識しなくとも新たな知識やスキルを吸収できる
- 周囲と互いに影響を及ぼし合いながら目標を達成するためのリーダーシップを発揮できる
- 課題を整理し、適切な問題解決策を明確に提示できる
これらの自己分析を通じ、自分自身の興味や関心を明らかにする感覚も意識しましょう。志望校が求める人物像と上手く関連付けられるよう、効果的に自己を客観視することも大切です。
志望大学・学部の徹底リサーチ
志望理由書を説得力のあるものに仕上げるためには、志望大学や学部に対する徹底したリサーチが必要不可欠です。押さえておくべきポイントとして以下が挙げられます。
- 大学のアドミッションポリシーを確認する
- 学部・学科の特徴を調べる
- オープンキャンパスや大学説明会を活用する
- 卒業生の進路や実績を確認する
- 他大学との比較で「志望理由」を強化する
自分の将来的なビジョンと志望校の教育理念をいかに結びつけられるかを意識することが求められます。アドミッションポリシーを軸に、志望校、志望学部の本質的な特色や教育方針を徹底的に分析し、自分の経験や将来ビジョンとの接続点を見つけ出しましょう。
このような視点を持ったリサーチを徹底して実施することで、志望理由書に深い説得力と独自性を持たせることができます。
志望理由の方向性を決定する
自己分析と志望校のリサーチで洗い出した要因や情報を踏まえ、自分の経験や将来ビジョンを大学のアドミッションポリシーやカリキュラムに、いかに関連させられるかを考えていきます。
例えば、高校時代に取得した資格や深く取り組んだ探究活動がある場合、それを大学での教育プログラムやゼミでの活動などと結びつける形で志望理由を具体的に明確化していきます。
また、大学での学びを通じて将来的にどう社会に貢献できるかを示すことも重要です。具体的なエピソードを絡めながら、より説得力のある志望理由書の方向性を整理しましょう。
志望理由書の書き方~実践編
STEP1: 具体的なエピソードを構成に落とし込む
本格的な作成に移る前に、準備編で決定した志望理由の方向性を、1つのエピソードとして「過去・現在・未来」の流れに落とし込んでいきます。
【過去:これまでの経験や取り組みの影響】
これまでの経験や取り組みが、自分自身の興味や関心にどう影響したかを簡潔に述べます。その経験が志望理由に密接に繋がっていく必要があるので、そこを意識しつつ構成していきます。
【現在~未来:問題意識や興味と将来の展望】
前項の「これまでの経験」に関連する形で、現在どのような問題意識や興味を持ち、それにより何を学びたいと感じているのかを具体的に述べます。リサーチした志望校に関する情報を、自分自身が学びたいことや、将来ビジョンと関連させて構成していきます。
特に、その大学で学ぶことが、問題意識の解決や発展とどう繋がるかに焦点を当てながら述べていくと効果的です。具体的であればあるほど、より良い印象を持ってもらえるでしょう。
STEP2: 文章を構成して記述する
ここまで準備が整ったら、実際に志望理由書全体を作成していきましょう。志望校にもよりますが、文字数は800文字~2,000文字が一般的です。文章だけでなく、図や表を活用できる場合は、情報をよりわかりやすく伝えられるため積極的に用いましょう。全体像として、以下の流れを意識すると説得力のある志望理由書になります。
- 結論:志望の意思を明確にする
- 根拠:志望理由を説明する
- 具体的なエピソード:自身の経験を盛り込む
- 決意:入学後の展望を伝える
実際の例文を掲載する形で、上記4つのポイントの組み込み方をイメージしてもらいます。以下はあくまでも例文ですので、個々の状況や目標、それぞれの志望校の特徴に当てはめつつ、次項にて解説しているチェックリストも参考にしながら、より高い完成度を目指してください。
【志望理由書の例文】
■結論(志望の意思を明確に伝える)
私は、高い言語スキルにとどまらず、異文化コミュニケーションスキルを幅広く身につけて、国際間のビジネス取引をサポートできる専門家になるために、貴学にて学ぶことを強く希望しています。
■理由(志望校と自分の関連性を説明する)
高校時代に英語スキルを通じて異文化間のコミュニケーションの面白さに感銘を受けました。ただし、語学力が高ければ、異文化間のコミュニケーションが必ずしもスムーズに進むわけではないことを痛感しました。異なる文化を持った者同士が異なる文化背景を理解し、互いに尊重し合うスタンスを持つことも、円滑な異文化間コミュニケーションの鍵であると感じています。
貴学は長年の語学教育の実施によるハイレベルなプログラムが整っているだけでなく、豊富な留学制度も用意されています。貴学に身を置くことこそが、私の学びをより深く追求できる道であると考えています。
■具体例(経験を交えて説得力を加える)
高校1年生の時に英検2級に合格したことがきっかけで、外国人向けの陶芸教室を運営する叔父の手伝いを始めました。英語による受講者とのやり取りや、手順や解説の説明書の翻訳などを担当しました。
難しい内容もなんとか工夫して伝え、私の通訳や翻訳が上手く機能して、受講者の陶芸への理解が深まったことで教室の評判も良くなっていきました。結果として、受講者の数がみるみる増えていくことを目の当たりにすることになったのです。英語という言語の影響力と、外国人と意思疎通できる面白さに強い関心を持ちました。
そのことがきっかけで、より大きな舞台で自分の語学力を活かしてみたいと考えるようになり、現在は国際的なビジネスの場での活動を希望しています。そのような大きな舞台となれば、異なる文化を持つ人間同士が、よりお互いを理解することの重要性が増大すると感じています。
■決意(入学後の学びと将来の目標を述べる)
入学後は、貴学の語学プログラムに加え、充実した留学制度を大いに活用して、更なる英語力の向上を追求することに加え、異文化理解や、海外からの日本や日本人への評価など、幅広い視点を意識できる包括的なコミュニケーションスキルを身につけた人材として、日本企業と外国企業の相互理解に貢献したいと考えています。
STEP3: チェックと改良を複数回実施する
作成した文章を、以下のチェックリストを参考に見直して、改良に改良を重ねて完成度を高めていきましょう。志望理由書は事前に作成を済ませられる提出物です。学校の先生や、総合型選抜で進学した先輩からフィードバックを受けるなど他者の視点を取り入れて、自分では気付けなかった改善点を発見することもできるでしょう。もちろん、他人に書いてもらうのはいけませんので、あくまでフィードバックをもらい、自分の言葉で語れる範囲内で記載をしましょう。
【志望理由書のチェックリスト】
■自己分析が具体的なエピソードに基づいている
抽象的な自己PRではなく、具体的な経験が志望理由にしっかりと結びついているか?
■アドミッションポリシーに合致している
志望校が求めている学生像に、自分の経験や目標が当てはまっている旨がアピールできているか?
■志望動機に説得力がある
その大学で学びたい理由が明確であり、リサーチした具体的な内容(例:教育プログラムの特長、教授の研究内容、準備されている科目など)が盛り込まれているか?
■将来の目標が具体的か
入学後に取り組みたい活動や、卒業後の進路やビジョンが具体的で現実的なものとして描かれているか?
■全体の構成が論理的で流れがスムーズか
各段落の繋がりが自然であり、全体として伝えたいことがスムーズに伝わる流れになっているか?
■誤字がなく、文法・表現に違和感がないか
誤字脱字がなく、難解な表現や曖昧な言い回しのない文章になっているか?
総合型選抜(AO入試)で成功する志望理由書 まとめ
志望理由書は、総合型選抜において、成否を左右するとても重要な書類です。面接や小論文など他の選考要素とも密接に関連しているため「最重要書類」と言っても過言ではありません。
自己分析や志望校リサーチを徹底して実施して本質部分の理解に努め、現在感じている問題意識の解決や将来ビジョンの実現を、志望校での学びと上手く関連付けることが成功の鍵です。
特に志望理由書は、推薦で合格した先輩や、プロの目線からチェックすることも大切です。出願までの時間を効率的に活用しながら、何度も改良を重ね、一貫性のある完成度の高い志望理由書に仕上げてください。