中学受験の算数において、「仕事算」やその応用である「ニュートン算」は、中堅校から難関校まで幅広く出題される重要な単元です。
しかし、目に見えない「仕事量」という概念を扱うため、苦手意識を持つお子さまが非常に多い分野でもあります。これらの問題は、解法の型を身につけ、適切な図を書く習慣をつけることで、確実に得点源に変えることができます。
本記事では、計算ミスを激減させる「最小公倍数」の活用法や、混乱を防ぐ「専用の線分図」の書き方を解説します。
仕事算とニュートン算の違い
まずは、仕事算とニュートン算のそれぞれの特徴とその違いを正しく理解しましょう。
仕事算の特徴
仕事算とは、ある決まった量(全体量)の仕事を仕上げるのに必要な時間や人数を考える問題です。最大の特徴は「全体の仕事量が変わらない」という点にあります。
例
- 1つの壁をすべて塗り終えるのにかかる日数を求める
- 1つの水槽を空にするのにかかる時間を求める
- ある原稿を数人で分担して完成させる
など
「全体の仕事量を1とする」と習うことも多いものの、中学受験においては、計算を効率化するために具体的な数値で置き換える工夫が求められます。
ニュートン算の特徴
ニュートン算は、仕事算に「時間の経過とともに全体量が増える・または減る」という条件が加わった問題です。科学者ニュートンが著書で紹介した「牧草を食べる牛」の問題に由来しています。
例
- 行列に並んでいる間にも、後ろに新しい人が加わり続ける
- 池の水をポンプで汲み出している間にも、底から水が湧き出し続ける
- 牧草地の草を牛が食べている間にも、新しい草が生え続ける
など
仕事算が「固定されたパイを奪い合う」イメージなら、ニュートン算は「蛇口を開けっ放しにしながら排水口から水を抜く」ような、動的な状況を扱う問題と言えます。この「増える量」と「減らす量」の追いかけっこをどう整理するかが攻略のポイントです。
仕事算の解き方の基本|「最小公倍数」を使って全体の量を数値化する
仕事算の攻略において、多くのお子さまが最初につまずくのが「全体の仕事量を1とする」という考え方です。1を人数や日数で割ると分数が登場し、計算ミスを誘発するだけでなく、感覚的な理解を妨げてしまいます。
計算ミスをなくし、直感的に解くための最も有効な実戦テクニックは、全体の仕事量を日数の「最小公倍数」で設定することです。これにより、すべての数値を整数で処理できるようになり、スムーズに解けるようになります。
【例題】基本の仕事算
1.全体の仕事量を決める
12と18の最小公倍数である「36」を全体の仕事量とおきます。
2.1日あたりの仕事量(パワー)を出す
全体の仕事量を日数で割り、1日あたりの作業効率を求めます。
Aさんのパワー:36÷12=3
Bさんのパワー:36÷18=2
これで「Aさんは1日に3ずつ、Bさんは2ずつ仕事を進める」という具体的な能力が数値化されました。
3. 2人の合計パワーを出す
「2人で協力する」ということは、1日に進む仕事量は2人のパワーの合計になります。
3+2=5(2人で協力すると、1日に「5」ずつ進む)
4.全体の量をパワーで割る
最後に、全体の仕事量を1日の合計パワーで割ります。
36÷5=7.2
答え:7.2日(7日と4時間48分)
このように、「全体の量」をあらかじめ整数にしておけば、あとは単純な割り算だけで答えにたどり着くことができます。「1」という抽象的な数字を使うよりも、お子さまの頭の中に具体的な作業風景が浮かびやすくなるはずです。
仕事算の応用|「面積図」を書いて交代・お休みパターンを解く
仕事の途中で条件が変わる問題は、面積図を使って視覚的に整理するのが鉄則です。このタイプには大きく分けて「交代」と「お休み」の2パターンがありますが、どちらもパワーの変化を縦軸に書くことで同じように解けます。
面積図を書く際は、以下の3要素を固定して考えます。
- 縦の長さ:1日あたりの仕事量(パワー)
- 横の長さ:働いた日数(時間)
- 全体の面積:全体の仕事量
【パターン1】途中で人が入れ替わる「交代」のケース
AさんからBさんへ完全に仕事をバトンタッチするパターンです。縦軸には「Aさんのパワー」と「Bさんのパワー」をそれぞれ書き込みます。
1.面積図を書く
縦軸の左側に5、右側に3を書き、横軸の合計を16、面積を60にします。
縦軸の左側に5(A)、右側に3(B)を書き、横軸の合計を16、全体の面積を60にした階段状の図を書きます。

2.面積の差で計算する
「全体(16日)をすべてAさん(パワー5)が進めた」と仮定します。
5×16=80
次に、実際の仕事量(60)との差を求めます。
80-60=20
この「20」の余りは、パワーが小さいBさんがいたために生じた差です。パワーの差(5-3 =2)で割ります。
20÷2=10
答え:10日間
【パターン2】途中で誰かが抜ける「お休み」のケース
2人で協力していたのに、途中で1人が休んでしまうパターンです。この場合、縦軸を「2人の合計パワー」と「残った1人のパワー」に分けて考えます。
一見すると複雑そうですが、実はパターン1の「交代」と構造は全く同じです。「2人分のパワー(A+B)」から「1人分のパワー(Aのみ)」へとバトンタッチしたと考えれば、同じ面積図で攻略できます。
1.面積図を書く
このパターンのポイントは、縦軸の数値を「2人の合計」と「残った人の分」に設定することです。縦軸の左側に3(2+1)、右側に2(Aのみ)を書き、横軸の合計を12、面積を30にします。

2.面積の差で計算する
「12日間、一度も休まずに2人(合計パワー3)で進めた」と仮定します。
3×12=36
次に、実際の仕事量(30)との差を求めます。
36-30=6
この「6」の不足分は、パワー1のBさんが休んでしまったために減った仕事量です。パワーの差(3-2=1)で割ります。
6÷1=6
答え:6日間
面積図の右側の横幅(6日分)が、そのまま「Bさんが不在だった=休んだ」日数になります。図の中に「Bが休んだ」と書き込むことで、どの数字が答えに直結しているのかがより明確にわかるようになります。
仕事算の応用問題でつまずいてしまうと「もう入試までに算数が間に合わないのでは?」と不安になるかもしれません。算数で伸び悩む本当の原因と、今すぐできる対策については、こちらの記事も参考にしてください。

ニュートン算の攻略|「線分図」で情報の増減を整理する
ニュートン算は、中学受験算数の中でも最難関の1つとされる単元です。難しく感じられる最大の理由は、「減らしている間にも、同時に増え続けている」という、状況の複雑さにあります。
攻略のポイントは、バラバラな情報を専用の「線分図」に落とし込み、「1分あたり(または1日あたり)に、正味でどれだけ減っているか」を突き止めることです。
なお、この「差がどれだけの速さで変化するか」に注目する考え方は、旅人算にも共通しています。
行列のニュートン算
1.「はじめの量」を線にする
まず、窓口が最終的に処理しなければならない「延べ人数」を線で書きます。

2.「増える量」を付け足す
その先に、時間が経つごとに増えていく「5人×〇分」の分を付け足します。この「100人+(5人×〇分)」が、窓口が処理すべき全仕事量になります。

3.「減らす量」を下側に書く
次に、窓口が処理できる「10人×〇分」の線を書きます。「行列がなくなる」ということは、「上側の線(はじめの人数+増えた人数)」と「下側の線(窓口が処理した人数)」の長さがぴったり一致したときを指します。

4.「1分あたりの正味の減り」に注目する
上下の線の「差」に注目して計算を進めます。
1分間に5人増えて、10人減るということは、差し引きで「1分間に5人ずつ(10-5=5)」行列が減っていくことになります。
5.はじめの量を正味の減りで割る
はじめの量である100を、1分間に減る量である5で割ります。
100÷5=20
答え:20分後
合格力をつける家庭学習のコツ
仕事算やニュートン算は、解法の手順を知っているだけでは、入試本番で得点に結びつけることはできません。テストで確実に正解するために必要なのは、真っ白な紙に自分で図を書き、論理を組み立てられる「再現力」です。
ご家庭での学習では、単に丸つけをして終わりにするのではなく、以下の3点を意識して取り組んでみてください。
① 答えが合っていても図の正確さをチェックする
計算の結果だけを見て、丸をつけて終わらせないことが重要です。たまたま数字の組み合わせが合って正解してしまった場合、少しひねった応用問題が出た途端に解けなくなってしまいます。
以下のポイントができているかチェックしてみましょう。
面積図の縦軸、横軸に正しい数値が入っているか
「縦軸=1日あたりのパワー」「横軸=日数」というルールが逆になっていないかを確認しましょう。ここが曖昧だと、単位換算が必要な問題で大混乱を招きます。
全体の仕事量を最小公倍数で設定できているか
「全体の量を1」とおいて、分数の計算で苦労していないか確認しましょう。最小公倍数を使って「36」や「60」などの整数で解く習慣がついているかが、スピードアップの鍵です。
ニュートン算で「増える量」と「減らす量」を上下に書き分けているか
一本の線の中にすべての情報を詰め込もうとすると、どの部分が「はじめの量」で、どこからが「増えた量」なのかがわからなくなります。上下に並べて書き、その「差」に注目できているかを確認しましょう。
② 解説なしで図を書き直す練習を繰り返す
一度解けた問題でも、翌日や数日後には解き方を忘れてしまうことがあります。「わかったつもり」を防ぐために、何も見ずに一から図を書く練習を取り入れましょう。
おすすめは、問題文だけを見せて「私にこの問題を授業してみて」と保護者の方がお子さまにお願いすることです。
- 問題文から、最小公倍数を使って全体の仕事量を決める
- 面積図や線分図を自力で書く
- 図の中の数値を使って、式を立てる
このプロセスを、言葉で説明しながら再現できれば、そのパターンの問題は完全にマスターしたと言えます。もし途中で言葉に詰まるようなら、そこが理解の曖昧なポイントです。
③ つまずいたときは「比」や「割合」まで戻る
仕事算やニュートン算で何度練習しても苦手が克服できない場合、実はその原因が「比」や「割合」の基礎にあることが少なくありません。
「3:2の逆比が2:3になる理由」がピンときていない、「全体の8割」といった割合の概念を、具体的な数値(マルで囲んだ数字など)に置き換えられないといった状態では、いくら高度な面積図を練習しても力が定着しません。
もしお子さまが苦戦しているようなら、一度思い切って「比の基礎」まで戻り学習(リターン学習)をしてみてください。急がば回れで、結果的に仕事算の理解が早まるはずです。
トライの中学受験対策
中学受験の算数は、志望校によって頻出単元や難易度が大きく異なります。仕事算やニュートン算でつまずいている原因が、実はその手前の比や割合にあるというケースも少なくありません。
トライでは、お子さまの現状を細かく分析し、学習進捗や志望校の出題傾向をもとに、オーダーメイドの学習カリキュラムを作成します。毎回同じ講師が担当する専任制の授業で、苦手単元の克服から志望校別対策まで、完全マンツーマンで徹底的にサポートします。
学力試験以外のサポートも受験当日まで一貫して行いますので、保護者様も安心してお子さまをお任せいただけます。いつでもご相談ください。
まとめ|仕事算・ニュートン算は図の書き方で差がつく
仕事算やニュートン算は、一見すると複雑で難解な問題に見えますが、解法の型を身につければ確実に得点源にできる単元です。算数の成績を伸ばすためには、公式を暗記するのではなく、なぜその図を書くのかという仕組みを理解し、自力で再現できるようになることが合格への近道です。
中学受験の算数は、一人ひとりの理解度や志望校によって、重点を置くべき単元が大きく異なります。仕事算やニュートン算でつまずいている原因が、実はその手前の比や割合にあるというケースも少なくありません。
トライでは、お子さまの現状を細かく分析し、苦手単元の克服から志望校別対策まで、完全マンツーマンで徹底的にサポートします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

