数3(数学III)と言えば、理系受験生にとって大きな壁として立ちはだかる科目です。しかし、「理系ならば数Ⅲは必須」というこれまでの常識は、近年の入試形態の多様化によって変わりつつあります。
実際に、数Ⅲを学習する負担と入試で数Ⅲを課す志望校の数などを天秤にかけ、「数Ⅲなし」で受験に挑む受験生が増えています。これは決して後ろ向きな選択ではなく、限られた時間の中で志望校の合格を勝ち取るための戦略とも言えます。しかし、メリットだけではありません。理系大学の進学にあたり「数Ⅲなし」はリスクもあります。
本記事では、数Ⅲがいらない理系大学・学部の特徴や、その選択がもたらすメリット・デメリットについて解説します。
数Ⅲ(数3)がいらない理系の大学・学部の特徴
数Ⅲを受験科目に課さない理系の大学・学部には特徴があります。
農学・生物・バイオ系
農学や生物系、バイオ系の学部では、複雑な微分・積分の計算をする能力よりも、生物学や化学に関する知識の理解が受験の合否を分ける傾向にあります。たくさんの数式を使うよりも、実験を通して現象を観察したり、その仕組みを解明したりする力が求められているからです。そのため、大学入試では数Ⅲを必須とせず、理科を中心とする数学以外の科目の配点を高く設定している大学が多く見られます。
医療・看護系
医療・看護系の学部は、人の身体を扱う実践的な学びが中心です。医学部においても数Ⅲが不要なケースが一部存在します。たとえば、独自試験で数学を課さない国立大の後期試験や、東海大・帝京大といった一部の私立大が該当します。
ただし、医療・看護系の大学・学部は入学後、薬理学などで数学の知識が必要になる場面もあり、その際数Ⅲ範囲の学習が十分でないと一般に暗記量が増大する点には注意が必要です。
数Ⅱ・B・Cまでで足りるカリキュラムの大学・学部
入学後の専門科目において、数ⅠA・ⅡBの範囲(微分・積分の基礎、ベクトル、数列など)で十分に理解できるようカリキュラムが設計されている大学・学部も、入試で数Ⅲを必要としない傾向があります。その分、入試では化学や生物の思考力を問う問題に重点が置かれ、理系としての力が試されます。
実験・実習重視、応用スキル重視の大学・学部
生命科学系、農学系、海洋・環境系、応用生物や食品系などの学科では、実験や実習、フィールドワークに比重が置かれます。こうした学部では、入試科目の負担だけでなく、実習や現場活動に適性があるかどうかも重要な判断基準となります。
また、これらの分野では入学後に統計やデータ分析を扱う機会も多く、数学は「道具として活用する力」が求められる傾向があります。
さらに、一部の情報系学科でも、即戦力となるプログラミングやシステム開発などの実務スキルを重視し、入試では数Ⅲを課さずに入学後のカリキュラムで対応する学科も見受けられます。
入試段階ではこうしたスキルが十分に評価されない場合もあるため、学科の内容や学習負荷を事前に確認し、自分に合っているか見極めておくことが重要です。
数Ⅲを続けるべきか迷っているなら、今の学力と志望校に合わせた判断が重要です。
トライでは、科目選択や受験戦略を含めて、一人ひとりに合った学習プランをご提案しています。
数Ⅲを続けるべきか、それとも他科目に集中すべきか迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。
数Ⅲ(数3)を受験科目にしないメリットとデメリット
数Ⅲを受験科目から外す選択は、勉強の負担が減るメリットだけではなくデメリットもあります。ここでは数Ⅲを受験から外すメリット・デメリットについて解説します。
メリット
勉強の負担が減る
数Ⅲは数学の他の科目に比べて計算量が多く、概念の理解にもある程度の時間を要します。また、数Ⅲは得意・不得意が極端に分かれやすく、苦手な人にとっては高3の学習時間の大部分を奪われる結果にも陥りかねません。
数Ⅲを受験科目から外すことで、数Ⅲに使うはずだった勉強時間を英語などの入試で使う他の科目や共通テスト対策などに充てることができ、勉強の効率を良くするメリットがあります。
苦手科目に集中できる
総合的な得点力を底上げするために、数Ⅲを受験しない戦略も考えられます。もし数学よりも英語や国語、理科などに不安があるのなら、数Ⅲを受験しないことでそれらの苦手科目に力を注ぐことができます。
大学受験の合否は合計点で決まります。そのため、数Ⅲで苦戦する時間を切り、苦手科目の克服や配点の高い科目を伸ばして合格圏内に滑り込む戦略も考えられます。
数ⅡBまででOKの大学・学部なら不利にならない
最初から「数Ⅲを課さない」と明記している学部を志望する場合、数Ⅲを勉強していないことが合否に不利に働くことはありません。周囲が数Ⅲの勉強に追われている間、自分は入試に必要な科目の得点力を高めることができます。
また、早めに数Ⅲを受験しない判断をして志望校・志望学部を絞り込むことで、その大学の過去問対策や出題傾向の把握に時間を割くことができます。
デメリット
受験できる大学・学部が大きく減る
数Ⅲを受験しない最大の懸念点は、出願できる大学・学部が大幅に絞られることです。多くの国公立大学の理工系や早慶上理・GMARCHレベルの理工学部、医学部医学科はほとんどが数Ⅲを必須としています。
また、国公立大学の場合は二次試験で数Ⅲが必要になる大学・学部もあるため、志望校選びの幅が狭まることは覚悟しなければなりません。配点によっては影響が小さい場合もありますが、入試で課される全科目で平均的に得点してボーダーライン突破を目指す一般的な合格戦略は取れなくなると認識しましょう。
将来の進路変更が難しい
高校2年生から3年生の時期は、まだ将来の夢が流動的な受験生も多いと思います。数Ⅲを一度外してしまうと、後から「やっぱり工学系や物理学系に行きたい」と思っても受験できないという事態が起こり得ます。
また、学部・学科によっては数Ⅲの知識が前提となっているカリキュラムもあり、数Ⅲを外すことで進路変更の自由度も低下する点は、決断する前に十分に考慮すべきです。
推薦入試で不利になる場合がある
推薦入試(総合選抜、学校推薦型選抜など)を検討している場合、校内の選抜基準として「理系クラスなら数Ⅲの履修が必須」とされているケースがあります。たとえ大学入学共通テストや一般入試で数Ⅲを使わないとしても、履修していなければ推薦の対象外になる可能性があるのです。
自分の高校のカリキュラムや志望校の推薦基準を事前に確認しておかないと、思わぬところで受験のチャンスを逃すことになりかねません。
入学後に授業についていけないリスク
数Ⅲが大学で学ぶ内容の橋渡し役を担っている場合があります。とくに理工系や医学系では、数Ⅲの知識が既知のものとして講義が進むことも多く、数Ⅲを未履修のまま入学すると苦労するかもしれません。
もし受験で数Ⅲを使わなかったとしても、合格後に自習したり、大学1年次に補完したりといった努力が必要です。基礎を補っておかないと、専門科目の理解に支障をきたす恐れがあります。
また、統計やデータ分析などを学ぶ際にも、数学の基礎が理解の助けになることがあります。
ただし、分野によっては数Ⅲよりも優先して補うべき内容がある場合もあるため、入学後は学習内容に応じて必要な分野を補強していくことが重要です。
数Ⅲ(数3)なしで受験できる主な理系大学・学部
数Ⅲを使わずに受験可能な主な理系大学と一部の学部をご紹介します(※詳細は必ず最新の募集要項をご確認ください)。
国公立
関東エリア
・茨城大学 理学部理学科(数学・情報数理コース(前期・後期)と物理学コース(前期)を除く)
・埼玉大学 理学部(物理学科と基礎化学科の後期日程、数学科の前期・後期を除く)、工学部応用化学学科(前期)
・群馬大学 医学部保健学科(前期・後期ともに対象)、理工学部(後期)
東海・中部エリア
・静岡大学 理学部(生物科学科・地球化学科)前期・後期ともに対象 ※後期は物理学科と化学科、創造理学(グローバル人材育成)コースも含む、農学部(前期・後期ともに対象)
・山梨大学 医学部看護学科(前期・後期ともに対象)、生命環境学部(前期の生命工学科は除く)、工学部(後期)
・金沢大学 医薬保健学域(保健学類看護学専攻、理学療法学専攻、作業療法学専攻)(前期)、理系一括(前期)※学類配属後の進路により数Ⅲの知識が必要となる場合あり
関西エリア
・京都府立大学 農学食科学部(前期・後期ともに対象、後期は農学生命科学科のみ)、生命理工情報学部(理工情報学科の前期を除く)、環境科学部(前期・後期ともに対象、後期は森林科学科のみ)
中国エリア
・広島大学 医学部保健学科(文科系)(前期)、歯学部口腔保健科学科口腔保健学専攻(前期)、情報科学部情報科学科A型(前期)
九州エリア
・熊本大学 医学部保健学科看護学専攻(前期)、工学部の後期日程、理学部の後期日程
・宮崎大学 医学部看護学科(前期)、農学部(前期・後期ともに対象)、地域資源創成学部(前期・後期ともに対象)、全学部(後期)
・佐賀大学 農学部生物資源科学科(前期・後期ともに対象)、医学部看護学科(前期・後期ともに対象)、コスメティックサイエンス学環(前期・後期ともに対象)、理工学部(後期)
私立
※本章では、個別試験において数Ⅲを課さない大学・学部を中心に紹介しています。
関東エリア
・早稲田大学 基幹理工学部(学系4のみが対象)、創造理工学部(得意科目選考:学科が指定する科目で特に優れた能力を示したと判定された受験者を合計点が合格最低点に達していなくても合格とする選考方法)
・法政大学 生命科学部(生命機能学科・応用植物科学科 ※A日程)(環境応用化学科 ※T日程及び英語外部試験利用方式)、デザイン工学部システムデザイン学科
・北里大学 未来工学部、理学部、獣医学部、海洋生命科学部、薬学部、看護学部、医療衛生学部、健康科学部
・東海大学 一部の理系学科の一般選抜を除くすべての入試
・帝京大学 医学部、薬学部、理工学部、医療技術学部、福岡医療技術学部
東海・中部エリア
・愛知学院大学 健康科学部、薬学部、歯学部
関西エリア
・立命館大学 食マネジメント学部、薬学部
・近畿大学 理工学部理学科(化学コース)・生命科学科、建築学部、薬学部、農学部、生物理工学部、工学部、産業理工学部(以上選択科目 ※一般入試・前期B日程では選択科目ではないケースを含む)、医学部
九州エリア
・久留米大学 医学部看護学科・医療検査学科
数Ⅲ(数3)を取るべきか迷ったときの判断基準
数Ⅲを勉強しない決断を下す前に、以下の基準で自分の現状を客観的に見つめ直してみましょう。
数Ⅲを受験科目から外した方が良いケース
志望校の入試で数Ⅲが不要であり、かつ現在の数学の成績が著しく低迷している場合は、早期に撤退を決断しましょう。
数Ⅲで使う勉強時間を英語などの主要科目や苦手科目対策に充て、確実に得点を稼ぐ方が志望校合格への最短距離になるからです。数Ⅲの負担が自分のキャパシティを超えていると感じ、他科目の対策が疎かになっていると感じるならば、思い切って数Ⅲを受験科目から外しましょう。
数Ⅲを続けた方が良いケース
数学が得意で得点源にできるなら、むしろ数Ⅲは武器になります。また、将来的に工学系や物理学系など、数学をツールとする分野に進みたいのであれば、数Ⅲの勉強は継続すべきです。
大学院進学まで見据えている場合、数Ⅲの概念が抜けていると研究段階で詰まる可能性が高いため、踏ん張って勉強を続ける価値があります。
途中で撤退するならいつがベストか
数Ⅲを受験しない判断のデッドラインは高3の夏前までです。高2終了時に志望校を絞り込むのが理想ですが、遅くとも高3の夏休みに入る前には決断しましょう。
高3の秋以降に「やっぱり数Ⅲはやめる」と決めても、すでに他の科目に充てるべき勉強時間を浪費してしまっています。逆に、秋以降に「やっぱり数Ⅲが必要な大学を受けたい」となっても間に合わないため、慎重かつ早めの決断が求められます。
数Ⅲ(数3)不要チェックリスト
以下の項目にいくつ当てはまるか確認してみてください。
- 志望校の募集要項で「数ⅡBCまでで受験可」と明記されている
- そもそも数学が苦手である
- 数Ⅲ以外の科目の底上げを優先しないと合格点に届かなそう
- 将来進みたい分野が、物理など高度な数学を必要とする分野ではない
- 大学入学後に未履修範囲を自習する覚悟がある
まとめ
理系の大学受験において、数Ⅲを受けないという選択は決して恥ずべきことではありません。むしろ、数Ⅲを勉強しないことで生まれる貴重な時間を他の科目に充てることができ、自分の能力と志望校のレベルを冷静に分析した上での賢い選択になり得ます。
ただし、この記事で解説したように数Ⅲを受けないデメリットも存在します。記事で解説した判断基準や「数Ⅲ不要チェックリスト」も参考にして決めましょう。
もし、自分の進路や数Ⅲの取捨選択に少しでも迷いがあるなら、ぜひ一度トライにご相談ください。あなたの志望校に合わせた最適な戦略を一緒に組み立てましょう。
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