中学受験算数の特殊算の中でも、多くの受験生が苦手意識を持ちやすいのが「時計算」です。「長針と短針が重なるのは何分後?」「2つの針が一直線になる時間は?」といった問題に対し、公式を丸暗記して挑んでいませんか。時計算の本質は、実は算数の基本である「旅人算」と同じです。
この記事では、時計算の基本となる1分間に進む角度の考え方から、頻出パターンの例題解説、そしてミスを防ぐための方法まで詳しく解説します。
時計算とは
時計算とは、時計の長針と短針が作る角度や位置関係を求める問題のことです。中学受験の算数では頻出の文章題の一つですが、苦手とする受験生も少なくありません。
攻略の鍵は、時計の針を「動くもの」として捉えることです。長針と短針はそれぞれ一定の速さで動くため、その考え方は「旅人算」と全く同じです。速い長針が、先に進んでいる遅い短針を追いかける「追いつき」の問題として捉えると、ぐっと理解しやすくなります。
主に選抜試験などで出題される内容は、次の3種類に分けられます。
- 長針と短針が重なる
- 長針と短針が一直線になる(180度)
- 長針と短針が直角になる(90度)
基本は最初に何度離れているかを確認し、1分ごとに差がどれだけ変わるかを整理して立式することが大切です。
時計算の公式とポイント|長針と短針の速さの関係
時計算を解くためには、まず長針と短針の速さを「角度」で理解する必要があります。算数の旅人算でいうところの「分速」を、時計算では「1分間に進む角度」に置き換えて考えます。
長針は1分で6度進む
長針は1時間(60分)で時計を1周します。時計1周は360度ですので、長針が1分間に進む角度は以下のようになります。
360÷60=6
したがって、長針の速さは分速6度です。
短針は1分で0.5度進む
短針は1時間(60分)で、時計の数字1つ分(12から1までなど)を進みます。時計の盤面は12個の数字で区切られているため、数字1つ分(12と1の間など)の角度は360÷12=30度です。

短針が1分間に進む角度は以下のようになります。
30÷60=0.5
したがって、短針の速さは分速0.5度です。
ここで注意したいのは、計算の過程で「30 ÷ 50」としてしまうようなミスです。短針は「60分」かけて30度進むため、必ず60で割ることを徹底しましょう。
長針と短針の速さの差は5.5度
2つの針が動くとき、1分間に縮まる(または広がる)角度の差は以下の通りです。
6−0.5=5.5
つまり、2つの針の角度の差は、1分ごとに5.5度ずつ変化します。時計算では、この「1分で5.5度」という数字がすべての計算の基本になります。旅人算の「速さの差」に相当する重要な数値です。
時計算でつまずきやすいポイント
時計算に苦手意識を持ってしまう原因には、いくつかの共通点があります。これらを意識して改善するだけでも、正答率は大きく変わります。
時計を止まった図として考えてしまう
時計算が苦手になる理由の1つは、時計を静止した図として考えてしまうことです。例えば「1時30分」のとき、短針を「1」のところで止めて考えていませんか。実際には長針が「6」まで移動する間に、短針も「1」から「2」の方向へ 15度(0.5×30)動いています。「長針が動くときは短針も連動して動いている」という意識を常に持つことが大切です。
帯分数の答えに慣れていない
時計算の答えは、「5と5/11分」「21と9/11分」のように、分母が11の帯分数になることが非常に多いのが特徴です。一般的な文章題では整数や小数の答えが多いため、こうした複雑な分数が出てきたときに「計算を間違えたのではないか」と不安になり、混乱してしまう受験生が多く見られます。
しかし、時計算において「分母が11の分数」は正しい計算の結果であることがほとんどです。この形式に慣れ、自信を持って解答を書けるようになることが合格への一歩です。
公式だけ暗記してしまう
集団塾などでは「30÷5.5」のような式だけを公式として教わることがあります。
しかし、なぜその式になるのかという仕組みを理解していないと、少しひねった問題が出たときに対応できなくなります。大切なのは公式の暗記ではなく「今の角度の差がどれだけあり、それが毎分5.5度ずつどう変化するか」を考える力です。丸暗記ではなく、理由を言葉で説明できる状態を目指しましょう。
【例題で解説】時計算の頻出3パターン
それでは、実際の例題を使って解き方を確認していきましょう。すべてのパターンにおいて「最初の角度」を正しく把握することがスタート地点です。
長針と短針が重なる時刻を求める
時計算で最も基本となる、長針が短針に追いつく時刻を求める問題です。
1時と2時の間で、長針と短針が重なる時刻を求めなさい。
まず、基準となる1時00分の位置関係を確認します。短針は「1」、長針は「12」を指しています。時計の数字1つ分は30度ですので、スタート時点で2つの針は30度離れています。
長針が短針を追いかけるので、この30度の差をなくせば重なることになります。

式:30÷5.5
計算をしやすくするため、
30÷5.5=30×2/11=60/11=5と5/11
答え:1時5と5/11分
長針と短針が一直線(180度)になる時刻を求める
次に、2つの針が反対方向を向いて一直線になる時刻を考えます。
1時と2時の間で、長針と短針が反対方向に一直線になる時刻を求めなさい。

一直線とは、2つの針の角度の差が180度になる状態です。1時00分の時点では、2つの針は30度離れています。長針は短針より速いため、まず30度の差を縮めて一度追い越し、さらに進んで180度の差をつくる必要があります。
つまり「最初の30度の差をなくす」+「180度の差をつくる」ため、合計で210度の変化が必要です。
式:210÷5.5
計算:210×2/11=420/11=38と2/11
答え:1時38と2/11分
長針と短針が直角(90度)になる時刻を求める
直角になるパターンは、1時間に2回発生することが多いので注意が必要です。
1時と2時の間で、はじめて90度になる時刻を求めなさい。

1時00分時点では針の差は30度しかなく、長針は短針より速いため差はそこから縮まる一方です。よって追い越す前に90度になることはなく、長針が短針を追い越した後、さらに90度引き離した時点が「はじめて」直角になります。
必要な角度の変化は、30度(追いつく分)+90度(引き離す分)=120度となります。
式:120÷5.5
計算:120×2/11=240/11=21と9/11
答え:1時21と9/11分
【応用編】特定の角度になる時刻を求める
頻出の3パターン(重なる・一直線・直角)をマスターしたら、次はさらに踏み込んだ応用問題に挑戦しましょう。「2つの針の角度が60度になる時刻」や「ある地点を軸に対称になる時刻」など、一見難しく見える問題も、本質はすべて「1分間に5.5度ずつ差が変わる」という基本に集約されます。
1時と2時の間で、長針と短針のつくる角がはじめて60度になる時刻を求めなさい。

まず、1時00分の状態を思い出しましょう。短針は「1」の位置(30度)、長針は「12」の位置(0度)にあり、その差は30度です。
1.追い越す前を検討する
追い越す前に60度の差をつくるには、長針が短針より60度遅れている必要があります。しかしスタート時点での差はすでに30度しかなく、長針の方が速いため差は縮まる一方です。したがって、追い越す前に60度離れることはあり得ません。
2.追い越した後を検討する
長針が短針を一度追い越し(0度になり)、そこからさらに60度引き離した状態を考えます。必要な角度の変化は、「最初の30度の差をなくす」+「追い越してから60度の差をつくる」= 合計90度となります。
式:90÷5.5
計算:90×2/11=180/11=16と4/11
答え:1時16と4/11分
このように、「追い越す前」にその角度が成立するかどうかをまず確認する習慣をつけることが、ケアレスミスを防ぐポイントです。
時計算を素早く正確に解く4つのコツ
中学受験の算数では、限られた時間内で正確に計算する力が求められます。時計算を攻略するための4つのコツを紹介します。
1.帯分数で答えることに慣れる
中学受験の算数、特に時計算では小数ではなく分数で答えることが大原則です。「5と5/11分」といった答えの形に違和感を持たなくなるまで、繰り返し問題を解きましょう。
また、帯分数から仮分数への変換、その逆の計算もスムーズに行えるようにしておくことも良い方法です。この独特の表現に慣れておくことで、本番でも自信を持って解答できるようになります。
2.「2/11」を使って計算を簡単にする
時計算では必ず「÷ 5.5」という計算が出てきます。これを小数のまま計算するとミスが起きやすいため、分数に直して計算しましょう。5.5=11/2なので、その逆数である×2/11を使うのが鉄則です。
計算手順
- 追いかけるべき(または広げるべき)角度を2倍する
- その数値を11で割る(分母を11にする)
【例】
120÷5.5
=120×2/11
=240÷11
この2ステップを意識するだけで、計算スピードが上がります。
3.図を書いておおよその時間を予想する
計算だけで解こうとすると、とんでもない数値を答えにしてしまうミスが起きがちです。式を立てる前に、余白にサッと時計の図を書いてみましょう。
重なる時刻なら「1時5分よりは少し後、1時6分くらい」、直角なら「1時20分から25分の間くらい」といったように「だいたい何分くらいになりそうか」という検討をつけてから計算することで、算出された答えが常識的な範囲内にあるか瞬時にチェックできます。
4.11の段の割り算をマスターする
時計算の最後は必ず「(数値)÷11」になります。例えば、240÷11や420÷11などの計算を素早く行う必要があります。
11の倍数(11、 22、 33、 44、 55……)を頭に入れておき、余りをすぐに出せるようにしておくと、テスト時間を有効に使えます。
保護者ができるサポート
時計算は紙の上だけの問題にすると、非常に抽象的で難しく感じられます。お子さまの理解を深めるために、ご家庭でできるサポートもあります。
実物の時計を動かしてみる
最近はデジタル時計が増えていますが、時計算の学習期には、ぜひアナログ時計を横に置いて勉強させてあげてください。
針を実際に手で回せる学習用の時計(算数セットなどに入っているもの)があれば最適です。「長針を30分進めると、短針もこれだけ動くんだね」と視覚的に確認することで、記憶に定着しやすくなります。
日常生活の中でクイズを出す
「今3時だけど、長針と短針が重なるのは何分くらいだと思う?」といった簡単な問いかけも効果的です。正確な計算はできなくても、「3時15分よりは少し先だね」という感覚を養うことが、見積もり能力の向上につながります。
家庭でのこうした小さな積み重ねが、学習習慣をつけるきっかけとなり、算数への苦手意識を払拭することにも繋がります。
トライの中学受験対策
トライでは、完全マンツーマンの指導により、一人ひとりの理解度に合わせた中学受験対策を行っています。
時計算のような多くの受験生が苦手とする単元も、ただ公式を教えるのではなく、「なぜ1分間に5.5度なのか」という根本的な仕組みから丁寧に解説します。集団塾のスピードでは理解が追いつかなかったお子さまでも、自分のペースで納得しながら進めることが可能です。
また、志望校ごとの出題傾向に合わせ、以下のような応用問題への対策も万全です。
- 狂った時計(正しくない時計)の問題
- 比を利用して解く高度な時計算
- 3つの針(秒針を含む)が登場する複雑な問題
お子さまの苦手分野を「得意」に変え、合格圏内へと引き上げるサポートをいたします。
まとめ|時計算は角度の差と速さの関係で考える
時計算は、長針と短針が1分ごとにどれだけ動くかを整理し、「角度の差」がどう変化するかを考えることが基本です。
とくに「1分で5.5度ずつ差が変わる」という仕組みさえ押さえれば、重なる・一直線・直角といった頻出パターンもすべて同じ発想で解くことができます。公式だけを丸暗記するのではなく、旅人算の考え方を応用して、一歩ずつ理解を深めていきましょう。
もし自力で整理しにくい、あるいは計算ミスが減らないという場合は、早い段階で個別指導を活用することも1つの方法です。お子さまのつまずきに合わせた指導を受けることが、中学受験本番での得点につなげる近道となります。中学受験の算数でお困りの際は、ぜひトライへご相談ください。

