SAPIXにお子さまが通っており、一生懸命に勉強をしているのに「偏差値が上がらない」とお悩みの保護者様は多いことでしょう。偏差値は点数とは異なり、上がりにくさもあるので、悩んでしまうのは当然かもしれません。また、SAPIXには定例試験で測定されるS偏差値があります。
この記事では、SAPIXで偏差値が上がらないのはなぜなのか、そして偏差値を上げるために必要な対策を解説します。ぜひお子さまの偏差値アップの参考にしてください。
SAPIXにおける偏差値の特徴と基準
SAPIXの偏差値(S偏差値)は「上がりにくく・下がりやすい」特徴があるため、努力していても結果が反映されにくいことが珍しくありません。特に偏差値50前後で伸び悩むケースや、「急に偏差値がおかしくなった」と感じるケースも多く見られます。この 、数字が動かないように見えるおかしな現象は、SAPIX特有の母集団の強さが影響している場合もあります。
中学受験における偏差値とは?
中学受験では、偏差値は「志望校のレベルと、自分のレベルを比較するための数値」あるいは「中学校同士の学力レベルを比較するための数値」として用いられています。転じて、偏差値からは「自分と、周囲の受験生との学力レベルの差」を測ることのできる数値でもあるのです。
1つのテストにおいて、受験生全員の平均点が偏差値50となります。四谷大塚のY偏差値であれば、偏差値50以上が取れていれば、平均点以上が取れているということです。偏差値は単なる得点ではなく、母集団の中での位置を示す指標であることを押さえておきましょう。
SAPIXにおいては、偏差値は四谷大塚のY偏差値よりも低めに出る傾向があり、SAPIXのS偏差値の場合は「60前後」を1つの目安として考えるとよいでしょう。S偏差値56を超えるとαクラスへの在籍が見えてくると言われており、最上位クラスのα1は、おおむね偏差値65以上のお子さまが在籍しています。
このS偏差値とY偏差値の基準差については、次の項目で詳しく解説します。特に偏差値が伸び悩むように見える時期ほど、この違いを理解することが重要です。
SAPIXで偏差値を確認する方法
SAPIXでは、毎月行われているマンスリーテスト、年に3回行われる組分けテスト、さらにサピックスオープンと呼ばれる模試などで、偏差値が出されます。特にマンスリーテストはほぼ毎月のように行われているため、継続して注視していればお子さまの偏差値の推移がわかりやすいでしょう。テストの結果は都度、渡されるので、偏差値の欄を確認してみましょう。なおSAPIXから明確に発表はないものの、目安としては、マンスリーテストにしても組分けテストにしても約70%の得点率で偏差値60ほどになることが多いようです。
さらに小学6年生になると、外部模試を受験する機会が多くなります。四谷の合不合などの他模試は受験生の学力幅が広いため、偏差値は高めに出ます。
サピックス偏差値(S偏差値)50はどれぐらい?四谷大塚(Y偏差値)との違い
SAPIXの偏差値(S偏差値)と四谷大塚(Y偏差値)は、どのように比較して見たら良いのでしょうか。
SAPIXの偏差値(S偏差値)は、四谷大塚(Y偏差値)よりも8〜10ほど低く出ると言われています。そのため、SAPIXで偏差値50の場合でも、四谷大塚の模試では偏差値60前後に相当するケースが多く、必ずしも「成績が低い」という意味ではありません。
特にSAPIXのマンスリー・組分けテストは受験層の学力レベルが非常に高いため、平均点が上がりづらく、努力が数値に反映されにくいのが特徴です。
S偏差値とY偏差値の目安比較表は下記の通りです。あくまで「一般的な目安」であり、テスト内容や回数によって差は前後するので、参考程度にしてください。
| SAPIX偏差値(S偏差値) | 四谷大塚偏差値 (Y偏差値)の目安 |
ポイント |
|---|---|---|
| 40 | 50~54 | SAPIXでは母集団が強いため40でも平均前後の力があるケースが多い |
| 50 | 58~62 | 実力は平均以上で、志望校の幅も広がる中〜上位 |
| 60 | 66~70 | 上位〜難関校を十分狙える学力レベル |
| 65 | 71~75 | αクラス水準。最難関校を視野に入れられる |
「偏差値50前後で止まってしまう」「他模試とのズレが大きい」と感じるときは、まずS偏差値とY偏差値の基準差を理解し、正しい現在地を把握することが重要です。
SAPIXで偏差値が上がらない原因5つ
S偏差値とY偏差値の違いを理解すると、次に気になるのは「なぜ偏差値が思うように上がらないのか」という点です。SAPIXでは独特のカリキュラムやテスト構造があるため、つまずきやすいポイントがあります。
この章では、偏差値が伸び悩みやすい主な原因を5つに整理して解説します。
SAPIX特有のカリキュラムについていけていない
SAPIXでは、授業の度に、その回の内容が書かれたテキストが配られます。したがって、次回の授業を予習することはできません。授業で初めて見るタイプの問題に触れ、新たに学んだことを復習で吸収することが求められます。次の授業では、次の回の内容に進んでしまうため、保護者様の指導のもと、家庭学習での復習が必要です。
もし授業のスピードが速すぎてついていけない、家庭学習で保護者様が十分にお子さまの復習をチェックしてあげられない、といった事情がある場合は、プロ講師の細やかな指導を一人ひとり受けられる個別指導を併用するほうが偏差値を伸ばせる可能性があるでしょう。
大量の宿題をやり切れない
SAPIXでは、全てのクラスで共通のテキストを使いますが、授業の中でどのページまで進むか、宿題が何ページ出るかは、在籍するクラスによって大きく変わります。とりわけ偏差値の高いお子さまが在籍するαクラスでは、宿題の量が非常に多いため、次の授業までの間に宿題を終わらせることができないお子さまも実際にいるでしょう。
SAPIXにおいては、宿題の多さはクラスの偏差値の高さと比例します。宿題がやり切れていない場合、成績の伸びが鈍く、偏差値も上がりにくくなるはずです。
応用問題の知識が定着していない
SAPIXにおいて、クラスによって授業の進度や宿題の量が違うことは前述のとおりです。アルファベットクラスの場合、αクラスに比べて基礎を重点的に固める授業を行うため、テキストの応用問題をやらないまま授業が終わることもあります。復習に該当する宿題の量も少ないため、必然的に応用問題に触れるチャンスが減ってしまうでしょう。ところがマンスリーテストでも、組分けテストでも、応用問題が容赦なく出題されるため、取るべき問題をしっかり解くことが求められます。
学習時間と効率のバランスが取れていない
「家庭学習は長時間やっているのに、偏差値が上がらない」とお悩みの場合は、学習の効率が落ちてしまっているのかもしれません。
特に学年が上がると、睡眠時間を削って長時間の学習に取り組もうというお子さまは必ずいるものです。しかし睡眠不足の状態で学習に向き合っても、授業の理解度や家庭学習の定着度が落ちてしまうため「頑張っているのに成果が出ない」といった結果になりがちです。
特にSAPIXでは扱う内容や問題の難易度が高いため、学習の質が落ちると偏差値に直結しやすい点にも注意が必要です。
周りの子の学力が高い
偏差値は、平均点を偏差値50として算出される数値です。したがって、お子さまの点数が上がっても、周りの子どもたちの点数も同じように上がっていれば、偏差値は上がらないと言えます。SAPIXの場合は、首都圏の難関校を目指す子どもたちが集まっているため、平均的なレベルが高く、偏差値を上げにくいのが特徴です。
またさらに、SAPIX側もそれを理解した上で難易度の高いテストを出題しているため、なお点数が取りにくく、偏差値が上がらない原因となります。
SAPIXで偏差値を上げる方法
偏差値を確実に上げるには、SAPIXの教材特性とテスト構造に合わせた対策が必要です。ここでは、短期間で成果につながりやすい実践的な方法を紹介します。
デイリーサピックスを繰り返し解く
SAPIXで偏差値を上げるなら、第一に、毎回の授業で配布されるオリジナル教材「デイリーサピックス」を繰り返し解くことです。授業で使われる「デイリーサピックス」は、基礎から応用まで繰り返し解くことができるよう工夫された内容となっています。1冊を網羅すれば基礎力から応用力までをバランスよくつけていくことが可能です。
SAPIXの教材は他にもあり、算数の場合は家庭学習に使える「デイリーサポート」が配布されているので、こちらも活用すると良いでしょう。
ミスの原因や苦手問題を分析する
偏差値が上がらないということは、テストで何かしらミスをし、点数を落としているということです。テストの結果をよく見直し、ミスを分析することで、お子さまのミスの傾向をつかみましょう。
またテスト結果を分析すると、どのような問題が苦手なのか、どこまで理解できていて、どこが理解できていないかも洗い出すことができます。理解できていない範囲については、デイリーサピックスを見返すと効果的です。
デイリーチェックで着実に点数を取れるようにする
SAPIXで偏差値を上げるには、毎回、授業の冒頭で実施される「デイリーチェック」という小テストで着実に点数を取ることが効果的です。SAPIXでは授業ごとにテキストがわかれているため、その日の授業はその日配られるテキストを用いて行い、復習の時間はありません。
しかし授業の最初15〜20分を使い、前回の授業の復習テストであるデイリーチェックを行います。このデイリーチェックは、前回内容がどれだけ身についているかを測る理解度のバロメーターとなり、ここで点数が取れるかどうかが後の成績にも直結します。ここで点数が取れるよう、家庭でも復習をしていくことが肝心です。
なお、デイリーチェックの問題はクラスによって違うことがあります。偏差値レベルによって適した問題が出題されているため、まずはお子さまの在籍するクラスのデイリーチェックで点数を取っていくことが大切です。
宿題として出された範囲以上の学習をする
宿題が少ないクラスに在籍している場合、宿題の範囲を超えた学習を心掛けたほうが、偏差値は上がりやすいでしょう。
SAPIXでは、在籍クラスごとに宿題の範囲が異なります。上位クラスは宿題が多く、このなかには応用問題もたくさん含まれていますが、下位クラスでは宿題が少ないのが特徴です。すると下位クラスであるほど、応用問題に触れる機会は少なくなってしまうでしょう。ところが、偏差値を上げるためには、クラスを問わず同じ問題が出題される組分けテストなどで点数を取る必要があります。
したがってアルファベットクラスなどに在籍している場合でも、宿題の範囲を超えて、αクラスで扱っているような応用問題にチャレンジしておくと効果的です。
勉強のスケジュールを調整する
得意科目で点数が取れても、苦手科目で点数を落としている場合や、たくさん勉強をしているのに偏差値が上がらない場合、勉強のスケジュールを調整することをおすすめします。
SAPIXで偏差値を上げるには、得意科目はもちろん、苦手科目でも高い偏差値を取れるようにすることが大切です。一日の勉強の中で、苦手科目に時間を多く割き点数を上げるとともに、苦手意識をなくしていく工夫も必要です。また、どの科目もたくさん勉強をしているのに偏差値が上がらないという場合は、学習効率が落ちている可能性があります。
家庭学習をしていても、他の兄弟がいたり、保護者様に話しかけられたりして集中できない、夜遅くまで勉強をしすぎている、ということは珍しくありません。リビング学習であっても、一人で集中できる時間帯を確保し、時間を区切って集中力を重視した学習を行うと良いでしょう。
モチベーションを高める声掛けをする
保護者様からお子さまへの声掛けは、とても大切です。偏差値が上がらないと、どうしても「もっと頑張れ」「このままでは偏差値が足りない」といったような声掛けをしてしまうケースがありますが、これらの声掛けはお子さまの緊張を高めるだけで、偏差値が上がる効果はありません。
むしろ、「よく頑張っているね」「前よりできるようになったね」といった、お子さまの努力を認める声掛けで、モチベーションを維持することができます。
SAPIXで偏差値を上げたいときの注意
間違った学習法を続けると、努力しても成績が伸びにくくなる場合があります。偏差値アップを妨げやすい注意点を確認し、対策に無駄がない状態を作りましょう。
「量だけ」にこだわらない
SAPIXのカリキュラムでは、上位クラスになるほど、たくさんの問題を早く解くことを求められます。しかし偏差値を上げたいなら、「どの問題もとにかくたくさん解く」「長時間、勉強に費やす」という考え方は不適切です。
お子さまの学力と理解度をしっかりと把握した上で、すでに理解できている問題はやらない、理解できていない問題や一歩先の応用問題だけ解く、という、家庭学習範囲の選択が必要になります。小テストやマンスリーテストの結果から、苦手としている分野を洗い出し家庭学習に活かすには、サポートが不可欠でしょう。
睡眠時間を削らない
SAPIXでは宿題の量の多さから、寝る時間を惜しんで勉強をしているお子さまもよく見られます。勉強時間が多いことは、確かにたくさんの問題を経験することにつながるでしょう。
一方で、睡眠不足での学習は、お子さまの最大のパフォーマンスを引き出すことができなくなってしまいます。寝不足の頭で授業を受けても理解しきれず、理解できていないので宿題に時間がかかり、寝る時間が遅くなる悪循環におちいるのです。
αクラスに在籍する子どもの多くは、十分な睡眠時間を取っているという声もあります。できるだけ早く就寝し、朝早い時間などを上手に使うことが、偏差値を上げることにもつながると言えます。
まとめ
SAPIXで偏差値が上がらないときは、授業で使用したテキストをしっかり見直して復習し、宿題を着実に終わらせて、お子さまの苦手分野に取り組むことが大切です。SAPIXでは毎週のように復習テストが行われているほか、マンスリーテストでも偏差値が算出されています。これらの結果から苦手分野を見つけ出し、集中的に解けるよう指導することで、偏差値が上がる可能性は高まるでしょう。ただ、SAPIXでは小学生とはいえレベルの高い学習が実施されており、保護者様だけでこの分析をおこなうことは時間的な制約も大きいと思います。
保護者様から見て、どこが苦手なのかわかりづらかったり、保護者様が仕事などで忙しく苦手の洗い出しができなかったりする場合、個別指導の利用がおすすめです。トライでは、プロの講師が1対1の指導でお子さまの苦手を見つけ、集中的に苦手を克服することで、着実な偏差値アップに取り組むことができます。ご家庭での学習サポートには、家庭教師やオンライン指導も効果的です。ぜひご検討ください。

