2025/04/30

総合型選抜の活動報告書作成ガイド ~初めてでも安心!書き方のポイントと具体例~

近年、多くの大学で導入されている総合型選抜(旧AO入試)は、学力試験だけでなく、受験生のこれまでの経験や取り組みを重視する入試方式です。その中で重要な書類の一つが活動報告書です。活動報告書は、これまでの経験や成果を大学に伝える重要な役割を果たし、合否を左右する要素となることもあります。しかし、「何を書けば良いのかわからない」「自己PRと何が違うのか」「評価される書き方がわからない」といった悩みを抱える受験生は少なくありません。

活動報告書は、単なる実績の羅列ではなく、自分の経験がどのように成長や学びにつながったのかを明確に伝えることが求められます。しかし、具体的な書き方や構成のポイントを理解していないと、伝えたい内容がぼやけたり、アピール不足になったりすることもあります。

本記事では、初めて活動報告書を書く受験生でも安心して取り組めるように、基本的な書き方のポイントや具体例を交えながら解説します。読み進めることで、どのように内容を整理し、説得力のある活動報告書を作成すれば良いのかがわかるようになります。これから総合型選抜を受験する皆さんが、自信を持って活動報告書を作成できるよう、ぜひ参考にしてください。

総合型選抜における活動報告書とは

総合型選抜で提出する活動報告書とはどういったものなのでしょうか。ここではその役割や志望理由書との違いについて解説します。

活動報告書の定義と役割

活動報告書とは、受験生がこれまでに取り組んできた活動や経験を整理し、大学に伝えるための書類です。総合型選抜では、学力試験の成績だけでなく、受験生の個性や経験、努力の過程が重視されます。そのため、活動報告書は単なる実績の列挙ではなく、どのような経験を通じて何を学び、どのように成長したのかを伝えることが重要になります。

例を挙げると、部活動やボランティア、コンテストでの受賞歴、研究活動、留学経験など、学外での取り組みも含めて記載できます。この書類を通じて、受験生の意欲や強み、将来の目標が大学側に伝わることで、より適切な評価を受けることができるのです。

志望理由書との違い

活動報告書とよく混同されるのが志望理由書ですが、この二つには明確な違いがあります。志望理由書は、「なぜその大学・学部を志望するのか」を中心に書き、将来の目標や学びたい分野について言及するのが一般的です。一方、活動報告書では、「これまでにどのような活動をしてきたか」に焦点を当てます。つまり、志望理由書が未来志向であるのに対し、活動報告書は過去の実績や経験を具体的に記すものです。

ただし、両者には関連性があり、活動報告書に書かれた経験が志望理由につながることもあります。そのため、二つの書類の内容が一貫性を持つように意識することが重要です。

大学側が活動報告書で評価するポイント

大学側が活動報告書を通じて評価するポイントは、単なる実績の有無ではなく、取り組んだ姿勢やそこから得た学び、そして将来への展望です。同じボランティア活動の経験があっても、「どのような課題を発見し、どのように行動したか」「どんな工夫をし、どのような成果を得たか」を具体的に記載することで、評価が高まる可能性があります。また、リーダーシップや協調性、問題解決能力といった非認知能力の成長も重視されます。

さらに、活動を通じて培った経験が志望する学部・学科での学びとどのように結びつくのかを示せると、より説得力のある活動報告書になります。

活動報告書に記載すべき内容

活動報告書には、学内外でのさまざまな経験を記載することができます。以下に、主な内容の例を紹介します。

学内活動

学内での活動について、具体的にはどのようなものを記載したら良いのか、以下で紹介します。

部活動やクラブ活動

部活動やクラブ活動での経験は、継続力や協調性、リーダーシップを示す重要な要素です。大会での成績だけでなく、練習の工夫やチームでの役割、困難を乗り越えた経験などを具体的に記載すると、より説得力が増します。

生徒会や委員会での役割

生徒会や委員会活動では、リーダーシップや問題解決能力が問われます。例えば、生徒会長としての取り組み、委員会での新しい企画立案など、自身の貢献を明確に伝えることが重要です。

学内イベントへの参加

文化祭や体育祭の運営に関わった経験は、チームワークや創意工夫の力を示せるポイントです。企画立案や実行時の課題、成功に導いた工夫などを具体的に書くと良いでしょう。

学外活動

学外での活動について、具体的にはどのようなものを記載したら良いのか、以下でご紹介します。

ボランティア活動

地域清掃や福祉施設でのボランティア活動などを通じて学んだことを記載できます。活動の目的や感じたこと、成長した点を具体的に述べることで、積極性や社会貢献意識をアピールできます。

インターンシップやアルバイト経験

社会経験としてのインターンやアルバイトも重要です。仕事を通じて学んだこと、工夫した点、どのように成長したかを中心に記載すると、責任感や適応力を示すことができます。

地域活動や社会貢献活動

地域イベントの企画や運営、町おこし活動など、社会との関わりを持った経験は、積極性や行動力を示すのに有効です。関わった経緯や工夫した点を伝えると良いでしょう。

その他の経験

ここまで、学内・学外の活動について紹介しましたが、それ以外にも活動報告書に記載できる項目があります。どのようなものが記載できるのか、ぜひ以下で確認してみてください。

資格取得

資格取得の過程での努力や、取得した資格がどのように今後の目標につながるのかを記載します。特に志望分野と関連する資格は、意欲や専門性を示す重要な要素となります。

コンテストやコンクールでの受賞歴

作文コンクールや科学コンテスト、スポーツ大会などの受賞歴は、努力の成果を示す証拠になります。ただし、単に受賞したことだけしかアピールしていないと、例えば「数学オリンピックの○○代表に選ばれた」といった華々しい世界レベルの成果だとしても、そこから得た経験の方が重要視されると心得ておいた方が無難です。

もちろん、例外も否定できませんが(大学の運動部を強化するために、人格面や学力面等を度外視して合格させる、など)、現状の総合型選抜の一般的な趣旨からは外れています。世界レベルの実績があろうとも、大学での学問との関連性を明確にしていくことを意識しましょう。

個人的なプロジェクトや研究活動

個人的に取り組んだ研究や創作活動も、興味関心の深さを伝える材料になります。自主的に進めた研究や、プログラミング、動画制作などのプロジェクトは、主体性や創造力をアピールするのに役立ちます。

研究プロジェクトに関する資料を活動報告書に添付できるかどうかについては、各種メディアを幅広く許容している大学もあれば、紙媒体以外は不可としている大学もあるので、特に受賞歴や検定試験の合格歴等がない人は事前にしっかりと確認しておきましょう。

活動報告書作成のステップ

活動報告書を効果的に作成するためには、計画的な準備が必要です。以下のステップに沿って進めることで、説得力のある内容をまとめることができます。

ステップ1:自己分析

まずは自己分析のやり方についてご説明します。

これまでの経験や実績の棚卸し

まず、自分がこれまでに取り組んできた活動を整理しましょう。部活動や委員会、ボランティア活動、資格取得など、学内外の経験をリストアップし、それぞれの取り組みの内容や成果を書き出します。単なる実績の列挙ではなく、どのような課題に直面し、どのように努力したのかを振り返ることが大切です。

強みや特徴の明確化

経験を振り返ったら、自分の強みや特徴を見つけ出します。「リーダーシップがある」「粘り強く取り組める」「創造的な発想ができる」など、自分の個性を言語化しましょう。さらに、それらの強みがどの活動から培われたのかを具体的に説明できるように整理しておくと、説得力のある活動報告書が作成できます。

ステップ2:大学・学部の分析

続いて、志望校について分析しましょう。

志望大学のアドミッションポリシーの確認

大学ごとに求める学生像は異なります。まず、志望大学のアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)を確認し、どのような能力や資質が求められているのかを把握しましょう。「自主性を重視する」「リーダーシップを求める」など、大学ごとの特徴を理解することが重要です。

求める学生像と自分の経験の照合

大学の求める学生像が明確になったら、自分の経験や強みとどのように合致するのかを考えます。仮に、求める学生像が「探究心を持つ学生を求める大学」なら、自主的に行った研究やプロジェクトをアピールできます。自分の経験と大学の方針が一致する点を強調することで、大学側に魅力的な印象を与えることができます。

ステップ3:エピソードの選定

自己分析と志望校の分析が完了したら、続いてはエピソードの選定を行います。この記事でも紹介した項目を参考に、どのエピソードを使うか整理しましょう。

アピール度の高いエピソードの選び方

活動報告書では、すべての経験を記載するのではなく、自分の強みや大学の求める人物像に合ったエピソードを厳選することが重要です。特に、主体的に取り組んだ活動や、困難を乗り越えた経験、学びや成長につながった出来事を選びましょう。また、単なる実績よりも、その過程でどのような努力や工夫をしたかを伝えられるエピソードが効果的です。

具体性と独自性を持たせるポイント

選んだエピソードをより魅力的に伝えるには、「いつ・どこで・何を・どのように」といった具体的な情報を盛り込むことが大切です。具体的には、「部活で努力した」ではなく、「全国大会出場を目指し、毎朝1時間の自主練習を半年間継続した」と書くことで、説得力が増します。また、自分ならではの視点や工夫を取り入れることで、他の受験生との差別化ができます。

ステップ4:文章構成の作成

続いて、選んだエピソードをもとに構成を作成しましょう。

起承転結を意識した構成

活動報告書の文章は、読みやすく整理された構成が重要です。「起(活動の背景)→承(取り組みの内容)→転(課題や困難の克服)→結(学びや成長)」の流れを意識すると、論理的で伝わりやすい文章になります。特に「転」の部分では、困難をどう乗り越えたかを具体的に書くことで、努力や成長が伝わりやすくなります。

事実と感想のバランス

活動報告書では、単に経験を羅列するだけではなく、その経験を通じて何を感じ、どのように成長したのかを伝えることが重要です。事実だけでは機械的な印象になり、感想ばかりでは説得力に欠けます。「〇〇の経験を通じて△△を学び、今後は□□に活かしたい」といった形で、事実と感想をバランスよく組み合わせましょう。

ステップ5:下書きと推敲

構成を作成したら、下書きをしてみましょう。

下書きの方法と注意点

まずは、細かい表現にこだわらず、伝えたい内容を一通り書き出しましょう。その後、冗長な部分を削除し、論理的な流れを整えていきます。特に、結論がぼやけていないか、主張が一貫しているかを確認しながら推敲すると、より洗練された文章になります。

第三者によるフィードバックの活用

自分だけで文章を仕上げるのではなく、先生や家族、友人に読んでもらい、客観的な意見をもらうことも大切です。第三者の視点から「伝わりにくい部分」「説得力の弱い点」などを指摘してもらうことで、より完成度の高い活動報告書に仕上げることができます。

よくある質問とその対策

活動報告書の作成にあたって、多くの受験生が共通の悩みを抱えています。ここでは、特に多い質問とその対策について解説します。

「特筆すべき実績がない場合、何を書けばいいのか?」

「全国大会出場」「表彰経験」など、目立つ実績がないと不安になる受験生も多いですが、総合型選抜では必ずしも華々しい実績が求められるわけではありません。大学が重視するのは、活動の結果よりも、その過程でどのような工夫や努力をし、どんな学びを得たのかです。

部活動でのレギュラー入りを目指して毎日地道な努力を続けた経験や、アルバイトで接客を工夫し、お客様の満足度を高めた工夫なども立派なエピソードになります。また、失敗した経験や挫折した出来事から学んだことも評価の対象となります。「挑戦したが結果が出なかった」「壁にぶつかりながらも工夫した」など、自分なりの努力や成長の過程を具体的に描くことで、大学に伝わる内容になります。

「活動内容が志望学部と直接関係ない場合の対処法は?」

これまでの活動が志望学部の専門分野と直接結びつかない場合でも、適切な書き方をすれば十分にアピールできます。重要なのは、その活動を通じて培ったスキルや姿勢が、志望学部での学びにどう活かせるのかを示すことです。

文学部を志望しているのにスポーツ系の活動が中心だった場合、「試合分析や作戦立案を通じて、論理的に物事を考える力を養った」といった視点でつなげることができます。あるいは、理系学部志望で文化祭の運営に力を入れていた場合、「プロジェクトの進行管理を経験し、データの収集や分析の重要性を学んだ」など、共通するスキルを見つけて関連づけることがポイントです。

このように、活動の本質を捉え直し、得た経験がどのように志望学部の学びや将来の目標に役立つのかを説明することで、説得力のある活動報告書が作成できます。

まとめ

活動報告書は、総合型選抜において自分の経験や強みを伝える重要な書類です。特別な実績がなくても、日々の努力や工夫、失敗からの学びを具体的に表現することで、説得力のある内容になります。

作成のポイントとして、まず自己分析を行い、自分の経験を整理することが大切です。次に、志望大学・学部の求める人物像を理解し、それに合ったエピソードを選定しましょう。文章を書く際は、起承転結を意識し、事実と感想のバランスを取ることが重要です。

本記事で紹介したステップを参考にしながら、自分らしさを最大限に表現した活動報告書を作成してみてください。もし、活動報告書の作成に不安があり、作成した活動報告書のフィードバックが欲しい場合は個別指導塾の利用がおすすめです。総合型選抜に特化したプロのアドバイスを受けることで、より完成度の高い活動報告書に仕上げることができるでしょう。しっかりと準備をすれば、自分の魅力が伝わる文章になります。ぜひ、自信を持って取り組んでください。

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