2025/05/09

総合型選抜は簡単なのか? 難しいのか? 特徴と事例を解説

総合型選抜は、一般選抜とは評価の基準や求められる力が大きく異なる入試形式です。学力を中心に結果が決まる一般選抜に対し、総合型選抜では志望理由やこれまでの活動実績、人間性など、多角的な視点からの評価が行われます。こうした違いから、受験生によって「簡単」と感じる場合もあれば「難しい」と感じる場合もあります。画一的な対策が取りづらく、大学ごとに求められる準備も異なるため、難易度の印象は人それぞれです。

この記事では、総合型選抜が簡単だと言われる理由と、難しいとされる背景について整理し、どのような点が合否を分けるのかを具体的に解説していきます。

総合型選抜は簡単? それとも難しい?

総合型選抜(旧AO入試)と一般選抜は、評価軸も求められる力も大きく異なります。受験生のタイプ次第で向き不向きに影響するため、「どちらが簡単か難しいか」の印象も受験生によって大きく変わってきます。

一般選抜は、学力を中心に合否が決まる試験です。私立大学では共通テスト利用型や独自試験型などのさまざまな入試パターンがあり、国公立大学では、共通テストと独自試験を組み合わせた二段階選抜が一般的です。教科数は大学や学部によって異なるものの、英語・国語・数学など主要教科のうちから2~3教科程度が課され、得点による順位で結果が決まるシンプルな形式です。

一方で総合型選抜では、志望理由や活動歴、大学入学後の志望分野との適合性といった多面的な評価がなされます。小論文、プレゼンテーションなどを通じて、どれだけ自分の意志と強みを伝えられるかがカギになりますが、共通テストの得点などの学力が問われるケースもあります。必ずしも専願とは限りませんが、大学によっては合格=入学を前提とする場合もあります。

この形式と相性が良いのは、「自分の強み」や「将来像」が明確な人です。大学のアドミッションポリシーと自分の経験・志向が重なることで、評価はより高まります。一方で、学力に自信があり、科目学習を積み重ねてきたタイプの人は、得点勝負の一般選抜の方が力を発揮しやすいでしょう。

そのため、総合型選抜の形式と相性が良ければ比較的簡単という印象を持ちやすいですし、一般入試のような学力試験への対策の方が得意であるのであれば、総合型選抜は難しいという印象を持ちやすくなります。受験生一人ひとりのタイプによって簡単なのか、それとも難しいのかは大きく異なると言えます。

総合型選抜が簡単だと言われるポイント

合格枠が拡大しておりチャンスが大きくなっている

総合型選抜を採用する大学の数は着実に増加傾向にあります。2020年度から2022年度にかけて、実施校は39校、学部数は223学部増加し、合格者も3万人以上増えました。

特に私立大学ではこの動きが顕著で、一般選抜の志願者数が減少する一方で、総合型選抜を選ぶ受験生は増加傾向にあります。入試改革をきっかけに受験生の選択肢が変化し、総合型選抜がより注目されるようになってきたと言えるでしょう。

偏差値以外の側面で評価を受けられる

総合型選抜では、人間性や志望動機といった要因も評価の対象となります。学業成績に自信がない場合でも、部活動や生徒会での実績、ボランティアや課外活動への取り組みがしっかりアピールできれば、合格の可能性は十分にあります。

「大学で何を学び、どのように成長したいか」といった将来像を具体的に描き、それを明確に伝えることができれば、学力だけでは測れない魅力が評価される入試形式です。一般の学力試験と異なる面が評価対象となることで、簡単に入れそうというイメージに繋がっている可能性があります。

一発勝負ではない要因が評価される

総合型選抜は「一発勝負」の一般入試とは異なり、志望理由書、面接、小論文、プレゼンテーション、ディスカッションなどを通じ、活動やスキル、人間性やビジョン、意欲等が総合的に判断されます。

一般選抜が「その時のために全て努力して、この時間に全てを出し切る」という試験であるのに対し、総合型選抜では、時間をかけて準備してきた志望理由書や取得資格、課外活動の成果など、これまでの積み重ねを文書化したものが評価されるという形式自体も、簡単と感じられやすい傾向があると言えます。

一般選抜より早く合否が決まる

総合型選抜では、特に私立大学の場合、年内に合格が確定するなど、一般選抜より早い時期に受験が終わるケースがあります。このような状況は、年明け以降に受験直前期を迎える一般選抜の受験生、特に、総合型選抜の対策内容について深く理解していない人にとっては、非常に簡単な入試として映っている可能性もあります。

総合型選抜が難しいと言われる理由

合格のための画一的な対策が存在しない

総合型選抜が難しいと言われる大きな理由の一つに、「これをすれば極めて高い確率で受かる」という明確な対策が存在しない点があります。一般選抜であれば模試の結果からある程度の見通しを立てることができますが、総合型選抜では大学ごとに評価基準が異なるため正解が見えにくく、対策の方向性を誤れば失敗に繋がるリスクもあります。

特に、小論文や面接においては正解が明示されているわけではなく、アドミッションポリシーにどれだけ適合しているか、面接官との相性、さらには課題文との相性までもが結果を左右します。こうした多くの変動要素が絡むため、合格への道筋を単純化することが難しく、受験生にとって不確実性の高い試験形式となっています。

学業以外の幅広いポイントが問われる

総合型選抜では、単に学力だけではなく、人物としての総合的な資質や将来の展望までが問われるため、対策すべき領域が非常に広範囲に及びます。例えば、活動報告書では高校生活での部活動・委員会活動、地域活動などの実績を客観的に整理し、わかりやすく伝える力が求められます。

また、大学進学後にどのようなテーマを研究したいのか、どの授業に関心があるのか、さらには学内外でどのような活動に取り組みたいのかまで、具体性を持って構想することが必要です。さらに面接では、発言の内容だけでなく、所作や表情、言葉遣いなども評価の対象となる場合もあるため、日常的な態度や振る舞いにも注意を払う必要があります。

このように、総合型選抜は多面的な準備を要する試験であり、それが難易度を高める要因となっています。

高3春以降の評定平均の逆転が難しい

総合型選抜では、評定平均が出願要件となるケースもあり、その場合は高校3年生になってから挽回するのは簡単ではありません。例えば、慶應義塾大学法学部のFIT入試B方式では「評定平均4.0以上」といった基準が明示されています。

評定は一般的に高1から高3の1学期まで(二期制の場合は高3の前期まで)の成績で算出されるため、高3から急に成績を上げても全体の平均値に大きな変化を与えるのは困難です。早い段階から意識的に成績を維持していないと、出願資格そのものを満たせないこともあります。

総合型特有の試験形式に加え共通テストも課される場合がある

総合型選抜では従来の学力試験は課されませんが、その分、総合型選抜特有の試験形式があり、しっかりと対策しなければ合格できませんし、大学によっては高度な準備が求められます。

例えば、東北大学の総合型選抜の一部の方式では、筆記試験や共通テストの受験が必須です。また、多くの大学の総合型選抜では、書類審査や面接・口述試験が中心となりますが、お茶の水女子大学では、レポート作成、グループ討論、研究発表など多様な試験が実施され、どれも一朝一夕の対策では全く太刀打ちできません。

なお、広く推薦入試まで含めて考えると、特に理系学部では「小論文」という名称でありながら実質的には記述式の学科試験が課されるケースもあり、教科の基礎力が問われることも少なくありません。

総合型選抜では学力・表現力・探究力のすべてをバランスよく問われるケースが増えており、日頃の学習の積み重ねが評価につながる入試へと変化してきています。

総合型選抜の簡単・難しいを分ける要素とは何か?

出願条件

総合型選抜では、大学ごとに設けられた出願条件を満たすことが前提となります。評定平均や欠席日数、特定の資格・検定の取得などが求められる場合もあり、これらをクリアできなければ選考に進むことすらできません。

特に英語検定やTOEFL、IELTSなどの資格スコアが必要な場合、スコアの有効期限や証明書の発行・直送の手続きにも注意が必要です。TOEFLなどのスコアを実施機関から大学に直送する必要がある場合は、その手続きに時間がかかることがあり、出願期限に間に合わないというトラブルも起こり得ます。

こうした細かい要件も含め、事前に条件を確認し、計画的に準備しておくことが不可欠です。

募集枠の数と実際の合格倍率事例

募集人数の多さがそのまま合格のしやすさに直結することがあります。募集人数が多ければ合格率は高くなりやすく、逆に募集人数が少なければ競争が激化し、合格率は下がりやすい傾向があります。

また、出願条件の厳しさも合格率に影響します。例えば、慶應義塾大学のFIT入試では、同じ法学部でもA方式(評定基準なし)とB方式(評定4.0以上)があり、B方式の方が受験者数が絞られる分、合格率は高くなっています。

このように、合格率は募集枠の規模だけでなく、出願条件や受験者層によっても左右されるため、大学の学部・学科ごとの傾向を事前に把握しておくことが重要です。

評価項目

評価のポイントが多岐にわたるのが総合型選抜の特徴です。志望理由書、活動報告書、面接、小論文など、求められる資料や試験内容は大学ごとに異なるため、それに応じた準備ができるかも難易度を左右する要因となります。

共通テストの有無

一部の大学では、総合型選抜であっても共通テストの受験を課しています。これは特に国公立大学に多く見られる傾向で、一般選抜と同様に学力面の裏付けを求める形です。

重要なのは、共通テストの結果が選考においてどう扱われるかです。単に参考程度に用いられる場合もありますが、多くの国公立大学では一定の得点率(例えば60%や70%)に達しなければ、他の評価項目でどれだけ優れた結果を残しても不合格となる「足切り」が設けられていることがあります。

このように、共通テストがあるかどうかは、受験難易度にも大きく関わるため、事前の確認が欠かせません。

簡単?難しい?総合型選抜の事例紹介

東北大学文学部 総合型選抜(AO入試)Ⅲ期

東北大学文学部の総合型選抜Ⅲ期は、共通テストの成績が選考の中心となるため、学力重視の入試形式と言えます。大学独自の筆記試験や小論文が課されず、一般入試の対策がそのまま活かせる点で、準備の負担自体は比較的軽く済みます。

また、評定平均などの厳しい出願条件が設けられていないことから、多くの受験生が出願できる分、倍率は非常に高くなりやすい傾向があります。

対策のしやすさという意味では「簡単」に見える一方、競争の激しさという点では「難しい」側面もある入試です。

慶應義塾大学法学部 FIT入試B方式

慶應義塾大学法学部のFIT入試B方式は、強い志望とともに、書類審査と面接を通じて多面的な資質が評価される選抜方式です。出願には評定平均4.0以上が求められ、志望理由書や調書の提出が必須です。個人面接も行われ、表現力・社会性・論理的思考力などが総合的に見られます。

学力試験は課されないものの、法律や政治に関する基礎知識、社会への関心、明確な志望動機が問われるため、事前準備と高い言語力が求められる難易度の高い入試です。

立命館大学情報理工学部(総合型選抜)AO選抜入学試験「ISSE方式」

立命館大学情報理工学部のISSE方式は、英語によるエッセイの提出、個人面接と書類審査で評価される総合型選抜です。出願には英語資格試験のスコア提出が必須で、受験資格を満たせば誰でも挑戦することが可能です。

面接では英語力に加え、論理的思考力やリーダーシップが問われ、国際的な視点や発信力が重視されます。募集人員は10名程度と限られており、競争率が高くなる入試形式です。

総合型選抜入試は簡単なのか難しいのか まとめ

総合型選抜(旧AO入試)と一般選抜では、求められる力や評価の軸が大きく異なります。学力勝負の一般選抜は、得点によって合否が決まる明快な試験形式である一方、総合型選抜は志望理由や活動実績、人間性など、多面的な観点から評価されます。

そのため、総合型選抜と相性が良い受験生にとっては「比較的簡単」と感じられることもありますが、画一的な合格対策が存在しない点や、準備すべき内容の広さ、共通テストの有無などによって難しさを感じるケースも少なくありません。

また、募集枠の数や倍率、出願条件の厳しさなどによっても難易度は変動します。総合型選抜は一発勝負ではなく、時間をかけて準備したものを総合的に評価してもらえる形式である一方で、誰にとっても容易な入試というわけではなく、向き不向きがはっきり表れやすい試験形式であると言えるでしょう。

対策に不安を感じる場合は、総合型選抜に特化した専門塾のサポートが有効です。特に、個別指導のスタイルであれば、受験生一人ひとりの強みや課題に合わせた対策が期待でき、志望理由書の書き方や活動報告の整理、面接対策などを丁寧にサポートしてくれる環境が整い、合格への道筋が大きく広がります。

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