発達障害だと不登校になりやすい？タイプ別の原因や対処法を解説

「発達障害が原因で不登校になることがあるのか知りたい」

「我が子が不登校になったとき、親としてどう接すればいいのだろう」

学校に行きたくないと言うことが増えたり、子どもが学校を休みがちになったりすると、どうすればいいのかわからず、不安を抱えてしまう保護者の方もいるでしょう。

結論として、発達障害だからといって必ずしも不登校になるわけではありません。しかし、発達障害の特性が原因で子どもが強いストレスを感じ、不登校につながることがあります。

将来を考えると不安がつのるかもしれませんが、大切なのは、焦らずじっくりサポートすることです。子どもの気持ちに寄り添い、特性に合ったサポートを行うことで、少しずつお子さまが自信を取り戻し、前向きに進めるようになります。

本記事では、発達障害の子どもが不登校になる原因と対処法をタイプ別に紹介します。不登校になった子どもが安心して過ごすために親ができるサポートや、復学以外の選択肢についても解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

発達障害が原因で不登校になる可能性はある｜子どもの特性に合わせてじっくりサポートしよう

冒頭でもお伝えしましたが、「発達障害＝不登校になる」わけではありません。

しかし、発達障害の特性を周りから理解されず、人前で教師から叱られたり、同級生にからかわれたりすることで自己肯定感が下がり、不登校につながるケースはあります。

お子さまが不登校になったとき、「このままずっと学校に行けなかったらどうしよう……」と不安になるかもしれません。しかし、不登校の原因が発達障害だったとしても復学できないわけではありません。

子どもの気持ちに寄り添い、特性に合わせてじっくりサポートすることで、少しずつ自信を取り戻したり、登校日数を増やしたりすることにつながります。

次の章で、発達障害の子どもが不登校になる主な原因と対処法を、特性別に詳しくご紹介します。

【タイプ別】発達障害の子どもが不登校になる原因と対処法

発達障害の子どもが不登校になる主な原因と対処法を、タイプ別に以下の表にまとめました。

発達障害のタイプ	不登校の原因	対処法
ADHD（注意欠如・多動症）	注意力散漫	チェックリストやカバンの中身の写真を活用して忘れ物を防ぐ 集中力を切らさない工夫をする
ADHD（注意欠如・多動症）	多動性	席を教室の後ろや端にしてもらう ストレスボールなどで手の感覚を刺激し動きたい衝動を落ち着かせる
ADHD（注意欠如・多動症）	衝動性	SST（ソーシャルスキルトレーニング）を受ける ルールを守る練習や気持ちを落ち着かせる練習を家庭で行う
ASD（自閉スペクトラム症）	感覚過敏	不快感を和らげるツールや個室を利用する
ASD（自閉スペクトラム症）	コミュニケーションの困難さ	SST（ソーシャルスキルトレーニング）を受ける 得意な分野で役割を持たせる
SLD/LD（限局性学習障害/学習障害）	特定の学習への困難さ	困難さに応じたツールを利用する 負担の多い授業への参加を調整してもらう

ただし、同じ診断名であっても、特性や不登校の原因となる困難さは人それぞれ異なります。紹介する原因と対処法は、あくまで一例として参考にしてください。

以下で、それぞれの原因や対処法を詳しく解説します。

ADHD（注意欠如・多動症）｜注意力散漫・多動性・衝動性

ADHD（注意欠如・多動性）の子どもは、「注意力散漫」「多動性」「衝動性」などの特性が原因で不登校につながる可能性があります。

特性	学校生活での困りごと
注意力散漫	忘れ物が多い 授業に集中できない 片付けが苦手
多動性	落ち着きがない じっとしていることが苦手
衝動性	衝動的に手が出る 順番待ちができない

上記のような特性・困りごとから、授業の時間がストレスになったり、周りにからかわれたり、孤立したりして、学校に行きづらくなることがあります。

ADHD（注意欠如・多動症）の子どもが不登校になったときの対処法

ADHDの子どもが不登校になったときの主な対処法は、次のとおりです。

不登校の原因	対処法
注意力散漫	チェックリストやカバンの中身の写真を活用して忘れ物を防ぐ 集中力を切らさない工夫をする（小休憩や体を動かす時間を作るなど）
多動性	席を教室の後ろや端にしてもらい周囲からの刺激を減らす ストレスボールなどで手の感覚を刺激し動きたい衝動を落ち着かせる
衝動性	SST（ソーシャルスキルトレーニング）を受け社会性を身につける ルールを守る練習や気持ちを落ち着かせる練習を家庭で行う

SSTとは、対人関係を築く上で必要な技能（ソーシャルスキル）を養うトレーニング方法です。ソーシャルスキルを身につけることで、自分の気持ちをうまく表現できるようになったり、周囲との関係性が築きやすくなったりします。

SSTは病院や児童発達支援事業所、放課後等デイサービスなどで受けられるため、必要に応じて利用を検討すると良いでしょう。

ASD（自閉スペクトラム症）｜感覚過敏・コミュニケーションの困難さ

ASD（自閉スペクトラム症）の子どもは、「感覚過敏」「コミュニケーションの困難さ」などの特性が不登校の原因となる場合があります。

特性	学校生活での困りごと
感覚過敏	教室のガヤガヤした音が苦手（聴覚過敏） パソコンや教室の光がまぶしい（視覚過敏） 制服の素材など特定の感触が不快で落ち着かない（触覚過敏）
コミュニケーションの困難さ	相手の気持ちを考えることが苦手 場の空気を読むことが苦手 冗談がわからない

感覚過敏とは、視覚や聴覚、触覚など、特定の感覚が敏感になっている状態を指します。これらの不快感がさまざまな場面で起こるとストレスになり、学校生活に疲れてしまうことがあるかもしれません。

また、ASDの子どもは周囲とのコミュニケーションが苦手な傾向にあります。コミュニケーションの困難さから対人トラブルを引き起こしたり、うまくクラスに馴染めず疎外感を感じたりして、不登校につながることがあります。

ASD（自閉スペクトラム症）の子どもが不登校になったときの対処法

ASDの子どもが不登校になったときの主な対処法は、次のとおりです。

不登校の原因	対処法
感覚過敏	不快感を和らげるツールや個室を利用する
コミュニケーションの困難さ	SST（ソーシャルスキルトレーニング）を受ける 得意な分野で役割を持たせる

不登校の原因が感覚過敏の場合は、不快感を和らげるツールを活用することで、安心して学校生活を送りやすくなります。

• 聴覚過敏：イヤーマフ（防音保護具）をつける
• 視覚過敏：サングラスや遮光レンズ眼鏡をつける
• 触覚過敏：衣服のタグを取り除く、好きな感触のグッズを持たせる など

また、コミュニケーションの困難さが原因の場合は、得意なことを活かせる場面を作ってもらうことが大切です。

子どもの得意なことや好きなことを教師へ伝え、それを活かせる係活動や役割を担当することで、「自分は必要とされている」と自己肯定感が高まりやすくなるでしょう。

SLD/LD（限局性学習障害/学習障害）｜特定の学習への困難さ

SLD/LD（限局性学習障害/学習障害）の子どもは、「特定の学習への困難さ」が原因で不登校につながることがあります。

SLD/LDは、学習の困難さによって「識字障害」「書字障害」「算数障害」の3種類に分けられます。

• 識字障害（ディスレクシア）：教科書や黒板の文字を正しく読むことが難しい
• 書字障害（ディスグラフィア）：文字は読めるが、それを紙に正確に書き出すことが難しい
• 算数障害（ディスカリキュア）：数の概念の理解や計算が難しく、算数・数学の成績が極端に低い

特定の学習だけに困難さがあるため、周りから理解されにくく、授業そのものにストレスを感じることがあります。

また、「周りはできているのに自分だけできない」という恥ずかしさや劣等感から自己肯定感が下がり、学校へ行くのが嫌になるケースも考えられます。

SLD/LD（限局性学習障害/学習障害）の子どもが不登校になったときの対処法

SLD/LDの子どもが不登校になったときは、事前に教師に相談し、困難さに応じたツールを活用して勉強に取り組みやすくすることが大切です。

不登校の原因	対処法
識字障害	図や写真の多い教材を使用する 読み上げソフトを使用して教科書を音声化する
書字障害	板書を写す代わりにカメラで写真を撮る 図や複雑な文字はプリントやシールを使う
算数障害	計算は電卓を使用する マスが広めの計算用紙を使う

授業自体に苦手意識がある場合は、スモールステップで授業を受けるのも効果的です。

始めは困難さの少ない授業（体育・音楽など）から参加し、徐々に国語や算数（数学）などの授業に参加することで負担を感じにくく、安心して授業を受けられるようになります。

発達障害で不登校になった子どもに親ができる５つのサポート

大前提として、発達障害の子どもが不登校になったときは、無理に学校へ行かせないことが重要です。その他、子どもが自宅で安心して過ごすために親ができるサポートは次のとおりです。

• 学校を休みたい子どもの気持ちを尊重する
• 無理のない範囲で生活リズムを整える
• 子どもに合う学習方法で勉強の遅れを取り戻す
• 学校との連携を図って子どもの様子を共有する
• 発達障害や不登校専門の支援機関に相談する

それぞれのサポートについて、詳しく解説します。

１.学校を休みたい子どもの気持ちを尊重する

発達障害に限らず、不登校になる子どもは、学校生活に対する強いストレスから心身ともに疲れ切っています。そのため、まずは子どもの気持ちを尊重し、十分な休息を取らせることが大切です。

親としては将来を考えて焦ってしまうかもしれませんが、無理に子どもを学校へ行かせようとするのは逆効果です。子どもがさらにストレスを溜め込み、復学が難しくなる可能性があります。

子どもが学校を休むことに対して罪悪感を抱かないように、「休むことは悪くないよ」と前向きな声かけをすることで、安心して心身を休められるでしょう。

２.無理のない範囲で生活リズムを整える

発達障害の子どもが不登校になった時は、無理のない範囲で生活リズムを整えることも大切です。不登校になって自宅で過ごす時間が増えると、どうしても昼夜逆転の生活になりやすくなり、慢性化すると生活リズムをもとに戻すのが難しくなります。

また、家族とのコミュニケーションが減ることで不安やストレスを溜め込みやすくなり、不登校が長引くリスクもあります。そのため、早めの睡眠を促したり、朝決まった時間に声をかけたりして、生活リズムが大きく乱れないようにすると良いでしょう。

ただし、日中家にいることへの罪悪感から昼夜逆転の生活になっている場合もあるため、無理強いはしないようにしてください。

３.子どもに合う学習方法で勉強の遅れを取り戻す

不登校によって欠席日数が多くなると、勉強に遅れが生じ、復学したあとの授業についていくのが難しくなります。そのため、心身を十分に休め、少しずつ気力が湧いてきたら、子どもに合う学習方法で勉強の遅れを取り戻しましょう。

不登校の期間に少しずつ授業内容を進めておくことで、復学をスムーズに進めやすくなります。

ただし、発達障害の子どもは特性によって最適な学習方法が異なります。効率良く勉強を進めるためにも、塾や家庭教師など、プロのサポートも検討しましょう。

家庭教師のトライでは発達障害の特性に合わせた完全マンツーマン授業で効率よく勉強の遅れを取り戻せる

参照：家庭教師のトライ – 満足度No.1　約33万人の教師の中からあなたに最適な家庭教師をご紹介

家庭教師のトライは、完全マンツーマンで授業を行っています。一人ひとりの特性に合わせて最適な指導ができるため、発達障害や不登校のお子さまでも、無理のないペースで勉強の遅れを取り戻すことが可能です。

「特性に合った勉強方法で子どもに学習してほしい」とお考えの方は、家庭教師のトライまでお気軽にご相談ください。

４.学校との連携を図って子どもの様子を共有する

現時点で登校するのは難しくても、学校とは定期的に連絡を取り、子どもの様子を共有することが大切です。復学に向けたヒントを得たり、学校でどのような支援を受けられるのか把握したりすることで、復学できる環境を整えやすくなります。

ただし、復学については子どもの意思を最優先に考えましょう。復学を望んでいないにも関わらず親や学校が復学の話を進めれば、子どもが不信感を感じてしまうかもしれません。

５.発達障害や不登校専門の支援機関に相談する

子どもの発達障害や不登校に関する悩みがあるときは、一人で抱え込まずに専門の支援機関に相談するのも選択肢の一つです。以下におすすめの支援機関と特徴をまとめました。

支援機関	特徴
児童相談所	児童福祉士や医師などの専門家が在籍している 発達障害に関する悩みの相談ができる 全国に設置されている
発達障害者支援センター	発達障害の方を支援する目的で設立された専門機関 全国に設置されている
教育支援センター	不登校に関する相談ができる 都道府県や市区町村に設置されている

近くの児童相談所は「こども家庭庁」から、発達障害者支援センターは「国立障害者リハビリテーションセンター」のホームページから確認できます。

トライのオンライン個別指導塾「不登校サポートコース」では正社員の教育プランナーがあらゆる悩みを解消

参照：不登校サポートコース | トライのオンライン個別指導塾

トライのオンライン個別指導塾「不登校サポートコース」では、不登校のお子さまへの指導経験が豊富な正社員の教育プランナーが、教師とは別に学習をサポートします。

一人ひとりの特性や目標に合わせた学習計画の作成はもちろん、学校復帰やお子さまとの向き合い方などの悩みも相談できるのが特徴です。

また、授業は完全マンツーマンのため、「集中して話が聞けない」「コミュニケーションを取るのが苦手」など、発達障害特有の悩みにも対応しています。

発達障害で不登校になった子どもが選べる「復学以外」の選択肢

特性や子どもの状況によっては、復学以外の選択肢が子どものためになることもあります。復学以外の主な選択肢は、以下のとおりです。

• フリースクール
• 通信制高校
• 不登校特例校

それぞれの特徴を詳しく解説します。

フリースクール

フリースクールとは、不登校はもちろん、何らかの理由で学校に行けない子どもたちを受け入れ、学びの場を提供している民間の教育機関です。子どもの主体性を尊重しているのが特徴で、周りを気にせず自分のペースで勉強できるため、発達障害や不登校になった子どもでも安心して過ごせる環境が整っています。

また、フリースクールの中には、地域の小・中学校と連携しているところもあり、スクールへの登校が在籍校の出席扱いとなる場合もあります。

ただし、すべてのフリースクールが発達障害に理解があるとは限らないため、事前に学校見学などで雰囲気を確認しておくと良いでしょう。

通信制高校

通信制高校とは、主に自宅学習やレポートの提出などで必要な単位を取得し、卒業を目指す高校です。自宅学習が中心のため、自分に合った環境・ペースで学習を進めることができます。全日制や定時制の高校に比べて通学頻度が少なく、不登校の経験がある子どもでも高校卒業を目指しやすいのが特徴です。

発達障害や不登校向けのサポートが充実している通信制高校を選べば、特性に合った方法で安心して学校に通うことができるでしょう。

不登校特例校

不登校特例校とは、不登校の子どもが安心して学べるよう、文部科学大臣の指定を受けて特別なカリキュラムを編成している学校です。学習指導要領の内容にとらわれず、不登校の子どもの実態に配慮した少人数指導や習熟度別指導、家庭訪問、保護者への支援などを行っています。

また、一般的な学校に比べて総授業時間数が少なく設定されているのが特徴で、卒業すると卒業資格が得られます。

ただし、現時点（令和7年度）では小学校12校、中学校40校、高等学校11校と数が少ないため、近くに通える学校があるかを事前に確かめておくと良いでしょう。不登校特例校の設置場所は、「学びの多様化学校（いわゆる不登校特例校）の設置者一覧」から確認できます。

参照：学びの多様化学校（いわゆる不登校特例校）（不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校）について：文部科学省

まとめ

本記事では、発達障害の子どもが不登校になる原因と対処法、親ができるサポート、復学以外の選択肢について解説しました。

発達障害だからといって不登校になるわけではありませんが、特性によって強いストレスを感じたり、自己肯定感が下がったりして不登校につながることはあります。

不登校になった子どもが安心して復学できるようになるには、不登校の原因を明確にし、特性に応じたサポートをすることが大切です。

発達障害のタイプ	不登校の原因	対処法
ADHD（注意欠如・多動症）	注意力散漫	チェックリストやカバンの中身の写真を活用して忘れ物を防ぐ 集中力を切らさない工夫をする
ADHD（注意欠如・多動症）	多動性	席を教室の後ろや端にしてもらう ストレスボールなどで手の感覚を刺激し動きたい衝動を落ち着かせる
ADHD（注意欠如・多動症）	衝動性	SST（ソーシャルスキルトレーニング）を受ける ルールを守る練習や気持ちを落ち着かせる練習を家庭で行う
ASD（自閉スペクトラム症）	感覚過敏	不快感を和らげるツールや個室を利用する
ASD（自閉スペクトラム症）	コミュニケーションの困難さ	SST（ソーシャルスキルトレーニング）を受ける 得意な分野で役割を持たせる
SLD/LD（限局性学習障害/学習障害）	特定の学習への困難さ	困難さに応じたツールを利用する 負担の多い授業への参加を調整してもらう

何より大切なのは、子どもの心を守ることです。学校へ行きたがらないときは、子どもの気持ちを尊重し「休むことも大事」と寄り添うことで、安心して心身を休めることができます。

また、親だからといって一人で抱え込む必要はありません。学校や発達障害・不登校専門の支援機関などに相談しながら、子どもにとってより良い支援を考えていきましょう。