「子どもが何度漢字を書いても覚えられない」
「覚えた漢字をすぐに忘れてしまう」
と悩む保護者の方は少なくありません。
漢字の習得が難しいのは、単なる努力不足ではなく、LD(学習障がい)やADHD(注意欠陥多動性障がい)、ASD(自閉スペクトラム症)といった発達障がいが関係しているケースがあります。
本記事では、漢字が覚えられない原因を特性タイプ別に整理した上で、それぞれの特性をカバーする学習法と、保護者ができるサポートを解説します。
漢字が覚えられないのは発達障がいが原因の場合もある

漢字の習得には、文字の形を見分ける視覚認知や、情報を一時的に保持するワーキングメモリ、正しく書くための運動制御など、複数の脳の働きが関係しています。
発達障がいの特性があると、こうした脳機能の一部に偏りが生じ、「何度書いても覚えられない」「似た漢字を混同する」といった困難につながる場合があるのです。
現在の日本では、一定数の子どもが漢字習得に困難を抱えているとされており、なかなか漢字を覚えられないのは決して珍しいことではありません。
まずは、子どもがなぜ漢字習得につまずいているのかを正確に理解し、特性に合った学習法を取り入れることが大切です。
【特性タイプ別】漢字が覚えられない理由

子どもが漢字を覚えられない原因には、以下のような発達障がいが関係している場合があります。
- LD(限局性学習症)
・ディスレクシア(読字障がい)|文字の形と音が結びつきにくい
・ディスグラフィア(書字障がい)|書く動作そのものに負荷を感じる - ADHD(注意欠陥多動性障がい)|細部への注意が続かず反復練習が苦痛になる
- ASD(自閉スペクトラム症)|じっくり見ることが苦手で複雑な漢字ほど崩れやすい
以下、それぞれの特性について詳しく解説しますので、子どもの様子と照らし合わせてみましょう。
ディスレクシア(読字障がい)|文字の形と音が結びつきにくい
ディスレクシアはLD(限局性学習症)の一つで、「発達性読み書き障がい」とも呼ばれています。視力や聴力、全体的な知能には問題がないにもかかわらず、読み書きに大きな困難が生じる学習障がいです。
ディスレクシアの子どもが漢字を覚えにくいのは、文字の「形」と「音」を結びつける力が弱いことが原因と考えられます。
私たちは漢字を見たとき、無意識に形と読みをセットで記憶しています。しかし、この結びつきがうまくいかないと、何度見ても定着しにくくなるのです。
他にも、ディスレクシアの子どもには、以下のような傾向が見られます。
- 文字を一文字ずつ区切るように読む
- 文字や行を抜かして読んでしまう
- 文章を読むとすぐに疲れる
- 文字の形や音を捉えるのが難しい
一文字ずつ読むのに時間がかかるだけでなく、頻繁に読み間違いが起こるため、多くの子どもは文章を読むだけで疲れてしまうでしょう。
その結果、勉強に対する苦手意識が高まり、語彙や知識が身につかなければ、学習の遅れや不登校につながる可能性もあります。
ディスグラフィア(書字障がい)|書く動作そのものに負荷を感じる
ディスグラフィアもLD(限局性学習症)の一つで、「発達性書字障がい」といわれています。文字の読みではなく、書くことに強い困難がある状態です。
文字そのものを覚えにくいタイプや、頭の中では形がわかっていてもうまく書けないタイプなど、いくつかのパターンがあります。
ディスグラフィアの子どもには、以下のような傾向が見られます。
- 漢字を繰り返し書いても覚えられない
- 書き順を何度教えても定着しにくい
- 漢字を覚えてもすぐに忘れてしまう
- 左右が反転した鏡文字を書く
- 文字の大きさがばらつき、マスに収まらない
- 「ね」と「ぬ」、「ン」と「ソ」など似た形を混同する
読み書きの両方に困難があるときは、診断名として「ディスレクシア」が使われます。一方、文字を書くことが著しく苦手な場合は「ディスグラフィア」が使われるのが一般的です。
ADHD(注意欠陥多動性障がい)|細部への注意が続かず反復練習が苦痛になる
ADHDは、不注意・多動性・衝動性を主な特徴とする発達障がいです。
ADHDの子どもは集中力の持続が難しく、漢字の練習中に気が散りやすい傾向があります。その他、漢字習得においては、以下のような特徴が見られることがあります。
- 手本をよく見ないまま書き始めてしまう
- 覚えた漢字をすぐに忘れる
- 同じページ内で文字の大きさが変化する
- 文字間隔が不均等
- 筆圧が極端に強い/弱い
- 書き始めは丁寧だが途中から形が乱れる
- 部首(へん)とつくりのバランスが悪い
ある調査では、ADHDはLDと併発することが報告されています。そのため、不注意や集中のしづらさと、読み書きの困難が同時に見られるケースも少なくありません。
ASD(自閉スペクトラム症)|じっくり見ることが苦手で複雑な漢字ほど崩れやすい
ASDは、「人とのコミュニケーションが苦手」「興味に偏りがあり、こだわりが強い」「感覚や運動のバランスに偏りがある」などの特性が見られる発達障がいです。
ASDの子どもが書く漢字の特徴は個人差がありますが、次のような共通点があります。
- 細部にこだわり、書くのに時間がかかりすぎる
- 細かい部分には注意が向くが、文字全体のバランスをとるのが苦手
- 文字の大きさや位置がそろいにくく、行全体で見るとばらつきが出る
こうした特徴には、特定の部分に注意が偏りやすいことや、切り替えの難しさといった認知特性、協調運動の困難さが関係していると考えられます。
発達障がいの特性をカバーする漢字の覚え方

繰り返しの書き取りで漢字習得がうまくいかなかった場合でも、特性に合った方法に切り替えることで、「できた」という実感につながる可能性があります。
ここでは、発達障がいの特性に合った漢字の覚え方を解説します。
- ディスレクシア(読字障がい)|漢字の「形」の理解を補助する
- ディスグラフィア(書字障がい)|書く負担を減らす
- ADHD(注意欠陥多動性障がい)|飽きずに続けられる学習法を取り入れる
- ASD(自閉スペクトラム症)|漢字の規則性を整理する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ディスレクシア(読字障がい)|漢字の「形」の理解を補助する
ディスレクシアの子どもは、「雷」と「雪」のように形が似ている漢字を混同しやすく、画数が多くなるほど間違いも増える傾向があります。何度も書かせるだけでは習得しにくいため、形を理解しやすくする工夫が必要です。
たとえば、漢字を “部首” と “つくり” に分け、それぞれに名前をつけて覚える方法があります。「語」であれば「ごんべん+五+口」と分けることで、形の構造をとらえやすくなります。
また、漢字の成り立ちをストーリーで伝えるのも効果的です。
ストーリーを活用した学習法は、漢字学習の補助的手段として使われるケースが多くありますが、ディスレクシアの子どもについては、触覚・音声学習などの多感覚的アプローチと組み合わせることで、より効果的になると考えられています。
たとえば、「山」は山の形を表した文字、「休」は人が木にもたれている様子を表した文字といったように説明すると、形と意味が結びつきやすくなります。
部首ごとに色を変えて書いたり、書き順をアニメーションで確認できるアプリを活用したりといった、視覚的な工夫を取り入れるのもおすすめです。
実際、これらの工夫は現場でも効果が報告されており、視覚処理の補助につながっています。
ディスグラフィア(書字障がい)|書く負担を減らす
ディスグラフィアの子どもには、書くこと自体が大きな負担になりやすく、多くのエネルギーを使う原因にもなります。漢字を覚える以前に「書くこと」で疲れ切ってしまうため、「覚える」と「書く」を分けて考えることが重要です。
まずは、漢字の読みや意味の理解を優先しましょう。フラッシュカードや音声教材を使って、漢字の読みや意味を先に身につけ、その後に少しずつ書く練習を取り入れる方法が効果的です。
このとき、太めのペンやグリップ補助具を使うと握りやすさが向上し、筆圧の調整がしやすくなります。ただし、実際の効果は個人差が大きいため、子どもに合ったツールを見つけることが重要です。
また、タブレット学習を取り入れるのも効果的です。発達特性に配慮された教材や指でなぞるタイプのアプリを活用すれば、紙に書くよりも少ない力で書く感覚を身につけられ、記憶の定着も促されます。
音声入力機能と組み合わせれば、作文や文章問題での書字負担も軽減できます。
ADHD(注意欠陥多動性障がい)|飽きずに続けられる学習法を取り入れる
ADHDの子どもは、楽しい・面白いと感じることに強く反応しやすい傾向があります。そのため、単調な繰り返しよりも、「ゲームのように楽しめる形にする」「興味のあることと結びつける」といった工夫を取り入れた学習が効果的です。
たとえば、漢字カードで神経衰弱やかるたをしたり、スマートフォンのクイズアプリを活用したりすると、正解したときにすぐ反応が得られるため、飽きにくくなります。また、子どもが好きなアニメのキャラクターや、スポーツ選手の名前に使われている漢字から覚え始めるのも有用です。
学習に取り組む際は、集中力が途切れないよう、1回の練習を5〜10分程度に設定しましょう。タイマーを使って終わりの時間を見えるようにすると、「もう少しで終わる」と見通しが立ち、集中しやすくなります。
1日10分を1回行うよりも、朝と夕方に5分ずつ分けて取り組むほうが、記憶にも残りやすくなります。
ASD(自閉スペクトラム症)|漢字の規則性を整理する
ASDの子どもは、ルールやパターンがはっきりしているものに安心感を覚えやすい傾向があります。この特性を漢字学習に活かすことで、集中力も高まるでしょう。
漢字をパーツに分解したり、同じ部首の漢字をまとめたりすることで、文字の構造に関する共通点が見え、理解が深まります。
その他、漢字の成り立ちや意味をイラストで示したカードなど、視覚的な情報と合わせて学べば、漢字の意味や由来を思い浮かべやすくなります。
また、視覚過敏がある場合、白いノートがまぶしく感じて集中力が落ちる可能性がある点に注意が必要です。そのようなときは、本人の好みに合わせてアイボリーや淡いグリーン、ラベンダー、レモン、ミント色など、目に優しい色のノートを使うと、取り組みやすくなる可能性があります。
加えて、机の上は必要なものだけにして、余計な刺激を減らすことも意識しましょう。特性によっては適度な刺激を要する場合もあるため、子どもの状態に合わせて配慮することが大切です。
家庭教師のトライではお子さまの特性に合わせたカリキュラムと指導で学習をサポート

家庭教師のトライでは、発達特性のある生徒への指導実績がある教師が1対1で指導し、お子さまの負担を抑えながら学力向上を目指します。
これまでにも、「集中力が続かず学習習慣がつかない」「同級生と比べて苦手が多い」といった悩みを抱えるお子さまや保護者の方を数多くサポートしてきました。
学力を伸ばすことはもちろん、「できた」という成功体験を積み重ねることを大切にし、自信につなげていきます。
漢字が覚えられない子どもに保護者ができるサポート

最後に、漢字が覚えにくい子どもに対して、保護者ができるサポートを3つ紹介します。
- 検査を受けて特性を正しく理解する
- 学校に特性と希望する配慮を伝える
- 発達特性への配慮がある塾や家庭教師を活用する
それぞれのポイントを順に解説していきます。
検査を受けて特性を正しく理解する
発達障がいやその傾向のある子どもには、特性に合ったサポートを行うことが必要です。
そのためにも、まずは子どもの「なぜ苦手なのか」という理由を正しく理解しましょう。
医療機関で専門的な検査を受けると、読み書きや集中力のどこにつまずきがあるのかが明確になり、子どもに合った学習方法や関わり方を選びやすくなります。
また、診断があることで、公的な支援を利用できたり、学校に対して合理的配慮を求めやすくなる点もメリットです。
発達障がいの診断は、児童精神科や小児神経科などで受けられます。医師が問診・行動観察を行い、検査の結果と合わせて総合的に判断されます。
学校に特性と希望する配慮を伝える
検査結果や医師の診断書がそろったら、学校に配慮を申し出ましょう。
最初の相談先は学級担任です。連絡帳や面談を通じて、子どもの特性や具体的な困りごと、家庭での様子をできるだけ詳しく伝えましょう。合わせて、どのような配慮を希望しているのかも整理して伝えると、学校側も対応を検討しやすくなります。
担任だけでの対応が難しい場合は、「特別支援教育コーディネーターと相談したい」と伝えると良いでしょう。特別支援教育コーディネーターは、校内の支援体制を調整する役割を担っており、合理的配慮の内容を一緒に考えたり、必要に応じて特別支援学級の利用を提案してくれたりします。
受験時に特性に対する配慮を受けられる場合も
高校入試では、問題文の漢字にルビを付けてもらう、試験時間を延長する、別室で受検するといった特別な配慮が認められる場合があります。
申請には、医師の診断書に加え、中学校で受けてきた配慮の内容をまとめた状況報告書や意見書が必要です。書類は、在籍している中学校を通じて志望校や教育委員会へ提出する流れになります。ただし、提出先や手続き方法は都道府県によって異なるため、学校に相談して確認することが重要です。
また、申請には期限があるため、中学3年生になったらできるだけ早い段階で担任の教師に相談しましょう。
発達特性への配慮がある塾や家庭教師を活用する
学校の配慮を受けたとしても、学習時間が限られており、漢字の定着まで十分に手が回らない可能性もあります。
そこでおすすめなのは、発達特性への指導実績がある家庭教師や学習塾などの民間サービスを利用し、学校では補いきれない学習時間を確保することです。
発達障がいの特性を理解した指導者のもとで「できた」という体験を積み重ねれば、漢字への苦手意識も大きく軽減するでしょう。
家庭教師のトライは正社員の教育プランナーが学習を徹底サポート

家庭教師のトライでは、学習指導を行う教師に加えて、正社員の教育プランナーが付き、お子さまの学習をサポートします。
お子さま一人ひとりの特性に合わせた個別カリキュラムを作成し、無理のない形で学力向上を目指します。
「家庭学習の進め方がわからない」「どのようにサポートすべきか悩んでいる」という方は、家庭教師のトライへお気軽にご相談ください。
まとめ

漢字を覚えられないのは単なる努力不足ではなく、発達障がいの特性が関係している場合があります。
ディスレクシア・ディスグラフィア・ADHD・ASDといった特性に応じた方法を取り入れることで、「できた」という実感につながり、前向きに学習へ取り組みやすくなります。
家庭だけで抱え込まず、必要に応じて学校や塾、家庭教師などと連携しながら、サポート体制を整えていきましょう。