子どもが宿題などの提出物を出せないのは、単なる怠けではなく、ADHD(注意欠陥多動性障がい)やASD(自閉スペクトラム症)、LD(限局性学習症)などの発達障がいが関係している可能性があります。
これらの特性を理解せずに叱ってしまうと、子どもの自信を損ねたり、学習への意欲が低下したりするかもしれません。そのため、まずは提出物を出せない理由を正しく把握し、子どもに合ったサポートを考えることが大切です。
本記事では、提出物が出せない原因を発達特性ごとに整理し、それぞれに合った対処法やサポートのポイントを解説します。
この記事の目次
提出物が出せないのは「怠け」ではなく発達障がいの特性が原因

ここでは、提出物が出せない原因として考えられるADHD(注意欠陥多動性障がい)・ASD(自閉スペクトラム症)・LD(限局性学習症)の特性について解説します。
- ADHDの不注意・衝動性が提出までの段取りを妨げやすい
- ASDやLDの特性も提出物の管理に影響しやすい
- 中学生から「提出物が出せない」状態になりやすい理由
それぞれ順に見ていきましょう。
ADHDの不注意・衝動性が提出までの段取りを妨げやすい
ADHD(注意欠陥多動性障がい)の子どもが提出物を出せない理由のひとつに、脳の「実行機能」の弱さが挙げられます。
実行機能とは、目標に向かって行動や考えを調整する力のことです。
この機能がうまく働かないと、宿題に取りかかるタイミングがつかめなかったり、途中で別のことに気を取られて中断してしまったりします。また、必要な道具の準備を忘れてしまい、そもそも宿題を始められないことも珍しくありません。
そのせいで、周囲からはやる気がないように見えることもありますが、宿題などの提出物を忘れるのは、脳の働き方の特性が原因です。決して意志の弱さや性格の問題ではないことを理解しておくことが大切です。
指示を覚えたまま動けない「ワーキングメモリの弱さ」も影響している
ADHDの子どもは、実行機能の弱さに加え、ワーキングメモリの容量が小さい傾向もあります。
ワーキングメモリとは、聞いた情報を一時的に保ちながら、それを操作・整理して次の行動につなげる力のことです。
ADHDの子どもは、ワーキングメモリの容量が小さいため、教師から口頭で伝えられた提出期限や提出方法を、教室を出るころには忘れてしまうことがあります。
話を聞いていなかったわけではなく、「覚えたまま行動する」過程で情報が抜け落ちてしまうのが特徴です。
ASDやLDの特性も提出物の管理に影響しやすい
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは、「いつ・どこで・誰に出すか」といった暗黙のルールを読み取るのが苦手な傾向があります。手順が少しでも変わると混乱しやすく、提出物を持ち帰り忘れたり、完成していても出すタイミングがわからなかったりするのが特徴です。
一方、LD(限局性学習症)の子どもは、読み書きそのものが苦手なため、課題に時間がかかりすぎて期限に間に合わないケースがあります。
このように、同じ「提出物が出せない」という悩みでも、特性によって原因は大きく異なります。日々の様子から、子どもがどの段階でつまずいているのかを見極め、根本的な原因を把握することが重要です。
中学生から「提出物が出せない」状態になりやすい理由
保護者の中には、「小学校では問題なかったのに、中学生になってから急に提出物が出せなくなった」と感じる方もいるかもしれません。これは、学校環境の変化が大きく関わっています。
小学校では担任の教師が提出物を一括で管理し、声かけもまとめて行われますが、中学校では教科ごとに教師が異なり、提出先や期限、形式もそれぞれ違います。そのため、宿題などを忘れず提出するには、子ども自身が複数の情報を同時に把握し、優先順位をつけて行動しなければなりません。
しかし、中学校では自分で管理する内容が一気に増えるため、ワーキングメモリや実行機能の弱さが目立ちやすくなってしまいます。
さらに、中学生は思春期・反抗期と重なる時期であり、保護者の声かけに反発してしまうことも、提出物を出せない原因の一つです。
繰り返し提出物を忘れて教師に叱られると、自信が大きく失われてしまい、勉強に対するモチベーションも下がるでしょう。
家庭でできる「提出物を出せない」を解消する3つの方法

提出物を出せない状態を改善するためには、発達障がいの特性に合った対策を取り入れることが重要です。
- 提出物とスケジュールを「見える化」する
- 提出物の管理方法を決めて「探す・忘れる」を減らす
- 叱るのではなくできた行動を褒める
順に詳しく解説します。取り組みやすいものから試してみましょう。
提出物とスケジュールを「見える化」する
ADHDの子どもはワーキングメモリの働きが弱く、提出物の管理に負担を感じやすい傾向があります。頭の中だけで覚えようとするのではなく、目で見て確認できる形にする工夫が効果的です。
まずは、家庭のホワイトボードに、週ごとの提出物や教科、期限を書き出してみましょう。
教科ごとに色分けすると、どの課題をいつまでに出せばよいのかが一目でわかります。子ども自身が終わった項目を消していくことで、達成感も得やすくなります。
また、スマートフォンのリマインダー機能を活用し、提出日の前夜と当日の朝に通知が届くように設定しておくのもおすすめです。提出物の存在を忘れていたとしても、リマインダーをきっかけに行動を起こしやすくなります。
提出物の管理方法を決めて「探す・忘れる」を減らす
ADHDの子どもは実行機能が弱く、提出物を自分で管理するように求められることが苦手です。そのため、「探す」「思い出す」といった手間を減らす工夫を取り入れることが重要です。
たとえば、透明のファイルケースを教科ごとに用意し、置き場所を決めておく方法があります。中身が見えるケースであれば、どこに何があるか一目でわかり、プリントを探し回る手間もかかりません。
また、提出物と関連する勉強道具を1つのケースにまとめておくのも効果的です。
英語の授業があるときは、前日に教科書・ノート・提出プリントを入れておくことで、「何が必要だったか」と迷いにくくなります。
さらに、玄関に持ち物チェックリストを貼っておくのもおすすめです。最初は保護者が一緒に確認し、慣れてきたら子ども一人でチェックできるようにしていきましょう。「自分で確認できた」という経験を重ねることで、少しずつ管理することへの自信が育っていきます。
叱るのではなくできた行動を褒める
ADHDの子どもの脳は扁桃体が過敏に働きやすく、叱責などのネガティブな刺激に対して強い感情反応を示しやすい傾向があります。ASDやLDであっても、周囲に叱られてばかりだと、少しずつ自信を失っていくでしょう。
保護者の方も、思うようにいかず焦ったり、自分を責めてしまったりして、つい声を荒げてしまうことがあるかもしれません。しかし、叱ることが続くと、親子ともに負担が大きくなってしまいます。
提出物を忘れがちな子どもには、「プリントをファイルに入れられたね」「期限を自分で確認できたね」といったように、できた行動を具体的に言葉にして伝えることが大切です。小さな成功体験を積み重ねることで、自信が育ち、提出物を管理する行動が習慣化しやすくなります。
うまくいかなかった日も、一方的に責めるのではなく、方法を見直す視点を持つことが重要です。「置き場所を変えてみようか」と一緒に考えることで、安心感が生まれ、次に向けて取り組む意欲も育っていきます。
家庭教師のトライでは一人ひとりの特性に合わせた支援で自宅学習をサポート

家庭教師のトライには、発達障がいのあるお子さまへの指導経験を持つ教師が在籍しており、一人ひとりの特性に合わせた指導を行っています。
発達障がいに関する豊富な知識をもとに、お子さまの性格や学習状況に応じて指導方法を調整するため、無理のない形で学力向上を目指すことができます。
また、万が一教師との相性が合わない場合でも、無料で何度でも交代できるため、安心して学習を進めることが可能です。
学校で配慮を受けることはできる?スムーズに伝えるコツ

発達障がいの特性によって提出物の管理が難しい場合、学校で配慮を受けられるケースがあります。
ここでは、学校へ相談する際の伝え方のコツや受験時に申請できる配慮の内容について解説します。
- 提出期限・方法に対して配慮を受けられる場合もある
- 配慮をお願いする際は「困っている場面」から伝える
- 受験でも配慮を受けられる場合がある
以下、順に解説していきます。
提出期限・方法に対して配慮を受けられる場合もある
2024年4月の障害者差別解消法改正により、私立学校を含むすべての学校において合理的配慮の提供が義務化されました。つまり、提出物に関する配慮は「特別扱い」ではなく、学びの機会を公平に保つために必要な「調整」なのです。
具体的には、以下のような配慮を受けられる可能性があります。
- 提出期限を数日〜1週間程度延長する
- 手書きの代わりにタブレット入力で提出する
- 提出物の量や形式を調整する
- 提出前に教員が声かけを行う
学校側が自発的に配慮するケースもありますが、基本的には本人や保護者からの申し出が必要です。
合理的配慮は法律で認められた権利のため、遠慮する必要はありません。担任やスクールカウンセラーに早めに相談し、子どもが安心して提出物を出せる環境を整えていきましょう。
配慮をお願いする際は「困っている場面」から伝える
学校に配慮を依頼する際は、具体的に「どんなことで困っているのか」を伝えることが大切です。
たとえば、以下のような伝え方であれば学校側も状況を理解しやすく、具体的な支援を検討しやすくなります。
- 「提出物の期限を把握するのが難しく、週に3回以上提出できていない状況です」
- 「本人も落ち込んでいるため、一緒に対策を考えていただけないでしょうか」
担任だけでなく、特別支援教育コーディネーターや養護教諭に相談することもできます。「要望を伝える」というよりも、「一緒に方法を考えたい」という姿勢で伝えることで、学校との信頼関係も築きやすくなるでしょう。
診断がない・グレーゾーンでも早めに相談
「診断がないと配慮を申請できない」と思われがちですが、学校生活で困りごとがある場合は、診断の有無に関わらず相談が可能です。診断がなくても、状況に応じて、必要な配慮や支援を受けられることもあります。
保護者の中には、配慮の相談をすることに不安を感じる方もいるでしょう。直接話すのが難しい場合は、まず連絡帳で担任に状況を伝え、何度かやりとりを重ねた上で、対面で相談するのもひとつの方法です。
受験でも配慮を受けられる場合がある
受験においても、障害者差別解消法に基づき、特性に応じた配慮を申請できる仕組みがあります。適切な配慮を受けることで、本来の力を発揮しやすい環境を整えられるのです。
実際、これまでには別室での受験や試験時間の延長、問題文の拡大表示、集団面接から個別面接への変更などが認められた事例があります。これらの配慮も決して「特別扱い」ではないため、遠慮せずに活用していきましょう。
申請には、医師の診断書や個別の教育支援計画、学校での配慮記録が必要です。ただし、受験区分によっては診断書が不要の場合もあります。
なお、手続きの方法や締め切りは自治体・学校によって異なるため、早い段階から相談しておくと安心です。
家庭教師のトライは教育プランナーが日々の学習から受験まで合わせてサポート

家庭教師のトライでは、指導を行う教師に加えて、学習方法や教育情報に詳しい正社員の教育プランナーが発達特性に合わせて徹底サポートします。
たとえば、発達障がいのあるお子さまに対しては、日々の学習をどのように進めれば良いか、どのような関わり方が適しているかといったアドバイスも行っています。
さらに、定期的な面談を通して状況を丁寧に確認しながら、特性に応じた志望校選びや受験対策まで継続的にサポートしていきます。
まとめ

提出物が出せない理由は、ADHDやASD、LDといった発達障がいが関係している可能性があります。まずは子どもの特性を正しく理解し、無理のない学習方法でサポートしていくことが大切です。
家庭では、提出物の「見える化」や管理方法の工夫、できた行動を認める関わりを取り入れることで、少しずつ行動の改善につながります。また、学校に相談することで、提出期限や方法の調整といった配慮を受けられる場合もあります。
一つひとつの小さな成功体験を積み重ねながら、子どもが自分のペースで前向きに取り組める状態を目指していきましょう。